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上塗りの仕事

漆器が完成するまでには、以下の工程があります。

木地固め → 布着せ → 布研ぎ → 一辺地付け → 研ぎ → 二辺地付け → 研ぎ → 三辺地付け → 研ぎ → 錆地付け → 錆研ぎ → 下塗り → 下研ぎ → 中塗り → 中研ぎ → 上塗り → 完成

基本的にはこれだけの工程がありますが、産地や物に合わせて変わることもあります。

その中で、塗りの仕事は、下塗り → 下研ぎ → 中塗り → 中研ぎ → 上塗りまでの工程を指します。上塗りは塗りの最終工程になります。

現代では、上塗りをスプレーガンで塗る方法もありますが、今回ご紹介するのは、昔ながらの刷毛を使って塗る上塗り(刷毛塗り)の仕事を紹介します。


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小さなホコリも嫌う塗師の仕事

上塗りは、特に空気中のほこりのとの闘いです。漆刷毛、漆の中の塵、部屋の空気中のほこり、衣服のほこりを落としてから塗ります。
上塗り部屋には、一人だけしか入らず塗っている塗師もいます。

塗った後でもわずかに塵やほこりが付くことがあります。
漆が固まってからも、ぷちっと表面に出てきてしまうので、ムラなく綺麗に塗るのはもちろん、無駄なくスピーディーに塗ることが求められます。
節上げ作業の様子
上の写真は、節上げといい針先で塵やほこりを取り除く作業のワンシーンです。塗りも素早く、節上げも素早くしないと空気中の塵やほこりが塗面に付着してしまいます。

余談ですが、この節上げ作業には、節上げ棒という道具を使います。昔は、孔雀などの羽の芯で作られた道具を利用していたそうですが、今は、細い針(スピナール)で作業しています。

鏡面の様な光沢ある仕上がりにする場合、上塗りの工程で、ほこりの付着は許されません。繊細な技術であり、集中力が必要な仕事です。

ホコリが舞う環境では仕事にならないので、塗師の手によって行われる繊細な上塗り作業を見る機会も少ないと思いますし、見学も通常はできないところが多いのです。


また、漆は乾くという言い方をしますが、本来は硬化と言われます。漆液のラッカーゼという酵素が、漆液の主成分の脂質成分(ウルシオール)を酸化することにより、硬化が進行していきます。

漆室(ウルシムロ)という湿度と温度を保つ保管庫に入れて硬化させます。
漆は温度が24℃~28℃、湿度が70~85%が適切だと言われており、上塗ではその環境を整えるのに湿度コントローラーで厳密に調整する方もいるのです。

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                                                               漆室

このインターン制度で、上塗、叢雲塗指導をお願いする塗師の清水一人さんは、普段は漆器屋からの注文が大半ですが、清水さんご自身の作品を作っているときを息抜きに楽しんでいるそうです。「この仕事を志しているのなら、自分が楽しめる仕事を思い切って楽しんでもらいたい」とコメントを頂きました。
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漆器のこと、塗りのこと、私なりに情報発信をさせて頂きます。少しでも興味を持って頂いたり、楽しんで頂ければ幸いです。

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