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現状、世間で完全に定着したといって過言じゃない「巨乳アイドル」というワードだが、はたして、その嚆矢は“何”だったのか? 可能な限り調べてみた!

上の見出しを見て、「何(なに)だったのか?」とはどういうこと? 「誰だったのか?」の間違いじゃあ? と訝しく思った方。心配いりません。「何だったのか?」でよいのです。

どういうことかと言えば、平成に入り、AV界の松坂季実子、グラビア界のかとうれいこ、細川ふみえらの怒涛の活躍により、巨乳というワードが徐々に世に浸透していったわけだが、グラビアを擁する雑誌業界においてーーAV系はともかくーーアイドルにそのワードを冠することを躊躇した流れがしばしの間あったから。

巨乳が完全に市民権を得た令和のいま、「本当かよ?」と疑問に思う方は相当数おられるかもだが、実際そうだった。

象徴的だったのは、1993年6月、『さんまのまんま』のゲストに細川ふみえが出演した際。必然、ウリで魅惑の巨乳の話になったが、彼女は「巨乳という言葉が嫌い。恐竜みたいだから」といった胸……および旨のことを語り、視聴者を唖然、唸らせる結果となった。

1993年6月と言えば、彼女が誌面デビューを飾り、大ブレイクしてから、2年半もの時間を経た時期。「巨乳」という呼称などすでに余裕の気持ちでもって受け入れているかと思いきや、まったくそうではなかったという。

試しに、当時の週刊誌やグラビア誌のグラビア記事におけるタイトルを見てみるとーー。*以下、雑誌専門図書館「大宅壮一文庫」等での筆者の独自調べ

●すれすれラインで男を誘う「セクシー写真集」の女たち(『週刊アサヒ芸能』1992年9月3日号)
●特捜マーケット ウワサのTバック美女、16人登場だ! セクシーアイドル大集合(『スコラ』1992年12月10日号)

写写丸テレビ倶楽部”セクシーTVアイドル“大集合(『FLASH』1992年12月15日号)
●大人気セクシーガールズの舞台裏(『週刊SPA!』1992年12月23日号)
●一挙15人登場! 研究「巨乳美女」セクシー・アイドルからAV期待の星まで  '93年、乳メディアの申し子を総まくり(『FLASH』1993年2月9日号)
●'93セクシーアイドル大予想! 誰が最初に乳首を見せるのか!?(『宝島』1993年2月9日号)
●見飽きない、いくら見たって セクシー美女軍団 過激くらべ(『週刊大衆』1993年7月5日号)

たまらん…セクシーアイドル8人の悩ましき真剣勝負 『グラビア女王(クイーン)体育祭'93』でスポーツ美女No.1を競って“悶絶”(『FLASH』1993年9月21日号)
7年前 あの憧憬の各界セクシーアイドルを全追跡!(『FLASH』1993年11月16日号)
●不感症時代のHの行方 眺めるセクシーアイドルのフェロモンは、目から入る(『週刊SPA!』1994年4月20日号)
●セクシー軍団16人の挑発!(『週刊アサヒ芸能』1994年5月19日号)
●なんと早朝ニュース番組で…巨乳セクシー娘たちが人気(『FLASH』1994年7月5日号)

「セクシー」というワードが多用され、「巨乳」というワードが排されているのがわかる。『FLASH』1993年2月9日号と同1994年7月5日号でそのワードが見受けられるが、前者はあくまで「研究」というテイ(笑)、後者も「ニュース番組」という堅いワードを交えてのもの(なお、前者の記事で、細川ふみえが取り上げられているが、くだんの『さんまのまんま』の放送時期を鑑みて、彼女に相応の不快感を与えたというのは想像にかたくない)。

その背景には、昨今と違い、巨乳系がまだまだ少なかったというのも挙げられるだろう。とはいえ、1994年頃は、依然活躍中の細川やかとうのイエキャブ勢始め、C.C.ガールズ、ギリギリガールズ(グループ系はメンバーのうち数名が巨乳というパターンも)、井上晴美、岡本夏生、松田千奈らがしっかりシーンを席巻しており、「巨乳」というワードがもっとフツーに誌面を飾っていてもおかしくなかった……と、いまなら言えるだろう。当時、まだまだ「巨乳」という呼称は一般的なものではなかった。

そんなわけで、筆者が求める(笑)「巨乳アイドル」というシンプルなワードを最初に使った記事と思われるのがコレ。

巨乳アイドル10人のぎりぎりショット!(『週刊アサヒ芸能』1995年4月6日号)

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できれば、コピーでもなんでも、その記事誌面および表紙画像を載せたかったが、現状見つからず……。

ただ、時代的に、雛形あきこが猪突猛進の大ブレイクを果たす中で、そのワードを使用したのは、当時駆け出しのライターだった自分としては頷けるものがある(ちなみに同特集に雛形は登場していない。白鳥智恵子やすまりえら10人が登場)。

念の為、同誌関係者に聞いたところ、「1994年頃から『巨乳クイーン』というワードはたまに使っていた気がする」とのことだが、「確かにシンプルに『巨乳アイドル』というのは本誌同号あたりが最初で、恐らく、たぶん間違いない(苦笑)」由。

史実的に見ても、その翌年1996年は、青木裕子、黒田美礼、山田まりやらがビジュアルクイーン・オブ・ザ・イヤーに輝き、大ブレイク。他方、画期的グラビアアイドル番組『B・i・K・i・N・i』(ビキニ)や『中山秀征の写せっ!』(青木裕子が出演)などがスタートするわけで、プロセス的にその機運が1995年春ぐらいから高まっていったのだと見なせる。いや、見なしたい。とりあえず本稿ではそう結論づけておくということで……、あしからず(今後も調査は継続予定)。


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