見出し画像

乳がん治療のコト

「私は5年後の命を保証するために今を止めるわけにはいかないんです。」
主治医の先生に初診早々にこのような面倒なコトを伝えて積極的治療を拒んだ記憶がつい先日のように思い出される。
詳しい検査もこれからで乳癌で間違いないと予想はしていたものの胸の腫瘍が一体何者なのかもはっきりしていない段階であった。
この時の私は自分が死んだ後のことしか頭に無くて抗がん剤治療などで身体が動かなくなる位なら動ける内に面倒を片付けてスパッと逝った方が良いって本気で考えていた。
主治医含め医療従事者の方々には親の負債を支払いがあり経済的事情を抱えていることも早い段階で伝えた。
先生は「お金と命とどっちが大切?」などのウザい言葉を一切いうこと無く「さて~~・・・どうしようかなぁ?」と時々心の声を駄々漏らししながらも最低限の検査で診断と最善の治療方針を考えて下さった。そして・・・

「一緒に治していきましょう!」
はっきりした口調で死を覚悟している私にこう言葉をかけてきた。
えっ?ええぇぇぇ?!治るのっ??!!
言葉にこそ出さなかったが心の中で絶叫してプチパニックに陥っていた。
同時に”治す”という選択肢もあるということを今更ながらに思い知った。
私は何の躊躇も無く「はい」と応え私のお気楽療養生活がぬる~~~っとスタートしたのだった。

ホルモン療法
私は幸いにホルモン剤が効果的な乳がんであった。
乳がん細胞はエストロゲンという女性ホルモンを栄養として増殖する。
まず、その栄養を少なくする薬を内服して乳がんの増殖をブロックする療法を行うこととなった。
直径5㎜程度の錠剤を毎朝食後に服用する。
人それぞれだが私の副作用は軽度の倦怠感で服用後は短時間でもゆっくり過ごすようにしている。
小さな小さな錠剤だが効果ははっきりと出ていて服用3日目にはガッチリと身体に固定されていた腫瘍が動くようになり日を重ねるごとに少しづつ小さくなっていくのが分かるのだった。
この療法は5年10年の長いスパンで継続していかなくてはならない。
本来女性の身体に必要な女性ホルモンを薬で減らしていくのだから不具合が出てくると思う。
例えば更年期障害のキツイ症状とか・・・
その周辺症状とも上手に付き合っていくことも療法を継続していくポイントなのだと考えている。

化学療法
いわゆる点滴による薬物療法。
がんの薬物療法と言ったら抗がん剤投与を思い浮かべるのが一般的だと思う。
がん細胞を薬物で死滅させる治療だが正常な細胞にも影響を与えてしまう為に脱毛や嘔気などの辛い副作用を経験する方々は少なくない。
もう一つの薬物療法で、がん細胞の増殖の元となっている特定のたんぱく質のみを取り除く分子標的治療がある。
特定の物質のみを薬で抑えるので他の細胞に影響を与えることはない。
私は分子標的治療を行っているが一回目の投与から驚く効果が表れている。
長く続いて辛かった出血がピタッと止まり、ホルモン療法との併用で腫瘍は一段と小さくなり潰瘍化していた皮膚が目に見えて再生されている。
副作用の体力免疫力低下はそれなりに気が滅入ることもあるけれどケアマネの仕事も創作活動も継続出来ている。
いずれやがん細胞が薬に対して耐性を持ち薬が効かなくなる日がくると思う。主治医の先生は薬の変更や最終手段として摘出手術などを検討していくと今後の治療方針を話して下さっている。

まずは!病院に行こう!
「お願いだから病院に行って!」
あの時の姉の涙の訴えが無かったら私は今頃ホスピスか・・・もしかしたら本当に既にこの世にいないのかもしれなかった。
映画やテレビでドラマティックに魅せる為に、がんの治療を壮絶に描くシーンが多く「あんな苦しい目に合うようなら・・・」とネガティブな感情から生きること自体をあきらめてしまうことがあるかもしれない。
もしくは神様仏様頼みの自然療法や民間療法、広告の耳触りの良いサプリに依存して取り返しが付かないほどに悪化させてしまう場合もあるかもしれない。
病院で行う治療は膨大な臨床データーや経験から成り立っている。
そして医薬品や医療技術は日々進歩し続けている。
治療はその場しのぎや天や運に任せるのではなく実に現実的で理論的に確実に進められる。
乳がんの療養はドラマティックなコトはそうそう起こることもない。
淡々と日々を積み重ねていくこと。
何てことない日常を重ねていけることに嬉しさを感じている。

お気楽乳がんサバイバーの私があなたにお伝えします!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?