戒めてはいけない

戒めてはいけない。
そうして、ようやく、ようやくのことで、私はその言葉を口にすることができたのだ。
――私を……殺してくれないか……。
――なに? 今なんと言った? 聞き間違いかと、彼女は眉根を寄せたが、もう一度同じ言葉を繰り返す気力などなかった。
絶望して俯く私に彼女は微笑みかけた。
――まあ、いいわ。
――えっ? 驚く私の目の前で、彼女の指先が、自らの喉元へと突き立てられる。そして次の瞬間には、彼女は自分の舌を噛み切っていた。
――ああ……! 声にならない悲鳴が喉から零れる。しかし、もう遅かった。
――…………!…………!! 彼女が必死になって私の名前を呼ぶ声を聞きながら、意識は闇に飲まれていった。
――うぅん……。
微睡みの中から、ゆっくりと意識が覚醒していく。

いただいたお気持ちは必ず創作に活かします もらった分だけ自身の世界を広げます