パンに挟んだのはきゅうりだけじゃなくて
私は今、きゅうりを絞っている。指の間から溢れた雫はステンレス製の流し台にエメラルドグリーンの小さな湖を作っていた。95%以上が水分で出来ているという。自分のアイデンティティとも言える水分をこれでもかと絞られて、きゅうりは一体何を思うだろう。
「最低でも2回は絞りましょう」有本葉子さんは言う。きゅうりの気持ちを考えるととても3回も4回も絞れないので、2回でやめておいた。
私には、密かに注目している男の子がいる。週に2−3回、すれ違う高校生の男の子。あれはいつもより少し寒い冬