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物語を動かした「くすり」たち

今回の3000文字チャレンジのお題は「くすり」です。

私は看護師が本業です。今は派遣として介護施設に勤務していますが、毎日の薬の管理は大事な仕事のひとつです。なので、実生活に役に立つ薬の話を書こうかなぁ……と最初は思いましたが、他の方の3000文字チャレンジの投稿を読んでいて「より、自分らしいアプローチがあるのではないか?」と考え始めてしまったため、結果としてお蔵入りになりました(といっても500文字くらいしか書いてなかったけれど)。

ある時ふと、そういえばあの物語でこんな薬が登場したよなぁ……と脳内に作品が浮かんできました。よしそれで書こうじゃないか、ということで方針決定。Evernoteにぽちぽちとネタを打ち込み、例によって記憶がうろ覚えな部分の補完には、Wikipedia先生やGoogle先生にお世話になったことを、あらかじめお断りしておきます。

それでは、ここから【物語を動かした「くすり」たち】はじまり、はじまり。

①人魚姫 作:アンデルセン 初出:1837年

保育園の時に読んだ童話の中の一編です。あらすじを一応説明しておくと、昔々、海を支配する人魚の王には6人の娘がいました。末娘は15歳の誕生日の日に生まれて初めて海の上と登り、船に乗っていた王子に一目惚れ。その夜、難破した船から王子を助けた人魚姫は、人間になりたいと願い、海の魔女の元へ行くのです。その時、人魚姫の美しい声と引き換えに魔女から貰ったのが、魚のしっぽが人間の足になる薬。
歩くたびに、鋭い刃物が突き刺さるような痛みに耐えなければならず、しかも王子の愛が得られなければ、人魚姫は泡になって消えてしまう……ちょっと待てよ、それって等価交換(©︎鋼の錬金術師)になってないじゃないか。海の魔女ひでーなー、おい!って大人になった今は思う。海の魔女は、若い人魚姫に嫉妬してたんじゃないのか?とすら思ってしまう。この観点から一本短編が書けそうだわ。海の魔女は人魚の王に片思いをしていたとか、片思いの相手が王の妃(人魚姫の母親)だったとか色々想像できますね。
ちなみに保育園時代、お遊戯会で人魚姫の役をやったことがありました。実家のアルバムに、ピンクのドレスを着た写真がバッチリと残っていたりする。いやん、恥ずかしい(笑)

②名探偵コナン 作:青山剛昌 初出:1994年

おそらく日本で一番有名であろう毒薬、APTX4869。記念すべき第1話にて、黒づくめの組織に口封じとして試作段階の毒薬・APTX4869を飲まされ、子どもになってしまった工藤新一。その副作用から全身が退行して、小学1年生の体になってしまった新一は、黒づくめの組織から正体を隠すために「江戸川コナン」と名乗って毛利探偵事務所へ居候することに。隣人の阿笠博士の発明品を駆使し、へっぽこ探偵・毛利小五郎を利用しながら事件を解決していくというストーリー。
その毒薬(APTX4869)の開発者・宮野志保もAPTX4869を飲んで幼児化し「灰原哀」と名乗って、阿笠博士の所に居候しています。彼女の作った解毒剤(の試作品)で一時的に元に戻ることもあったよね、確か。本編は途中で挫折してしまったけれど、安室透のカッコ良さを布教する友人たちのおかげで見事に転び、スピンオフをまとめて買ってしまった俺がいるww

③ふしぎなメルモちゃん  作:手塚治虫 初出:1970年

天国のママからもらった「ミラクルキャンディ」をもらったメルモは、キャンディを食べて大人になったり、赤ん坊になったりと様々な騒動を通して成長していく物語である。ちなみに赤いキャンディは10歳若返り、青いキャンディは10歳年を取るのだそう。しかし、まだ生まれていないのになぜ知っているのかというと、再放送や懐かしのアニメで観たことがあったから。9歳の女の子が、キャンディを食べただけでいきなり八頭身美少女になるのだから、さぞや年頃の男の子はたまげただろうなぁ。そして女の子たちは大人に憧れたのだろうなぁ。この辺の感性はさすが漫画の神様ですよね。

