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こどものもり

静かな時間。

陸の際と、海の彼方が見える、山の上にやってきた。

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芝生の誘惑に負けて寝転がる。

こどもの森と呼ばれる場所の夕暮れ前。

子どもたちの声と連れてきた大人の声、虫の声と、鳥の声、遠くに車の走る音。

こどもがよく遊ぶ場所の木は、なんだか優しい感じがする。

こどもは大人の人間よりも、たぶん木や土や虫に、近い生き物だからかもしれない。

にぎやかな声に、木が喜んでいる気がする。

木、喜、気。きがならんだ。

土佐に流され、それから阿波に向かった土御門上皇がここで月を見たという。

1221年の承久の乱、

自分は「鎌倉幕府を倒そうなんてやめたほうがいいよ」

ってお父さん(後鳥羽上皇)にモノ申した立場だったのに、

お父さんと弟(順徳上皇)がやっぱり失敗しちゃって遠流の刑になったときに、

「自分だけ都で暮らすのはしのびない」って自ら遠流を願い出たそうな。


でもやっぱり都が恋しくて、

「鏡野やたが偽りの名のみにて恋ゆる都の影もうつらず」(「土御門院御集」)

そんな歌もここで詠んだそうな。

「ここの地名は鏡野なんていうそうやけど、そんなのうそやんか。

名前ばっかりで都の影もうつらんわ。」

いや、だって映すには遠いし。魔法の鏡かいな。

やや逆ギレ模様の歌ですね。悲しいのはわかるけども。

なんか気まずいし、自分も遠流になるわ、といったものの、

都育ちの若い盛りのボンボンが「やっぱりそんなこといわんといたらよかった」と思う方が、

自然かと思います。

さみしい遠流の上皇が滞在し、戦国には合戦の城となり、津波襲来時には命を守る避難所となったこの山に、

今はこどもの声が響きます。

香南市香我美町、月見山からお伝えしました。






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