より強くて役立つ意見を求めて

強い意見と弱い意見がある。
毎日、あれはダメだな、という思いを抱くこともあれば、
研究の中で、論文としてしっかりとした意見を表明することもある。
明らかに、後者の方が強い意見だ。ではそれらの違いは何か。
少し眺めていきたい。

毎日ふと抱く、弱くて無責任な意見

日々、ニュースを見たり、広告を見たりすると、いろんなことを思う。
例えば、「メガネ型ウェアラブル端末なんて流行らないよ」とか、「新しいMacBookなんて売れないよ」とか、そういう無責任な弱い思い。
そんな意見は、時に呟きとして、世に流れていく。

一方で、論文などでは、数字を求めて、数字を使って、何が言えるかを吟味して、意見を表明する。

この違いを、少し眺めてみたい。
そして、弱くて無責任な意見を、少し強い意見に変えてみたい。

意見の違いを眺める

一体何が違うのか。
もちろん、かけた時間と労力が違う。
では、一体どこに労力と時間をかけたのか?

それは、「〜〜と思う」ところを別の表現で書き直すことに時間と労力をかけている。
これを少しやってみたい。

例えば、「メガネ型ウェアラブル端末なんて流行らないよ」という弱い思いを眺めて見よう。
この意見は、メガネ型の端末のニュースを見ながら思ったことだ。
例えば、こういうニュース

https://japan.cnet.com/article/35180929/

つまり、メガネの形をしていて、文字や画像をメガネに表示したり、スマホのようにカメラや通信機能がついている端末だ。
もう、かなり昔から話題に上がっていて、それでも流行ることはなく、時々新製品が発売されている。

この端末を見ていて、「メガネ型ウェアラブル端末なんて流行らないよ」と私は思った。でも思うことに価値なんてない。

それは、この意見を受け取った人が誰もなぜそう思ったかわからないからだ。
だから、これを、別の表現で書き換えてみたい。

自分なりに別の表現で書き換えると、こうなる。

目に近い方が、情報を受け取るときは便利だけど、どんな情報が欲しいか入力するときは不便だ。スマホが便利なのは、手元にあって文字を入力しやすい。

弱い意見に、比較を入れる。

別の表現で書き換えてみたけど、それでも“それで“としか思わないだろう。
だから、少し意見を強くしてみたい。
強くする方法は、数字や事実を使ってこれを別の表現にさらに言い換えることだ。

例えば、“入力するときは不便だ”というところに注目してみよう。

メガネ型端末に、いくつボタンを用意できるか。幾つかしか用意できないだろう。スマホのようなタッチパネルでの入力も難しい。すると、いくつかのボタンで、いくつかのモードを切り替えることしかできそうにない。
1秒間にできるのは、せいぜいいくつかのモードのボタンを押すことだろう。
10秒間あっても、10個程度の機能から選ぶことがせいぜいだろう。

一方で、スマホでは、タッチパネルによって入力方法が多数ある。数十個のアプリを一覧から選べる。タッチパネルで文字も打てる。
1秒あれば、数十あるアプリから一つを選び、
10秒あれば、そこに文字などを打ち込み、目的の情報を表示できていることだろう。

つまり、“入力するときは不便だ“という思いは、

短時間で特定の機能を選び出すのが難しい。特に、スマホでは数十のアプリからアプリを選び、さらに検索までを10秒程度の短時間で選べるけど、メガネ型では、そんな短時間では10個ぐらいから選ぶのがせいぜいだろう。

という意見に昇華できる。

数字を使う、すると意見を見直せる

数字や事実を使うことで、意見は少し強くなった。
これを聞いて、本当に?と思う人はいるかもしれない。
でも、強くなっている。

それは、将来の新機能を考えるとわかる。

例えば、入力手段を別に用意して、10秒間でできる入力が増えるかもしれない。例えば、音声入力。言葉で、“東京の天気を表示して“と入力すれば、10秒ほどで特定の機能を呼び出せる。
将来、音声入力だけではなくて、視線や他の端末からの入力などを組み合わせれば、いろんな機能を短時間で呼び出せるようになるかもしれない。

そうしたら、この意見は変わる。スマホと同等の入力性能になるかもしれない。そうしたら、スマホよりも情報の表示がしやすくて、便利となるかもしれない。

意見が変わる、と聞くと、主張が弱いと思いがちだけど、別の角度から見ると自分や他の人が意見を見直して、意見を適切に扱えるということ。

単なる無責任な弱い思いから、きちんと後から確認して修正できる、役立つ意見になっている。

そうして、少しずつ、意見を強くしていく

もちろん、10秒間に入力できることを比較しているだけでは、便利ということを適切に評価できていない。でも、思いを少しずつ数字にして、他のものと比べて、意見を強化していくことを繰り返していくと、自分の意見の勘違いに気づくかもしれないし、自分の意見の説得力を増やせるかも知れない。

弱くて無責任な意見。
発する前に、少し立ち止まって別の表現に言い換えてみると、数字を使ってみると、見えてくるものが変わるかも知れない。

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