ELDEN RINGの世界と伝承についてのゆるいネタバレ(海外サイトからの翻訳)

(以下の文章は、海外のサイトResetEra内のフォーラム『From Software Development & Speculation』において3月29日に投稿された業界関係者Omnipotent氏の文章を翻訳したものです。「ゆるいネタバレ」と題したとおり、内容は具体的な地名や人物名およびゲームシステムなどを明かすものではありません。なおOmnipotent氏の業界関係者としての信頼性はResetEraの運営者によって保証されていますが、あくまでも半匿名の人物による情報であること、ELDEN RINGは開発中の作品であり今後変更が行われる可能性があることなど、必ずしも製品版の内容を正確に記述するものではない旨を予めご了承ください。)

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エルデンリングの世界と伝承については、おそらくこのゲームの中で一番好きな部分であり、今作が私のオールタイム・ベストの一つになる可能性を持つとまで言えてしまう大きな理由でもあります。これまでの投稿では、既存のゲームと私たちが実際に生きている場所に関する伝承について掘り下げてきましたが、私にとってはゲームへ没入できるか否かを決定づける結合組織であり、時にはゲームを続けるモチベーションを保てるかどうかにさえ関わります。だからこそ『氷と炎の歌』とフロムソフトウェア双方のファンである私にとって、エルデンリングにおける協働は、もちろん夢のようなものです。というわけで今回のコラボレーションがなぜクールなのか、その理由を少しだけご紹介しましょう。

始める前にもう一度言っておきますが、ジョージ R. R. マーティンが執筆したのはこのゲームのシナリオにあたる部分ではありません。彼はバックストーリーや世界史を書き、ディレクターである宮崎英高&フロムとのやり取りで世界観を作り上げました。シナリオは宮崎が担当し、マーティンの文章を世界史として使用し、加えて翻案に関する強硬なルールは無く自由に解釈して創作を行う。それがこのコラボレーションの本質です。


■ジョージ R. R. マーティンの仕事とエルデンリングの世界
以前ファンタジーと『氷と炎の歌』の文脈で話したように、マーティンの最高の資質は、没入できる/生きている/呼吸しているような世界を創造する能力を通じた、驚くほど詳細な架空世界の構築であり、それは壮大さと共に、まるで実在の百科事典を読んでいるような細やかな歴史を体感させます。加えて彼は、ファンタジーのジャンルで馴染み深い概念やアイデアを持ち込み、それらを捻じ曲げたり、あるいは拡大解釈してさらに面白くするための素晴らしいコツを知っています。そういった資質が、この作品についても同じようにもたらされているのです。

国家制度・政治的な対立・権力者やその他の主要な登場人物・そしてプレイヤーが参加する日に至るまでの影響力など、世界を理解をするために重要なものを掘り下げた歴史たち──それらは近年のフロム作品にもある程度は存在するものですが、今作はこれらの要素にもっと強く重点を置いています。

エルデンリングの住人たちは、人間や "人でなし " だけではなく(プレイヤーキャラクターであるあなたはそうなるだろうが)、興味深く幅広い種類の存在を旅の途中で見ることができます。またそういった種族は、フロム独自の色合いを持った新しいものになるでしょう。異なる種族のうちあなたが遭遇する大半は、一般的な人間または人間風のいくつかの形態を備えているとして、さらに以前の作品には無かった個性・多様性と新鮮さが追加されているのです。

私がエルデンリングを「ハイファンタジー」と呼ぶ理由はそこから始まっています。それらの種族が生息することの意味や理由はゲーム内のより大きなスケール──世界観・伝承・物語──において説得力を持つようになっており、結果として過去のゲームよりも壮大な世界に感じられるでしょう。加えてフロムソフトウェアの近年の作品と比べて明るいトーンで描かれています。(マーティンとフロムのコラボで連想するような暗い部分も存在します)

作中の概念である「エルデンリング」のコンセプトから、主要な登場人物についてのサブシナリオや所属している組織についても、さらにこの世界での魔法の機能やそれが配置してある場所のような "シンプルな" ものに至るまで、近年のフロム作品と比べて肉付けされています。フロムソフトウェアの過去のゲームでは見られないほどの多くの開発時間と労力が、この世界を実現するために用意されたことを明瞭に感じられるでしょう。

