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「我思う、ゆえにTM社あり」〜オナニーこそがエンターテインメント〜(記者:秀-change the world-)



「我思う、ゆえに我あり」

この言葉の意味を説明できる人はどのくらいいるだろうか。

意味は疎か、これがゲスの極み乙女の曲タイトルか何かだと思っていた筆者は、正直この言葉を唱えた哲学者デカルトさんが本当に言いたかったことまでは分からない。
しかし、哲学とは程遠い、僕と同じかそれ以上にバカな一つ年上の先輩の姿を思い浮かべたとき、僕はその言葉の意味がわかったような気がしたのだ。


2016年、僕はTM社と出逢った。

当時僕は20歳。うつ病により高校を留年し、浪人生活という名のリハビリの末、なんとか入った大学。
お笑いが好きだった僕は、何か面白えことするようなサークルとかないかなと探していたとき、見つけた「エンターテインメント集団」。
新歓に行ったら突然目隠しをされ、「今から君たちにはミッションに取り組んでもらう」というアナウンスとともに「逃走中 in 町田キャンパス」が始まったとき、「ああ、僕はこの最高に面白そうな団体に入るしかないな」と悟った。

聞けばこの「TM社」は、1人の学生が立ち上げ、仲間を集めて作ってきたものだという。
その学生の名は「TAIYO」。もちろん本名ではない。
TM社には「Tネーム」という一人一人名前をつける制度があり、彼が自らつけた名前が「TAIYO」。

僕はこのTAIYOさんにやけに気に入られた。
「ヒデあってのTM社やからなー!」
「ヒデのためにTM社を作ったからなー!」
いつも気前よくそんなことを言っていた。
言われて嬉しい反面、僕は冗談でごまかすようなTAIYOさんの態度がなんとなく嫌だった。

それから僕は1年間TM社で過ごした。
TM社の主な活動は、人を楽しませる「ショー」。


ヒーローショー、時代劇、ときによくわからないミュージカル…
それが素人学生のクオリティだったとしても、僕にとっては全てが新鮮。
なんせちょっと前まで引きこもりだったのだから。
一人寂しい10代を送った僕は「仲間と楽しいことやってる」時点でもう体験したことのないパラダイスだった。

しかし、不安なことがあった。
それらの「ショー」は全てTAIYOさんが作っているのだ。
脚本、演出、アクション、衣装、道具、音、SNSでの宣伝まで、何から何まで。
TAIYOさんは4年生。来年には卒業していてもういない。
どうするつもりなのだろうか?
僕らに後を託してくれるのだろうか?
でも普通サークルってそういうもんだよな。

僕は、TM社を受け継ぐ気満々でいた。
TAIYOさんがいなくなった後も、この大学にTM社を存続させなければ。
僕らのやりたいことをやろう。
そうすればTAIYOさんも安心してくれるはずだ。

いやほんとか?

不安は的中した。
TAIYOさんは僕らにTM社を託すつもりなど無かった。
TM社は自分のものだった。
そして、大学にTM社を残すことなく、僕らだけを残し、卒業とともにTM社を自分で持っていった。

僕はTAIYOさんにLINEで聞いてみた。
「あなたはどうしてこの大学にTM社を作ったのですか」
最初からこうするつもりだったなら、大学の中に作らなければよかったじゃないか。
そう思って疑問をぶつけてみた。
そして返ってきた答えが、

「俺がいたから」

この人にとって、TM社は自分そのものだったのだ。
自分がいたから、TM社があった。
それだけ。
大学の中だの外だの関係ない。
自分のいるところがTM社。


あれから4年。
「TM社」はまだ存在する。
TAIYOさんがずーっと続けている。
大学を中退した僕もなんやかんや「TM社ファミリー」の一員とされている。



今のTM社はというと、「おひまタイムス」なる誰が得するのかわからない企画に夢中である。
そう、このフォロワー0のnoteである。
また、月に一回「月刊おひまタイムス」なる紙切れがわざわざ郵送で送られてくる。
そして極めつけは「青い鳥のアニメ」。


「おひまタイムスに『青い鳥のアニメ』のweb小説を掲載し10RTでYouTubeにてアニメ化」らしい。
そう、もうよくわからないのである。

僕とTAIYOさんは歳が一つしか違わないこともあり、今では大学時代のような先輩後輩の関係というよりは、もう結構言いたいことをズバズバ言えちゃう仲間の関係になってきている。
だがそれを抜きにしても最近のTM社の活動は「これは誰が喜ぶの」と言いたいものばかりであった。

そんな中、今日僕はちょっと面白い発見をした。

Twitterで「TM社」と検索しエゴサーチをした際によく目にする、
「我TM社保」
というワードがあった。
絶対にTM社のことを言っているわけではないのは明らかだったが、これが何を意味しているのか謎であった。

しかし、今日Twitterを見ていた際に「我社保」というワードを見つけ、ん?なんだか見覚えがと思い意味を調べてみたところ、なんとこれは中国のネットスラングで「射精する」という意味だったのだ。

加えて間の「TM」も調べてみたところ、これは「他妈」の略語で「すごく」「とても」という意味だそう。
つまり「我TM社保」は「俺めっちゃ射精した」という意味だったのだ。

僕はこれをネタにしてやろうと記事を書き始めたところでふと考えた。

射精…
オナニー…

僕は大学4年生のとき、お笑いライブを主催しようと思っていた。
僕の大学生活の集大成を見せるんだ。
あんなことをして…こんなことをして…
ワクワクしながら計画を立て、それを同期に話した。
するとこう言われたのだ。

「お前のオナニーじゃねえか。」

僕は途端に恥ずかしくなり、そのライブの企画をやめてしまった。
その同期は、「お前の自己満足」「お前が気持ちいいだけ」という意味でおそらく言ったのだろう。
せっかくみんなを楽しませようと思ったのに。

僕はTAIYOさんに同じことを思っていたのだ。
「そんなのあなたの自己満足じゃないですか」
TAIYOさんだって、みんなを楽しませようとしているに違いない。
大学時代からそうだったのだ。
確かに自分のやりたいことしかやってない。
自分が一番楽しんでる。
だが、僕は今思う。

オナニーの、何が悪いというのだろう。

その行為に、どれだけ本気になれるか。

その行為が、どれだけ見応えのあるものになるか。

エンターテインメントの本質はそこにあると思う。

みんなを気持ちよくさせてあげようとすればするほど、主体は「みんな」になり、エンターテイナーは「自分」を失う。
「正解」だけを追うことになる。

違う。
自分が気持ちよくなるんだ。
そしてその様が、どれだけ面白いか。
どれだけ美しいか。
それを追い求めて、初めて自分だけの表現ができる。

「我TM社保」
僕はこれを「我思う、ゆえにTM社あり」と訳した。
今ここに自分が存在するから、TM社が存在する。
それは紛れもない真実である。
あの人は、TAIYOさんは、ずっとそのスタンスを貫いてきた。
自分が気持ちよくなるための行動だろうと、オナニーだろうと、その生き様は間違いなく人を魅了する。

「TAIYOが満足して死ぬための活動、それがTM社」
あの人は最近そんなことを呟いた。
我々人類が求めるもの、それは人生という名のオナニーにおける最高のフィニッシュなのかもしれない。

記者:
秀-change the world-
フリーお笑い芸人。コンビ「リベラル」として活動中

Twitter: https://twitter.com/hide_change/status/1347157552711102469?s=21

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