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14歳、中学3年生、クリスマスイブス

星野ニア Advent Calendar 2020

私にとって、今年は中学生最後の1年であった。
 貴重な学生生活は、流行した感染症の話題が収束する事なく終わりを迎えようとしている。現在進行形で続く外出自粛の同調圧力によりストレスの溜まる人は多いだろうが「職業:ひきこもり」の私には好都合であった。
 今回言葉を紡ぐにあたって私が最初に起こした行動は、クリスマスイブが何日であるのかを検索することである。これすら分からない程にイベントと縁が無い人生を送ってきた。カレンダーに書いてある予定は病院だけ。イベントが無いのは常であるが、つまり常に暇ということである。

私の持て余した暇は気まぐれを起こして星野ニアとなり、現在このような駄文を書き殴るのだ。
朝の時間が少ない者は目次より3つ目のみを読んで頂きたい。

*クラス替えと少し新しい環境へ放り込まれる春。

 女という生き物は早急に群れに入らねばヤバいと認識している生き物である為、クラス替えの発表が行われた時点で新しいグループが生成され終わる。2年生までの段階で、部活動等を通じて他のクラスにも人脈を広げているためである。
取り残された私はこのまま「ひとりぼっちのブス生活」となる可能性もあるが、よく教室を見渡せばドッペルゲンガーのようなブスが2つ3つ点在していることに気が付く。
(空気となる人間は喜怒哀楽が表にあまり出ない為表情筋が死に絶え、基本的に何もしていないので見分けがつきやすいのだ。)

 ここで私は孤高のブスとして生きるか、ブス同士のグループを作るかの選択を迫られるが、孤高のブスであると教師に放課後呼び出され「大丈夫か?」などと聞かれる精神的体罰を食らうはめになる。よって多くのブスは孤高のブスとして生きる事よりも、ブスグループを形成することを選ぶ。
私も後者のブスであった。
 よく教室にいるブスグループは、オタク同士意気投合してつるんでいると思われているがそれは間違いだ。仕方なくグループになったブスがたまたま全員オタク、という自然現象である場合が多い。つまり中には全然オタクじゃないのに、生来のおとなしさからブズグループへの所属を余儀なくされる者もいる。

 ブスグループでは主にゲームの中等、次元が違う男の話をする。自分がこの学校で男子と良い関係になるわけがない、と肌で感じているのだ。クラスの男というのはブスグループにとって近くにあって最も遠い存在であり、まだ2次元の方が近いため、3次元の男で誰それが良いなどという話は全くしないのである。中には話の延長で、好きな声優や俳優やたまたま見たテレビの話を降る者もあるが、その芸能人をグループの誰も知らないという現象が多々起こる。

 しかし、自分の恋愛が無理だと悟りつつも耳年増が多いのも事実である。エロ系やBL系漫画のやりとりは日常的であり、中には『快楽天』を回し読みするという、一歩先んじたグループも存在する。


*感染症により様々な行事が潰れた夏、秋。

 運動会文化祭合唱コンクール修学旅行......とにかく集団行動をする行事は全て中止となった。そもそも教室に集まることが集団行動に当てはまる為、オンライン授業が実施され通学すら中止となった時期も続いた。
 思い出を作れずに嘆く同級生は多くいたが私は嬉しかった。クラス一丸となって何かをする時、ブスは何をしていいか分からない。何をしたらいい?と自発的に聞ける人間は、ブスグループになぞ所属してないのである。空気が読めない為どう動いたらかいいか分からず、当然楽しくもないため無表情でただそこに立っているだけのゴミが3つ程クラスに並ぶ。

 いわゆる不良と言われるようなグループはノリの良さから評価が格上げされる謎現象が全国で観測されるが、我々の評価は「空気を壊す感じの悪いグループへ」と格下げされるのだ。
 教師に「お前もやればできる!」などと鼓舞された瞬間には瞬間最高無表情を記録し、己の罪を棚に上げ怒りすら覚える始末であるので、ブスは誰の手にも負えない。

 世の中には様々なブスがいる。ブスは細部に宿り、ブスからの脱却は難しいのだ。簡潔に言うと自分から容姿の話をする輩は総じてブスである。
自分がブスである」と発言すれば、そんなことないよと言われたいだけだろう。なんと性格のひん曲がったブスだ。その曲がった性格が顔にも現れている。優しい言葉をかける気も失せる。というか本当にブスだ死ね、となる。
自分が美人である」と発言しても、自分で自分を美人だと言うなんてなんて嫌味なやつだ。遠回しにこの場にいる人はブスだと伝えているのだろうか。その傲慢さが顔にも現れている。ブスだ死ね、となる。
自分が普通である」と発言しても、その顔面をぶら下げてよくも普通だと思えるものだ。鏡をしっかり見てみろ。お前はブスだ死ね、となる。

