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おわりはじまり

春の陽ざしはあたたかいけれど、風はとても冷たいので、正直まだ春が来ている実感はない。だけど実際は、毎日が信じられないはやさで過ぎていって、気付けば3月の下旬。つい4日前にわたしは大学を卒業した。
わたしにも、わたしの大事な仲間にも、そしてまだ出会っていない誰かさんにも新しい生活が迫っている。

生まれてからずっと同じ街で暮らしている。これまでも変わりゆく街を見てきたし、旅立つ仲間を見送ることもしてきた。今回も、特別なことなんかじゃない。でも、今回は今までで一番心がぎゅっと締め付けられている。だって、わたしの4年間はあまりに素晴らしかった。美しかった。どの瞬間とも、どの仲間とも離れたくない。はじまりがあれば終わりがある、そんなことはわかっている。だけど、今わたしは子どもみたいに駄々こねたい気持ちなのだ。「誰とも、何とも離れたくない!」

4年前の春、大学に入って目標を立てた。「挑戦をする。」
あまりにざっくりしているけど、こう呟いて、いろんな世界に飛び込んだ。勉強も(とても優秀とは言えなかったけど)アルバイトも(店長と喧嘩して辞めたこともあったけど)、サークルも。(一時期めちゃつらかったけど)
とにかく目の前に広がる知らない世界をおもしろがって過ごしてきた。すべてが続いたわけではないし、失敗もたくさんした。でも卒業の日までわたしには愛がたくさんある居場所があった。わたしを必要としてくれる人がいたことが、何よりわたしを育てた。わたしはその愛に愛で返せていただろうか。わたしもみんなを必要としていたこと、みんなに伝えられていただろうか。

この春、わたしは新たな世界に飛び込む。正直未知の世界だし、その存在がいかに重要であるかを学んできたが故に重責に押しつぶされそうな気持ちになることもある。こわい。でも、きっとみんなはじまりに向かう気持ちは一緒だから、ひとりじゃない。そう思えば、なんだか頑張れるような気もする。愛を絶やさず、前を向いて。時々思い出に浸りながら、新たな春のはじまりを迎えたい。

#卒業