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ちょっとお祭り気分!? 年イチの耐久ナイトレース/VespaGP-2023シーズンRound3

写真説明)VespaGP・2023シーズンの第3戦は、サーキット秋ヶ瀬を舞台に耐久ナイトレースとして開催されました。「え、夜間開催? しかも耐久!?」ってなりますよね。なんでもオリエンテーリング的な趣向(?)が凝らされ、お祭り要素たっぷりなのだとか。なんだか気になります!


無理難題まで盛り込まれた90分耐久レース

この日のために用意された正賞の盾がこちらです。第3戦開催日と“WINNER”の文字、そして王冠などがデザインされ、なかなかの重厚感が感じられます。さて、この盾を手にするのは誰になるのでしょう?

 90分耐久ナイトレースとして開催されたVespaGP・2023シーズンの第3戦。実は2023年の7月30日(日)に開催済みで、記事化と公開が遅くなってしまったところはご容赦ください。
 さて、耐久ナイトレースとはVespaGPにとって夏の風物詩ともいえるイベントレース的な位置付けの様に思えます。それは夜間開催だからなのか、スプリントとは違った長丁場レースだからなのか……、その理由はわかりませんけど遊び要素が盛り込まれるなどして単なる順位争いとは違った楽しみが、参加ライダーにもパドックサポートメンバーにも、そして観戦に来たギャラリーにとってもある様に感じられるのです。まあ、それでも参加ライダー達は楽しむ気持ちと同じかそれ以上に“勝ち狙い”だったりするんですけどね。
 それでは第3戦レースレポートをお届けしていきましょう!
【◎取材協力:VespaGP事務局 ◎写真:小林/平山/菊地 & 事務局】

参加者達がきっちりとマシンを並べているの図は、VespaGPではもはやお約束の光景です。しかもけっこうキレイに揃えられているので、参加者やサポートメンバーはもちろん、居合わす人達にシャッターチャンスを提供していたりします


特殊ルールやハンデ制度で盛り上がるのは必至!?

チーム毎のライダー構成とハンデは事務局によって決定されたものですが、それがまた絶妙なバランスとなっていて、過去の耐久ラウンドでは拮抗したバトルを見せてくれたものです。さあ、今回はどんなバトルを見せてくれるのかワクワクしちゃいます

 冒頭で触れていますが、去る7月30日(日)に2023シーズン第3戦が90分耐久ナイトレースとして開催されました。開催地は埼玉県さいたま市にあるサーキット秋ヶ瀬。ここはポケバイ&ミニバイクやレーシングカートなどに対応するほか、レンタルカートがあったり、レース以外に映画やドラマ及びPVの撮影、自動車メーカーの試乗会、ミーティングイベントなど、幅広い利用目的に応えてくれる“都心から最も近いサーキット”だったりします。
 さて、レース当日は晴れ。しかもさいたま市の観測結果は12時に36.5℃を記録するほどの猛暑っぷり。この週は37℃超えの日もあったそうで、夕方6時の段階でも32.4℃と参加ライダー達の体力と集中力が心配になってしまうというもの。
 タイムスケジュール的には受付&車検の開始時間が16時30分となっていて、これに合わせて参加者達が徐々に集結。その後ブリーフィング(ライダースミーティング)が行われ、17時30分にコースイン開始。練習走行時間枠として与えられたのは18時10分までなので、この間に各選手&各マシンが調整や確認を行います。
 そして18時40分にスタートを切り、90分後に振られるチェッカーを目指して熱いバトルが繰り広げられていく……ワケですが、そこはVespaGPなので特殊ルールが用意されていたりします。