④竹取物語 作:不詳 初出:平安時代初期

日本最古の物語と言われている竹取物語。成立時期は9世紀後半から10世紀前半ごろと言われています。切った竹の中から生まれた女の子が成長し、名だたる求婚者を振りまくり、時の帝まであっさりと振り、十五夜の夜に月に帰ってゆくというストーリー。これだけ見ると、何しに来たんだよかぐや姫(罪を償うために地上に来たという設定)って感じですが。さて薬がどこで登場するかというと、十五夜の夜の別れの際に、かぐや姫がお爺さんお婆さんに渡した月の妙薬。これが実は不老不死の薬だったのです。ところがお爺さんは「かぐや姫のいない世界で、長生きなんぞしたくないわ!」と捨ててしまう。
帝にもこの妙薬は献上されるけれど、帝は手紙とともに一番高い山で燃やすように命じる。その場所が富士山だと言われています。
ちなみに高畑勲監督の「かぐや姫の物語」の帝の顔が、逆三角形だったのはなぜだろう?と未だに思うのは私だけじゃないはず。この作品のかぐや姫は、実に現代的なヒロイン像だと個人的には思っています。

⑤ロミオとジュリエット 作:シェイクスピア 初出:1595年ごろ

シェイクスピア作品で1、2を争うほどの有名な戯曲。これをリメイクしたのが「ウエストサイドストーリー」なのは有名な話。
舞台はイタリアのヴェローナ。モンターギュ家とキャピュレット家は代々の仇敵同士で、常に諍いの原因となっていました。ところが、モンターギュ家の息子・ロミオとキャピュレット家の娘・ジュリエットが一目惚れで、あっという間に恋仲になってしまいます。両家の融和を望む神父の手引きによって結婚した二人だったが、ロミオが殺人事件を起こして追放され、ジュリエットは望まない結婚を強いられる事に。ジュリエットは神父へ相談すると、48時間仮死状態になる薬を渡され、躊躇せずに飲みます。キャピュレット家は葬式を出し、ジュリエットは教会へ安置される。そこへジュリエットは死んだと勘違いしたロミオが戻ってきて、後追い自殺をしてしまう。目が覚めたジュリエットはロミオが死んだことに絶望して、剣で自分を刺して死ぬ。死ぬことによってようやく二人は結ばれる……というのが悲劇の所以なのだが、携帯電話があったら、こんな行き違いは起きないよねって思ってしまう現代人。でも創作のモチーフとしては、完成度が高かったりするんですね。シェイクスピアの脳内を覗いてみたいわ、本当に。

⑥火の鳥 黎明編 作:手塚治虫 初出:1954年に漫画少年掲載、1967年加筆版をCOMに掲載。一般的にはCOM版を指します。

手塚治虫のライフワーク「火の鳥」が手塚作品の中で一番好きです。黎明編は古代日本が舞台で、統一王朝は存在せずに小さい王国が乱立していた時代の話。序盤で主人公・ナギの姉・ヒナクが破傷風に罹って生死の境を彷徨ってしまいます。そこにやってきた異国の医師・グズリが、草を煎じて傷につける描写があったのです。今でいう抗菌剤を自然の草木から作り出していたのだと思われます。本編中にもそのあたりの注釈がされていました。グズリの看病に甲斐があってヒナクの傷は回復し、ふたりは結婚することになるのですが……その後はネタバレになるので、やめておきましょう。(そういえば村上もとみさんのJINでもあったね、青カビから薬を作り出す話。ドラマを観ただけだし、ネタ的には火の鳥の方が先なので……ファンの方、ごめんなさい)

今、思い出した範囲を書き出してみましたが、いかがでしたでしょうか?どれか一つでも、あー、あったね、それ!って思っていただければ幸いです。もしも他にもあるよーって方は、教えてくださいませ。

それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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