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「ダンタリオンと勇者」第1話

■オープニングイメージ
N「古の時代――人々は、天界に住まう精霊から魔法の力を授かり7つの大国を築いていた。」

  精霊(妖精の見た目)と人間が触れ合うイメージ。

N「しかし、更なる力を欲する者たちは、魔界に住まう悪魔と〈契約〉を結び」

  悪魔が魔術書を手にもつ人間の魂(心臓)を掴んでいるイメージ。 

N「死後の魂を代償に、破格的な力を手に入れた。
  ――彼らは〈闇使い〉と呼ばれ、恐れられている」

  恐ろしい闇使いのイメージ。

■魔界・魔王城・外観
N「魔界・魔王城」

  赤い満月が浮かぶ薄暗い空。
  平原の中に牡牛の顔を模したドーム状の魔王城がある。

■魔界・魔王城・魔王の間

  魔王サタンの前に立つ4人の勇者たち。
  サタンは身長5mの巨体で、雄牛の顔と人間の男の胴体を持つ。

ユリウス「魔王サタン!お前の邪悪な力はここで封印させてもらう!」

  と、剣を抜く勇者の1人ユリウス・オッペンハイマー(21)。
  金髪碧眼の美青年で、第1魔法騎士団の制服を着ている。 

サタン「遥々魔界までよくたどり着いたな、勇者ども」

  王座に腰掛けたまま余裕そうに。
  300体ほどの骸骨の戦士(動物ではなく、人間の骨の姿である。)が、
  剣を抜いて勇者たちに迫っている。

ユリウス「貴様は闇使いグレゴリーと契約し、その力で我が王国を征服しようとしている!それを容認する訳にはいかない!」

サタン「グレゴリー?知らないなァ、吾輩と〈契約〉した者が、吾輩の力で何をしようと知ったことではない。そもそも人間どもがどうなろうと、吾輩の知ったことではないのだが…」

ユリウス「精霊様の加護があらんことを!」

  と、剣を振り上げ、そこに雷の魔法を帯電させてサタンに攻撃。
  勇者リア・クレメント(17)は水の魔法で、勇者ロミオ・ホップウェル(16)は草の魔法で一斉に襲い掛かる。
  リアはポニーテールにした白い髪と紫色の瞳が落ち着いた印象を与える。第2魔法騎士団の制服を着ている。
  ロミオは草色の髪をマッシュルームの形にカット。背が小さく可愛らしい。第3魔法騎士団の制服を着ている。

サタン「ふん、この程度……なぬっ!?」

  勇者パブロ・フルーム(17)が、サタンの首元に剣をさす。
  パブロは天然パーマの赤髪、垂れ目で黄色い瞳、穏やかな風貌の青年。        
  第2魔法騎士団の制服を着ている。

サタン「え……ちょ…ヤバ。思ったより強いんですけどォ…」

  サタン、パブロの剣に吸い込まれるようにして崩れていく。

■魔界・魔王城・外観

  魔王城、ドーンという爆発音と共に瓦解する。

カラス1「カーッ!カーッ!」

  と、赤い目を光らせて、魔王城の周りを飛びまわる。

■魔界・マモンの屋敷・外観

  金ぴかで派手な屋敷。

ダンタリオンの声「こちら、ご所望の角が伸びる薬です。」

■魔界・マモンの屋敷・中

  壁も天井も金ぴかの部屋。
  ダンタリオンが跪き、薬瓶をマモンに献上している。
  薬は紫色で泡立っており怪しげな雰囲気である。

  ダンタリオンは、羊骨の仮面と角をつけ、白銀色の長髪を伸ばし、身長2m越えで全身黒ずくめの悪魔。茶色い薬入れのカバンを持ち歩く。
 
  マモンは、オレンジ色の外はねボブの髪とオレンジ色の瞳を持ち、八重歯で活発な印象の美少女。非常に短い悪魔の角が生えている。

  金ぴかの椅子に座るマモン、不満げにダンタリオンを見下ろす。
  肩の上にはカラス2、膝の上にはハリモグラを乗せ、背後には巨大蜘蛛が居る。

ダンタリオン「今朝やっと完成し……」
マモン「何この、きもちわるい液体っ!」

   と、薬瓶を頬り投げる。瓶が割れ、薬が床にぶちまけられる。 

ダンタリオン「えーっ!?」

   青ざめるダンタリオン。

マモン「自分の角がでかいからって自慢ですかーっ!?」
ダンタリオン「い、いえ。マモン様のご命令で、角が伸びる薬を作れと!」
マモン「んー?ああ…そういえば頼んだっけ?」
ダンタリオン「は…はい」
マモン「でももういいわ。気分変わったし、角なんかいらないし」
ダンタリオン「えっ」
ダンタリオンM「徹夜でつくったのに……」

