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引き寄せで家は買えるのか⑧

 年内の仕事納めをした私のスマホに小川さんからの着信があった。折り返すと、ローンの仮審査をしていた銀行から正式に返答があったとのことだった。銀行が出した答えは利率0.65%で融資額3,000万円だった。
あらあら、全然足りないわね。
自己資金の少ない私たちは、諸経費以外はフルローンを組む予定だった。
足りない部分の1100万円は、銀行以外で融資を受けることもできますとのこと。銀行より利率が高くなるし…うーん…。
小川さんは他の銀行もあたってみるということと、もしそこでも融資の条件が合わなければ、白紙にしてもらってもいいですよと言った。

 この狭い我が家で年を越すのも、これで最後なのかな。それとも、結局何にも変わらずこのままなのかと思ったが、もうそれならそれが一番良いことなのかもなと思った。良い意味で執着していないようなゆだねるような気持ちでいられた。

 年が明けて、年始の挨拶も聞こえなくなってきた頃、小川さんから売主が1500万円まで下げてくれたとの連絡があった。
なんで???嬉しいけども!!だいぶ嬉しいけども!!!
小川さんどんな魔法を使ったんやろ。
とにかく小川さんにお礼を言って、あとは私たちが住んでいる家のローンをどうしていくかを考えなければ。

 母に、改めて今住んでいる家のローンを返済するか、売却するかして抵当権を消さなければならないということを説明すると、夫婦でローンを組むわけでもないのに、なんでここのローンが関係あるの!の一点張りだった。ローンを組むのは旦那やけど、銀行からしたら一家計として考えるんやで!ということを100回くらい説明したが、自分の理解できない理屈以外はおかしいとの認識だった。本当にめんどくさい。
900万円のうち、いくらかでも母に出してもらうようにお願いすると、ある日は全部出すと言い、またある日は100万円だけなら出せると、山の天気もビビる程の心変わりを口にするのであった。
本当の本当にめんどくさい。
私もキリギリスだが、私を産んだこの母もキリギリスなのであった。そういえば、親の脛を齧るということわざ、使ってみてぇなと学生の時から思ってたわ、と薄目で母を眺めながらため息をついた。

 


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