90年代中期のゲーセン事情を知れる一番の資料『できる!ゲームセンター』

※これは2003年に旧ブログに掲載した記事の転載です


皆さんは、1999年に発売された、「できる!ゲームセンター」というゲームをご存知だろうか?

これは当時流行っていた、ファミレス、コンビニ、テーマパーク、学校などの経営を疑似体験できる、経営シミュレーションゲームの一つだ。

「できる!ゲームセンター」はその名の通り、ゲームセンターを経営するゲームなのだが、アーケードゲーム業界の歴史を凄まじくリアルに体験できるという、良くも悪くも強く思い出に残る作品だった。

何度かお話している通り、私は90年代中頃にゲームセンターで働いていた過去があり、それなりにゲーム業界の裏事情を知っていたりする。

そんな私にとって、この作品はまさにクリティカルヒット。 雑誌で記事を読んだ途端、近所のゲームショップに飛んで行き、何のためらいも無く新品で購入してしまったのだ。(普通は中古が出回るまで待つのに)

さて、ここからは若干攻略本風味で紹介していこう。


■ゲームの目的
システム自体は「ザ・コンビニ」タイプで、筐体と基盤、プライズマシン等を仕入れ、店内に効率よく配置していき、お客のインカムをかき集めていく事が目的。

またゲーム機以外にも、両替機やジュースの自動販売機、観葉植物や販促ポップ等も購入&配置できる。 これらを組み合わせて、自分なりのゲームセンターを作り上げよう。

ただし、月末には電気代や人件費などの支払いが待っているので、維持費には注意が必要だ。支払いを考えていなくてあっさり倒産、なんていうお寒い結末にならないように。

※用語集
・筐体=例えるなら、ファミコンやPSなどの、ゲームハードだと思って下さい。
・基盤=筐体がハードなら、基盤はソフト。
・プライズマシン=この場合、UFOキャッチャーやプリクラ、占いマシン等など。
・インカム=小銭、または日銭。お客さんが筐体に投入する、100円玉や50円玉。

■二つのモード
・シナリオモード
チュートリアルを兼ねた、短いシナリオがいくつも用意されている。 シナリオのクリア条件を満たせば、クリアとなり、次のシナリオに進める。

・経営モード
70年代後半から始まり、90年代後半までの20年間を、倒産する事なく運営し続ければクリア。

■様々な要素
・商品の人気
全ての商品は5段階評価で人気が決まっており、★から★★★★★で表される。これがまたシビア過ぎるほどインカム数に反映され、インカムが低いだけならまだしも、5つ星ゲームが無い店だと、客足まで遠のいてしまうのだ。

基本的にどのゲームも、発売当初に最大の人気を持っており、時間が経つにつれて、面白いように下がっていく。この人気の下がり方は、各商品ごとに設定されており、テトリスのような息の長い商品と、凡百の格闘ゲームのような、一瞬だけ光って終わるゲームとの差が、見事に表現されている。

・謎の業界向け雑誌
毎月更新されるこの業界向け雑誌を読み、流行を先読みし、今後ブレイクするであろうゲーム(ジャンル)を見定め、それに見合った基盤を導入していく事が基本となる。 元ネタはコインジャーナル(※1)か?

・新作の発売
月ごとに新作が発売される。前述した通り、どんな作品も発売当初は高い人気を誇っている。という事は、逆に言えば発売後すぐに仕入れないと、チャンスロスになるという事。月の変わり目に、どれだけお金を残しておけるかが鍵となる。

・微妙な名前のゲーム達
さすがに実名までは無理だったらしく、なんとも微妙なタイトルに修正されている。(例:スペースインベーダー=インバーダーなど)

が、知ってる人間からしてみれば、一発で解るような名前なので問題ない。

※用語集
コインジャーナル=ゲーセン経営者向けに発行されていた業界誌。基本的にお堅い雑誌だが、読んでみると結構面白い。経営者インタビューに、モロにヤクザと分かるコワモテのオッサンが登場したりと、なかなか痺れる内容だった。


■年代別の特性
・70年代後半~80年代前半
ゲームは70年代後半、いわゆる"インベーダー以前"から始まる。この頃は"TVゲーム"という物自体が珍しく、基本的に何を仕入れてもそこそこ売上が上がる。
そして、訪れる伝説のインベーダー襲来。日本全国に雨後の筍のごとく乱立したゲーセンブーム(インベーダーハウスブーム)をリアルに体験できる。

経営モードであれば、この頃にどれだけ資産を残せるかが後々重要になってくるので、序盤とはいえ気を抜かないように。多少無理をしてでもテーブル筐体とインバーダーを買い漁り、客の小銭を絞り取れるだけ絞り取ろう。

そして次々発売される夢の結晶のようなゲーム達……。 今でこそ大企業と言われるゲームメーカーも、この頃からの積み重ねで大きくなったんだなあと再認識させられる。一言で言うならば、至福の時。

※用語集
テーブル筐体=昔、喫茶店などに置いてあった、まさにテーブルの形をした筐体。お母さんのお財布からお金を盗み、近所の喫茶店でコーヒー&トースト250 円というセットを注文し、ドンキーコングやらスペースインベーダーやらゼビウスやらを何時間もやり続けたことを思い出します。(喫茶店には怖いお兄さん達がいなかったんだもん)

・80年代中盤~90年代前半
懐かしのテーブル筐体から、SEGAのアストロシティに代表される、アップライト筐体に移行する時期。"筐体自体にも人気が設定されている"ので、人気の無くなった基盤を、人気の高い筐体にぶっ込んで、無理矢理インカムを落とさせるという技も可能。

一つ注意しなければならないのが、筐体を切り替えていくには、膨大な経費がかかるという事。だが、チャンスロスを無くすためにも、アップライト筐体の発売と同時にテーブル筐体を全部売りさばき、総入れ替えするくらいの意気込みが欲しい。

また、この時期は様々なジャンルの基盤が発売されるので、どれを導入するかで本気で悩む。売れ線と死に筋を冷静に見極めていこう。

そして始まる対戦ゲームブーム(というかスト2ブーム)。当時はまさかこれが終焉への第一歩だとは、誰も気付かなかった・・・。

※用語集
・アップライト筐体=今、巷に出回っているゲーム筐体はほとんどがコレ。SEGAのアストロシティは神。エアロシティは無かった事に。


・90年代中盤~90年代後半
この頃になると、息の長いタイトルはほんのわずか。殆どの基盤が、発売後1ヶ月もするとゴミ同然に成り果てる。そのくせ基盤や筐体の値段は跳ね上がり、100円でどうやって取り返していけばいいのか皆目見当がつかない。
特に注意しなければいけないのが、対戦ゲームブーム。色々と基盤が発売されるのだが、どれも息が短く、人気が高いからといって大量に仕入れたり、対戦ゲーム専用の筐体をボンボン導入したりすると、基盤を売りさばいても大赤字という、大変悲惨な展開が待っている。

詳しくは後述するが、この "基盤を売る" ことこそ、このゲームの肝なのでお忘れなく。

はっきり言って、この後半戦を乗り切るには、かなり思い切った改革が必要となる。この時期だけ、異様に難易度が高く、夢も希望も無くて心が折れる。

まあ、現実世界でもそうだったんだけどね (はぁと)

※用語集
・対戦ゲーム専用筐体=何の事は無い、SEGAのVSシティのこと。粗大ゴミ。(同意語にSEGAブラストシティがある)

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