 まず特徴的なのがライダー交代のタイミングで、走行車両も自らのマシンと入れ替える必要がある事でしょう。つまりライダー交代と同時にマシンも交代というワケです。そのため周回数計測用の装置(トランスポンダー)を、その都度付け替えなければならないのでピットワークにも気を抜けません。
 それからチーム毎のハンデ周回数が事前に設定されていて、レース結果にその分が加算される点も見逃せません。そのため最後にドンデン返しなんて展開もあり得ますし、ハンデ周回数はライダーそれぞれの過去のタイムや技量によって調整されているので、各チームがレース当日までに練り上げた作戦によって戦うという頭脳戦的要素もあったりするのです。
 それにレース中は各チームとも8回以上のピットインが義務付けられているのですが、各ライダーにも5分以上20分以下という1回の乗車時の走行時間制限が設けられています。加えてそれぞれのチーム毎、3回目と6回目のピットインではピットアウト時にチェックテーブルでの“お題”を消化しなければなりません。この“お題”とはドリンク飲み干しと腕立て伏せ10回というもの。クリアしてからでなければピットアウトが許可されない……つまりレースを続行出来なくなるという由々しき事態になってしまいます。ただ“お題”に取り組むのはライダーでなくてもよく、ペアライダーとパドックサポートにも資格があるので、そこもチーム毎の戦略的判断で勝負をかけてくるという次第です。ね、ゲーム要素も盛り込まれたお祭りレースってニュアンスが伝わってますでしょうか?

当日は早い段階で行われたブリーフィング。そこではタイムスケジュールやルールなどを確認したほか、熱中症対策などの注意事項についても触れられました。そして「無理はしない」、「みんなで楽しむ」といった話題に参加者達も共感。VespaGPらしい和気藹々とした雰囲気の中、2023シーズン第3戦が動き出しました
練習走行が始まる前に参加者達はマシンにトランスポンダーを付けたり、空気圧の調整を行ったりして準備します。とくにトランスポンダーの装着については方法にまで規定があって、レース中の脱落や計測不能な事態となったチームには即時失格という処分が下されるほど厳しかったりします
それぞれのチーム毎、パドックエリアにレースを戦うための準備を整えていきます。このタイミングでピットサインやトランスポンダー付け替え、それにライダー交代に関する戦略についてなど、最終的な確認をするチームもあるようです。ちなみに右写真の奥側に見える黄色のテントにはピットアウト時のチェックテーブルが設置されていて、ライダー交代に不正がないか、“お題”を確実にクリアしたかなどがチェックされます
今シーズンからテスト的に参戦が認められた4st・ATレーサーがこちら。昨シーズンまでは2st・MTレーサーだけで競われていたVespaGPですが、ベースとなる車両(市販車)は時代の流れで4st・ATが主流に。なので4st・AT車両ならベース車両を探しやすくなり、レギュレーション的に改造可能箇所を絞る事で参戦の敷居が下がるというメリットがあります


“お題”クリアも含めてチーム力が試される!?

空が色づき始める頃、ついに第3戦・90分耐久ナイトレースがスタート。この時点ではまだ明るさが残る状態ですが、次第に茜色へと変わり、ほどなくして夜の帳が下りると一気にナイトレースの様相に。幸先良く飛び出したのはVチーム/♯28佐藤(剛)選手!

 そろそろ90分耐久がスタート! ……の前に、参加チームについて見ていきましょう。第3戦は耐久レースとなるため、チーム毎に戦略を立てて勝利を目指して戦います。チームは2名のライダーと、それぞれのマシンによる2台で構成というのが基本(あくまで2名のライダーが基本という事であって3名のチームもあります)。そこにパドックサポートを増員する事が認められています。実は“お題”の事もあるので、パドックサポートがいるのといないのでは大きな違いがあったりするハズです。
 エントリーは全部で8チーム。それぞれにアルファベット一文字のチーム名が付けられていますが、初見の人にはなんの事やらサッパリでしょう。でもチーム名には意味があって、VespaGPから一文字ずつ振り分けられているのです。ただPだけ2回登場するため、Tが割り振られてV・E・S・P・A・G・Tに。そしてMASTER-KING称号を持つ2人のライダーもチームを組み、賞典外ながらKのアルファベットが割り振られて参戦します。

