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競馬素人がみたG1の涙

テレビをぼんやりと観るという習慣がない。

観る時は意志を持って観る。

子どもの頃、
さんざんぼんやりとテレビを観たので、
もうぼんやりテレビはおなかいっぱいなのだった。

ドラマもアニメも映画もそこまで好きじゃないし、
観る時は「ブラタモリ」とか、なんか笑えるやつ、とか。

なのだが、先日、雨の日にちょっとうつっぽくなって、テレビでもぼんやり観てみようかなと思い立った。

うちのテレビはAQUOSの一番小さな型で、持ち運びできる、機能もシンプルに
地域で受診できる地上波が基本だ。

日曜日の昼下がり、
パッと電源をいれて映し出されたのは、
競馬中継だった。

今までならすぐに違うチャンネルに飛んだのだけど、
たまたま2つの興味があって、
生まれて初めて競馬中継を
意志を持って観よう、と思った。

一つは、G1のビクトリアマイルという名前のレースだったこと。
G1ファンファーレを昔、実際の演奏担当の航空自衛隊中央音楽隊のコンサートで生で聴いたことがあり、元金管奏者の私は大変感動したので、
もしかしたら聴けるのかも…と思ったこと。

もう一つは、人間が馬に乗る、ということに対する素朴な興味だ。

先日、兵庫県の親戚に会いにいくのに、兵庫県三木市の三木ホースランドパークという馬事公苑施設の宿泊所に(たまたま安かったので)家族で泊まった。


なぞの人形。敷地内にいっぱいいる。

三木ホースランドパークでは様々なアクティビティが用意されているようだ。

時間的に無理だったので、
自分たちが体験として馬に餌をやったり乗ることはしなかったけど、
馬術の練習をちらっと見せてもらえたり、馬がその辺の草食べてるのを見たりしたので、

馬に人が乗って、言うこと聞いてもらって走るって、改めてすごいことだな、とぼんやりと感じたりしたのだ。

綺麗なサラブレッド。

ギャンブルというものは宝くじ10枚1回が私の最高の購入歴なので、馬券の買い方も仕組みもわからない。

競馬に無知な傍観者として、
中継を眺めていた。

出走前に、騎手と馬のプロフィールをアナウンサーが教えてくれる。
こういうのを参考に馬券を買うんだろうか。
 
今年に入って、若い騎手さんの落馬死亡事故が2件あったのをニュースで知っていた。(そのうちの1件は高知競馬だった。)
ご家族の悲しみ、関係者の悲しみ、いかばかりか…。

速さを競うレースは、
何でも死亡事故のリスクがあるんだろうと思うと、
騎手の皆さんの安全を祈らずにはいられない。
勿論、お馬さんたちも。
 
うちの上の子なんかは、
馬が人間の都合で競走させられて、
怪我したり安楽死させられたりするのが嫌だから、競馬は嫌い、と断言していた。

そういう気持ちも、自然だよなあ。

あ、武豊だ。
私がちびっ子の時から有名な、武豊騎手が出てきた。
この人、すごいな。騎手の現役ってよく知らないけど、ずっと馬に乗り続けて、レースに出続けるって、すごい。

でも、知ってるのは武豊騎手だけ。
あとは、馬も人も知らない。
誰が勝ちそうとか、全く検討がつかない。

さて、画面の中の府中競馬場にG1ファンファーレが鳴り渡る。残念ながらどうやら録音らしかった。

G1には種類があって、有馬記念とか、天皇賞とか、そういう競馬知らない人でも語感は知ってるみたいな大きいレースじゃないと、自衛隊の生演奏はないらしい。残念。

一斉に馬たちが走り出す。
なんとなく順番が決まっていく。
このままこの順番で走っていくしかないのでは、と素人は思う。

うーん、一番遅い馬はきっと追い越せないんだろうな…くらいしかわからない。
どうやって馬って前の馬を追い越して行くんだろう。
そもそも前のやつを追い越したい、とかいう気持ち、馬にあるんだろうか。
群れて走りたい気持ちはあるらしいけど。
(群馬県?馬が群れて走ってたのかな?)

馬になくても、どうにかして騎手が追い越すようにするんだろうか…
ちょっと右にいこう、とか、もっとここでダッシュして?とか、指示をだすの?どうやって?
でもこの短い時間、ダンゴになった馬の群れではその機微はわからなんなあ…
とぼんやり眺めていたら

群れの側面からぐんぐん追い上げてきたノーマークの馬が一頭いた。

テンハッピーローズ。

えっ、嘘、追いついちゃうの?
追い越しちゃうの?えっ、1番になっちゃった…

これが世にいう「ダークホース」「穴馬」か…!?

素人目にも感動した。
運動会でも感動するパターンのやつね。

予想外だったのは私だけではなかったらしく、
画面に発表される馬券の組み合わせや払い戻し金の読み方はわからなかったが、
どうやら万馬券というのが出たらしかった。

私が見ていたG1だけでなく、他の同日開催の競馬場でのレース合計5つの一等をピタリとあてた人への払い戻しは4億円以上だった。
該当は1人、らしい。

うーん、これでギャンブルとしての競馬にハマる人がいるんだな、と私は理解した。
私はやらないでおこう。

勝ち馬の騎手が喜んでる。
そりゃ嬉しいよね。
後ろにいたのに追い上げて勝てたらね。
おめでとう。

それだけじゃなくて、
津村騎手のヒーローインタビューで
21年目でG1初勝利とのこと。
年齢計算したら10代から騎手生活してる。
それは泣くよね。 
まさに汗と涙。

奥さんとお子さん2人はよそのサッカーの試合見に行ってるって、
もうプロ騎手として長いお父さんのレースは家族にとって日常すぎて、
そうなるよね。

こんな華の舞台になると思ってたらきっと会場にいただろうにね。

それでも、お父さんが生きて、その上、初めて大きな夢を叶えて帰ってきたら、嬉しいよね。おめでとう。

ぼんやりと見始めた初の競馬中継だったけど、
じんわりと暖かくなって終わった。

どうやって馬と人間が協力して後ろから追い上げて勝ったかは、相変わらず私にはわからないままだが、

上々のテレビ鑑賞であった。




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