住まいの「賃貸vs.持家」は損得ではなくライフスタイルのの違いにすぎない

 投稿第2回です。年が明けました。今年もよろしくお願いします。さて、タイトルにある、住まいは賃貸と持家のどちらがお得か、みたいな記事は、本当に長年議論されてきて、もう神学論争のような感じです。が、昨年は新型コロナによる働き方・暮らし方の激変で、住まい方や不動産需給も大きく変化し、今後は従来の理屈が通用しなくなる、よって賃貸・持家の勝ち組負け組も変化するのだという趣旨のネット記事なども見かけるようになりました。たとえば、これとか。

 実は私は、かつて『住みたいまちランキングの罠』という本を書いていて、その中で、「マンション購入を煽る「常識」に騙されるな」という章を立て、賃貸・持家の問題について、このように総括しています。

「家を買う・借りるの損得は、立場・状況によって変わるため、誰にでも当てはまる唯一の答えはない。マンション購入後に起きるできごとによって、購入が得になる場合も、損になる場合も両方ある」

 この本を出したのは、もう3年近く前。不動産業界が自分たちの営業目的で街のランキングを発表していることに警鐘を鳴らすのが筆を執った主旨でした。その流れで、そもそも不動産を買うか借りるかを冷静に考えようという提言を、当時書いたのでした。

 上記の主張自体は、今も変わるものではないのですが、3年を経て、私自身、持ち家生活から足を洗い、賃貸生活に突入してみた結果、さらに掘り下げて、次のような意見に達しました。

 よく、賃貸か持家かって、損得損得という視点からばかり議論されるけど、実は損得で考えること自体、偏った視点に立っているのではないか。
 そもそも、賃貸か持家かはライフスタイルや価値観の違いであって、そう考えると損得は関係ない。というか、損得を気にする価値観の人が、それを基準に賃貸か持家かを選べばいいというだけだ。誰もが損得に振り回される必要なんてないんだ。

 上記にピンとこない人もいるかもしれないので、ちょっとたとえ話をしましょう。どうしても高級外車に乗りたいからといって、中古でもいいのでベンツやBMWを買って乗り回す、という自動車趣味の人がいるとします。自動車はあくまで移動手段と考えるならコスパ重視の国産車、いやいや今や車は所有せずカーシェアでよい、とさえなるかもしれませんが、彼らにとってはそうではありません。昔のCMでいうと、pricelessってやつでしょうか。

 あるいは、スポーツでも音楽でも、何かの趣味を持ち、それに大枚を払う…興味のない人から見れば、なんでこんなことにお金を払うのかと思えるでしょう。でも、それはそれぞれの考えによります。

 都心のタワーマンションを購入、あるいは賃貸で。郊外の一戸建てを購入、あるいは賃貸で。そんな、どこに、どのような住まい方をするのかも、実は同じ話ではないのでしょうか。そもそも、損得で考えるのがおかしいのですが、安くても数千万円という巨額の出費だけに、つい損得で考えてしまう、ここが、住まい選びの大誤解であり、大きな問題なのです。

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