魔法の流派(schools)は、あなたがどのような要素を行使するかということだけではなく、どの魔法があなたの理想に最も近いものであり、どの組織とのつながりを感じられるかということも重要な判断材料になるでしょう。それらは、ビジュアルデザインやゲーム内での物語を通して探っていくことになります。


■「エルデンリング」とは
「エルデンリング」と名付けられた作中の神秘については、 個人的にはダークリングやソウル、炎や血といった要素と比べ、より深く今作の世界そのものと結びついていると思います。ダークリングなどの先行例はその世界や自然秩序の異常が結果として生み出すものですが、「エルデンリング」は世界の状態を司るものであり、砕け散るとき全てに影響を与えます。

私たちの世界と少し平行して描いてみましょう。私たちが生きるこの世界には、月や磁場、大気といったものがあります。これらは全て地球上での生活に重要な役割を果たしているので、取り除かれてしまうと地球とそこに住むあらゆる生命に影響を与えてしまうのです。月は動物の生活や様々な種の行動を導くために使われているだけでなく、潮の満ち引きに加え、かつては長いスパンの時間経過を測定するためにも使用されていました。磁場は宇宙嵐や太陽フレアのようなものから私達を安全に保つのに役立ち、また磁気の基本的な力に関わっています。大気がなぜ私たちにとって重要なのかを説明する必要はありませんし、さらに証拠が必要な場合は、火星でも見ていれば良いでしょう。

「エルデンリング」は上記のような規模で根源的な力であり、失われたからといって地表からすべての生命を一掃したわけではないものの、世界に対しそれ以上に刺激的な、そして空想的な影響をいくつも与えています。それが存在しないとき、土地や人々に対する影響は、目に見える形か否かに関わらずどうなるのでしょうか。例えばバリアの機能が失われたとしたら?それまで閉め出していた、凶悪で想像を絶するものが入ってくるようになるのです。あなたがかつて知っていた人が "何か" に変貌するとき──存在そのものと、周りの全てのものが、意図した通りには働かなくなるでしょう。その影響力は良くも悪くも全てのものに染み込み、あなたはその結果を目の当たりにすることになるでしょう。この世界の統治機関・国家・神々や半神の神の王族などの周りの人々、そしてあなた自身はどう対処するのでしょうか。

すべての要素が世界中のどこでどのように関係し合っているのか?次に何が起こるのか?このゲームでは単にそれらの伝承を読むだけではなく、外に出て自分の目で見て、世界のあらゆる面でそれが表現されていることを体験できるのです。


■NPCとの物語について
環境によるストーリーテリングの拡大は、あなたに何を残すのでしょうか?人々の間での混乱や争い、争いが起こり存在そのものが壊れてしまった世界、そしてその余波を自分の目で確かめながら、遠く離れた場所や、生息している世界と同じくらい壮大な場所を巡ることになる。つまりこれまで以上にをすることになるでしょう。

しかし旅をより魅力的で信憑性のあるものにするためには、それぞれの旅路やストーリーを持った興味深いキャラクターたちとの出会いが必要です。過去作に比べ、マップの範囲やストーリーの進行の面でゲーム全体に渡るストーリーを持つキャラクターが増え、それぞれの動機や個人的な野望を持ったキャラクターが増えています。ダークソウル3の大規模で複雑なNPCクエストのように、ゲームの序盤から終盤まで一貫したスケールのクエストが用意されています。プレイヤー自身も「ここに行って、何かをして、NPCがそう言ったから土地を救え」という以上に、より興味深く、個人的な物語を手に入れることができます。

プレイヤーに与えられたのは、ダークソウルよりも広大な世界です。そこには登場人物や歴史が言及している場所だけでなく、プレイヤー自身が探索することで発見できるものがあり、ついにはこの宇宙の基本的な力である「エルデンリング」が破壊されたときに生じた、より激しくより深遠で内部的な、そして実存に関わる災難に直面することになるのです。指導者と国家、神と悪魔のようなもの、あなたはこれらすべてとあらゆる対立の中で居場所を見つけるでしょう。過去作よりもドラマチックな重みのある力強い物語に仕上がっていますが、押し付けがましさはありません。

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