 Vチームは♯28佐藤(剛)選手と♯62飯塚選手のペア、このチームのハンデは+8周なのでレース終了時点の周回数に8周が加算される事になります。Eチームは♯20尾西選手と♯59菊谷選手のペアでハンデは+6周、Sチームは♯2黒隅選手と♯2阿部選手と♯7牧野選手のトリオでハンデは+3周。Sチームの阿部選手もマシンが♯2となっていますが、これは黒隅選手のマシンを共用しているから。
 続けましょう。Pチームは♯61松本選手と♯77田辺選手のペアでハンデなし、Aチームは♯33尾崎選手と♯55三浦選手のペアでハンデは+5周、Gチームは♯22柳本選手と♯27佐藤(充)選手のペアでハンデは+6周、Tチームは♯10和田選手と♯12中村選手と♯12前田選手のトリオでハンデは+5周。Tチームも前田選手が中村選手とマシンを共用しています。
 そしてKチームは♯5菊地選手と♯23宮地選手のMASTER-KINGペアで、このチームは賞典外となりハンデは-4周。……なのですが、このチームよりも最終確定順位(トータル周回数にハンデを加味した後の結果)が上回ったチームの各ライダーにボーナスポイントが付与されるという特典あり。獲得ポイントによってシリーズランキングが決まるので、今回のボーナスポイントは各ライダー共に喉から手が出るほど欲しい特典となるのは間違いなしと言えそうです。

 さあ、いよいよ90分耐久ナイトレースが始動します。スタート方式はもちろんル・マン式。耐久レースのスタートとしてはお約束の方式です。コース上のピットレーン側にマシンを並べ、逆サイドにはスタートライダーが並びます。
 イタリア国旗柄のフラッグが振られるとライダー達がマシンに駆け寄り、90分後のゴールを目指して勢いよくスタート。その直後からライダー達は圧巻の速さで周回を重ねるなど、スプリントさながらにレースが展開されていく様に驚きを隠せません。
 いっぽうでチームも戦術とピットワークが勝利のために不可欠です。ライダー達はチームの戦術に則りながら規定の走行時間制限を守ってピットインしてくるので、その際にマシンを入れ替えるためのトランスポンダー付け替えも同時にこなすといった具合です。
 しかも3回目と6回目のピットイン時は、ピットアウト後の“お題”が待ち構えているため、チームの誰かが“お題”を消化。きちんと消化した事を確認してからでなければピットアウト出来ません。当然ですが担った誰かが全力でドリンクを飲み干したり、腕立て伏せ10回をこなすワケです。やはり耐久はチーム力(?)が試される場なのでしょう。
 そうこうしているとチェッカーが振られ、90分の戦いに幕が下されました。90分経過後、最初にコントロールラインを通過したライダーに対してチェッカーが振られるため、ゴール順と実際の順位とは異なります。全てのチームがゴールした後、事務局が実周回数とペナルティとハンデを加味して最終順位を確定という流れ。そこが決まらない事には表彰が出来ませんからね。

