あんクリ小説版/いろり庵のあすかさん-13〈前編〉【#あんクリ製作委員会】
暑い。
ここ最近の暑さは本当に異常だ。
天気予報が告げる気温は連日、お風呂の温度かと突っ込みたくなるほど高い。
私が子どもだった頃は、30度を超えただけで驚いていたほどだったのに。
首からかけたタオルで汗を拭いつつ、外を見る。
そろそろ暑さがピークを迎える時間だ。
この間、花乃湯のおばあちゃんが熱中症で救急搬送されたと聞いたけど、今日はちゃんとエアコンつけてるかな。
この暑い中、エアコンの風が嫌いだからって扇風機しかつけずにいたみたいだけど……。
そんな風に考えていたその時、ドアが開く音がした。
「いらっしゃいませ」
近くの中学校のジャージを着て、部活指定のものらしき大きなカバンを肩からかけた女の子が、ふらふらとした足取りで入ってきた。
顔が真っ赤で、汗も大量にかいている。
———これは。
「大丈夫ですか!?」
慌てて焼き台の前を離れ、近くに駆け寄った。
「暑くてフラフラして……」
「そこのベンチで横になってください。肩、支えましょうか」
女の子がイートインスペースで横になったのを確認すると、小走りで厨房に戻る。
冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出すと、グラスに氷を入れてなみなみと注いだ。
夏の厨房は火を使っているのもあって暑さが尋常ではないので、熱中症対策でスポーツドリンクをストックしているのだ。
思いがけないところで役に立って良かった。
「これ、飲んでください。少し起き上がれそうですか?」
体を支えて起き上がるのをサポートすると、グラスを手渡す。
体が思うように動かないのだろう、ゆっくりとした動きでグラスを受け取った女の子は、少しずつ飲み始めた。
何か体を冷やすものも用意しなくては。
2階に上がって薄手のタオルを一枚取り出すと、店の冷凍庫に入っていた保冷剤をくるんだ。
「これ、首筋に当てたら体が冷えると思うので使ってください。
冷房の温度も少し下げたから、熱が引いていくといいんだけど……」
「ありがとう、ございます」
「帰りはできればご家族の方に迎えに来ていただいた方がいいと思うのだけど、どなたか来ていただけそうな方はいらっしゃいますか?」
「………父も母も、仕事が忙しくて夜遅くまで帰って来ないんです。
もう少しだけ休ませてもらえたら自分で帰ります」
「それはダメです……!こんな暑い中歩いたら、今度こそ倒れて動けなくなっちゃうかもしれない」
とは言え、私は車を持っていない。
どうにかこの子を安全に送り届ける方法は……。
………あ。そうだ。
***
今年も、酷暑という言葉がぴったりな暑さ。
暑い……と思いながら電車に乗っていた時、このお話を思いつきました。
さて、女の子を無事に送り届けたいあすかさんは、いったい何を思いついたのでしょうか?
後編も引き続きお読みいただけたら嬉しいです☺️
最後までお読みいただき、ありがとうございました🌻
*「あんこちゃんとクリームくん」作品集
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