 容姿の話を自分からすると最後には死ぬしか無くなるのである。つまり今この文章を書いているおひるねの事は、死ぬしか無いブスと思ってくれれば間違いはない。
 1つだけここで明言したいのは、ブスというのはただ容姿に限る話ではないという事だ。人は顔だけでは無いのだ。それならば性格なのかと聞かれれば、ブスは卑屈になりがちなのでそちらでの勝負も控えたい。

それ以外で頼むということだ。


*卒業後の話をするクラスメイトと冬、クリスマス。

 ブスは話が盛り上がる時が少なく、クラスメイトの会話が聞こえてくる事が多い。卒業シーズンになった今、聞こえてくる話題No.1は卒業後の話で、卒業旅行はどうするかと思い出作りに全力である。1年・2年・3年のグループ、部活動のグループと何回も旅行に行く大富豪が現れるほどである。行き先は大抵ディズニーランドかUSJの2択なので、行先や予算、参加者や日時なんかの話は12月のうちから着実に進められ、決まるまでに時間がかかる。
前日聞こえた会話は翌日にも聞こえてくるのだ。

 一方ブスグループは、卒業旅行の話をする同級生を羨ましいと思いつつも自分から誘う事はしない。ブス同士熱い友情で結ばれるなどということはまずない。同じ環境にいれば惰性で集まるが、距離が離れるとまず集まらない。誰かが集まろうと声をかければ集まるかもしれないが、誰一人言い出さない。最初から仕方なく集まっていたグループなので、全員が私はこいつらとは違うと思っている可能性もある。
 ブスグループは卒業式の後に会う事は無いだろうと確信めいたものを抱いているのだ。ブスは己がブスである自覚があり、ブスから抜け出さんと環境が変わる冬から春にかけて変化する傾向にある。そして卒業したら変わると思い、高校デビューブスにto be continuedしていたりするのだ。
 高校デビューという単語自体がブスのために用意されているので、勿論ブスから抜け出すことは出来ていない。ただのスライムがベスやらメタルやらキングになっただけで、1~2年後......何かの拍子で集まると、全員すごい格好をしていたりするのだ。

 イベントに悉く縁のないブスであっても、クリスマスには敏感である。ソシャゲにクリスマスイベントはつきものだからである。
 新衣装のイラストが公開されるだけで、実装される前からお財布の中身を確認し、親へのお小遣いのねだり方を考え、1つでも多く無料ガチャ石を貯蓄しようとする。
 家族からのクリスマスプレゼントは現金1択しかありえない。この思考は大人になっても大きく変化する事はないだろう。大好きな絵師さんのツイッターをのぞけば、推しイベがあるたびに推しのぬいぐるみやフィギュアでスマホ画面をぐるっと囲みてガチャを引く動画をアップロードしている。
大人は親におねだりせず自分の力で購入している為規模がデカくなるという差だけである。

 私はといえばクリスマスの予定はすでに決まっている。
 渡辺曜のクリスマス3D衣装でライブの再生を繰り返し最高だと思える瞬間をネットプリントして、思い出のアルバムにまとめ、推し加賀美ハヤトのイラストを己で描き、プリントケーキにしてそれを食べる。

 加賀美ハヤトと1つになる、完璧な計画だ。

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*これを読む貴様へ

 この駄文を読む貴様らはクリスマスイブをどのように過ごすか覚悟を決めているだろうか。豪華な食事、恋人とデート、プレゼント、配信...いつも通り過ごし「ただの平日だ」と寂しさを滲ませる者も #おはようVtuber で見た。 クリスマスをはじめ、催し事には過去の幸せな経験が結びついて記憶されており、つい他人と比べ、己の置かれた状況を見てしまうのも致し方ない。隣の芝は青く見えるのが人間だ。他人の行動が立派に見え、自身は劣っているように感じるのだ。残念なのは、これがほぼ9.9割事実であることだ。 しかし大事なのは自分が今幸せであるかどうかである。いつも通りに目が覚めて、いつも通りに食事をして、いつも通りに働くことだけでも立派である。そう、貴様らは毎日立派に過ごしているのだ。この事実は忘れてはいけない。あえて貴様らが十分立派になるためのアドバイスをするならば、この「強欲罪状目録」を通して、おひるねにクリスマスプレゼントを送ることだ。

貴様らを十分立派なクリスマスに導ける事を、おひるねは光栄に思う。

うんちぶり。


文章を少し直してくれた探偵ちゃんにすぺしゃすさんくすブリ。