※以下、事務局から豊富に提供された画像の中から独断でセレクトしてgif動画に加工してみましたのでご覧ください。

♯20尾西選手vs♯5菊地選手
♯28佐藤(剛)選手vs♯7牧野選手
♯12中村選手vs♯27佐藤(充)選手
♯55三浦選手vs♯12中村選手vs♯27佐藤(充)選手
♯2阿部選手vs♯23宮地選手
(ヘルメットが記憶している黒隅選手のものとは違う気がするんです。間違っていたらごめんなさい!)
♯33尾崎選手vs♯23宮地選手
ライダー交代時にマシンも入れ替える必要があるため、トランスポンダーを付け替える必要あり。チームによってライダー同士で協力し合ったり、パドックサポートメンバーが手を貸すなど様々だったりします
パドックサポートメンバーは家族だったり恋人だったり友人だったりと様々です。走行中のライダーの応援、ピットサインの掲出、癒しの存在、話し相手(?)……などなど、サポートの役割もいろいろあるみたいです
“お題”で出されるドリンクには飲むのに時間のかかりそうなものや、どう見ても飲み物ではないものも(上段左)/“お題”をクリアするまでピットアウトが許可されないので、ご覧のようにクリア待ち渋滞が発生しがち(上段右)/天然水を一息に飲む!(中段左)/炭酸水を飲む!(中段右)/チームメイトが飲み干すのを待つ!(下段左)/腕立て伏せをやってるの図(下段右)
高速域で車体を右に左にと切り返していくセクションなんですが、写真で見るよりも実際は数十倍の迫力があるんです
夜の帳が下りてライトが点灯しだすと「これぞ耐久レース!」って感じがしてきます。あくまで個人的にですけど
この日はもう1台の4st・ATレーサーとして、和田選手が参戦していました。テスト参戦が認められてから、わずか3戦目で2台目の4st・ATレーサーが登場したのです。これは今後の増加に期待です


ドキドキの集計結果、最終順位が確定です!

●左写真、左から順に:田辺選手、松本選手(以上2位/Pチーム)、和田選手、中村選手、中村選手の御子息、前田選手(以上1位/Tチーム)、黒住選手、槙野選手、阿部選手(以上3位/Sチーム)
●右写真:入賞者達と一緒の集合写真

 事務局から得た情報では、1位/Tチームにはパドックサポートとして中村選手の御子息が参加していて“お題”ではとくに頑張っていたのだとか。Tチームは走行成績も良かったのですが、御子息の貢献が功を奏し、チームプレイによって勝利を掴み取ったようです。
 2位/Pチームは周回タイムや交代&“お題”など、トータルでバランスが良く、作戦自体も上手く円滑に回っていたのでしょう。シリーズランキングを占う上で欠かせないボーナスポイントも獲得し、後半戦での活躍がとても楽しみです。
 3位/Sチームは牧野選手が絶好調の走りで牽引し、黒住&阿部選手らは安定した走りで貢献。すると結果的に表彰圏内をキープしていたものの、最終ラップでPチームに抜かれて同一周回数ながら3位に。これには少なからず悔しさを覚えたに違いないでしょうけど、チームとしてレースも結果もとても楽しんでいたそうです。
 以上の3チームが表彰台に上がったワケですが、惜しくも入賞を逃してしまった各チームも接戦を繰り広げていたので、それぞれが楽しめたレース展開になっていたのではないかとの事です。

 そんな中、6位となったKチームは賞典外ながら最終順位がボーナスポイント付与の基準となっています。なのでその動向は各チーム共に意識していた事でしょう。なにしろKチームより順位が上のチームにはボーナスポイントが加算されるのですから。でも、そこで手を抜くなんて走りをするハズのないMASTER-KINGペア……なんですが、“お題”の渋滞に2回もハマってしまって他チームにチャンスを提供していました。
 結果として実周回数は133周を走破し、これに-4周のハンデを加味して129周となり最終順位は6位に。これにより多くのライダーがボーナスポイント付与を受けられたのは、Kチームなりの優しさだったのかも知れませんしそうではないのかも知れません。まあ、よくわからないという事で。ともかく、今シーズンの行方を左右する可能性は十分にありそうです。
 最後にコーナリングのGIF動画をいくつかUPしておきます。ただ、事務局からお借りした画像の中で連続写真として成立しているものだけなので、すべての参加ライダーの分があるというワケではありません。その点はご了承ください。

♯55三浦選手
♯2阿部選手
(ヘルメットが記憶している黒隅選手のものとは違う気がするんです。間違っていたらごめんなさい!)
♯12中村選手
♯22柳本選手
♯23宮地選手
♯33尾崎選手
♯61松本選手
♯62飯塚選手
♯77田辺選手

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