マケドニアの若きアクティビストと話して思ったこと
”誰も報じてくれない大気汚染。26歳が〈無料公開データ〉ではじめる市民革命「僕たちの国に、きれいな空気を取り戻す」”
このインタビュー記事の構想は、
大気汚染が深刻な国といえば、中国やインドだと思っていたが、どうやら、マケドニア共和国もなのか…、という発見から始まった。
ジョージャンにインタビューをしたのは今年3月。記事が公開されたのは6月、そしていま…と、やや時間が経過しているのだが、
改めて読み直してみて、やっぱり彼のやっていることって、もっと注目されてるべきではないかと感じた。
あと、いま(に限ったことではないが)の日本の状況と通ずるところも多いようにも思う。
ジョージャンについてザックリ説明すると、北マケドニア共和国(旧マケドニア)出身のアクティビスト。
大学卒業後に、マスターを取得するためにオランダへ移住し、現在はブッキングドットコム本社でソフトウェア・エンジニアを勤めている。
そのフルタイムの仕事をしながら、自国のために大気汚染指数を無料で簡単にチェックできるアプリを開発。「きれいな空気」は、国民が要求できる基本的人権だと、マケドニアの市民を啓蒙し、その権利を守るために戦っている27歳だ。
彼と話していて一番感銘を受けたのは、
「自分の国や、同じ問題を抱える近隣諸国ために何ができるかを忘れたことはない」という発言。
ヒーローになろうとしてではなく、あくまでも「そうするのが当たり前じゃない?」といった姿勢で語っていたのが印象的だった。
これを、愛国心が強い、ということもできる。しかし、愛国心という言葉だけでは、伝えたいことが伝わらない気がした。
というのも、戦後の日本には、愛国心を軍国主義や独裁主義に結びつけて否定する風潮があるからだ。
ジョージャンの発言は、洗脳教育や強制から出てきたものではない。
ジョージャンは、いわばマケドニアの秀才で、その頭脳でオランダのビザとフルタイムの仕事まで得ているーー、要は知識階級、エリートだと言える。しかも、移住先のオランダといえばエコ大国。自分だけ”美味しい空気”を吸い続けることもできただろう。
しかし、周囲の人より恵まれた教育を受けてきたことを自負している彼は、そんな自分だからこそ果たすべきこと、社会のために還元すべきことがあると思う、話していた。その気持ちは、洗脳からではない。「自発的に」生まれたものだ。
その国の知識階級が、自発的に国や社会の問題解決に取り組もうとする気持ち。これをなくして、その国の成長を想像することができるだろうか?
ちょっと視点を変えてみると、
その国の平均よりも裕福な家庭に生まれ、恵まれた教育を受けてきたはずの人たちが、自発的に守りたいと思うものが「自分の地位や生活」に終始していたらどうなるのか、という話でもある。
記事の中にも書いたが、北マケドニア政府は、国民の健康に悪影響のある大気汚染問題を隠蔽した過去がある。国民のことを第一に考えている国だとはとても言えない状況だ。
それは、いまの日本とも重なる。
権力が腐敗するのは、歴史が証明する通り。だからこそ、その腐敗に厳しい目を向けていくと同時に、腐敗が生み出した現状にテコ入れもしていかなければならないのだと思う。
その役割を誰が担うのか。
エリートだから担わなければならない義務はないと思う。
だが、エリートがそれに気づかないのか、はたまた、気づいていないふりをしているのか、理由はなんであれ、その役割とは程遠いところにいるのをみると、只々、勿体無いなー、なんでかなーと、もどかしい気持ちになる。
難しいね。
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