   と、青ざめた顔で、膝をついて倒れる。

マモン「それより。これみてっ!」

   と、カラス2の首を絞める。

カラス2「カ―ッ!」

   カラス2の赤い瞳から放たれた光が、空中に映像を映し出す。

ダンタリオン「はあ…」

   落ち込んでいるダンタリオン、仕方なく映像に目を向ける。

■映像
   煙を上げて、ぼろぼろの魔王城が写る。

   ×  ×  ×

ダンタリオン「!?ま、魔王城が…!?破壊されてる!?」
 
   ×  ×  ×

  オークのレポーターが、コウモリを握って(マイクに見立てて)映像に写る。

オークのレポーター「速報です。なんと、〈勇者〉と名乗る人間たちが魔王城に侵入し、魔王サタン様の魔力を封じたとのことです。にわかには信じがたいですが……」

   と、破壊された魔王城の方を見て。
 
   ×  ×  ×

ダンタリオン「ま、魔王様、封印されちゃったんですか!?」
マモン「んー最高!今日はパーティーだわ!」

   と、金の酒の盃にキス。

   ×  ×  ×

オークのレポーター「カラスがとらえた映像によると、勇者たちは魔王城内部を逃亡中とのことです」

   と、魔王城内部を走る勇者4人の荒い映像がうつる。

  ×  ×  ×
   マモン、カラス2の頭を叩いて、映像を切る。

マモン「わかったわね?ウスノロ悪魔」
ダンタリオン「えっと…?」
マモン「あんたは、勇者どもを生け捕りにしちゃって!」

   と、勇者4名の指名手配表をダンタリオンに投げつける。
   宙をはらはらと舞う4枚の指名手配表。

ダンタリオン「え!?!?」
マモン「こいつらの首をささげて、アタシが次の魔王になるんだから!」
ダンタリオン「俺はただの薬屋ですし…普段、引き籠っているので、人間はちょっと…」
マモン「ふーん。人間の魂すら奪えない、弱小悪魔を雇ってあげてるのは誰だと思ってるのかな」
ダンタリオン「……」
マモン「ほら。エテルが欲しいんでしょ。ならやってよ」

   と、袋を投げつける。
   ダンタリオン、袋を受け取って。

ダンタリオン「……はい」
マモン「じゃ、よろしくぅ~」

   マモンは巨大蜘蛛に乗って、窓から出ていく。

ダンタリオン「……」

   と、袋の中身を確認して。
   ダイヤの形をした、宝石のような結晶が3つ入っている。

N「エテル――それは魔界の通貨である。」
N「その原料は、悪魔と〈契約〉した人間の死後の魂――欲深い魂ほど色が濃く、魔界では高値で流通している。」

ダンタリオン「……勇者…か」

   と、4枚の指名手配表を拾い上げる。
   そのうち1枚のパブロを見る。(画質は荒い。)

ダンタリオン「果てしなく気が乗らない……」

   ハリモグラが、ダンタリオンの肩をぽんと叩いて励ます。

ダンタリオンM「けど……自分で人間の魂を奪えない俺は、雇われて生活費を稼ぐしかない」

  ダンタリオン、エテルが入った袋を懐にしまって立ち上がる。
  窓の外に見える魔王城を見る。

ダンタリオンM「魔王様が封印されたってことは……アイツ……」

  と、思いを馳せる。(クロムを思い浮かべている。)  

■同・魔王城・地下・牢獄

N「魔王城・牢獄」

  様々な悪魔や魔具が独房に入れられて、拘束されている牢獄。
  建物が揺れて、天井が瓦解する。

  拘束されていた魔剣クロムの拘束具が、次第に消えていく。
  クロムは、剣先を渦巻き型に丸めているが伸ばせば全長2mの剣。

クロム「お?」

  と、飛び跳ねて自由を確認。

クロム「やったー!動けるぞぉ!」

  同じく、独房に入れられた悪魔たちの拘束具が消えていく。
  セーレの牢屋の前に、白馬が駆けつける。
  セーレは、水色の髪と瞳で、悪魔のねじれ角をもつ美青年の悪魔。

セーレ「……アンヴァル!」

  と、白馬アンヴァルを嬉しそうに呼ぶ。
  アスタロトも牢屋をすり抜けて出ていく。

アスタロト「セーレ!サタンの力が弱まった。脱獄するなら今だぞ」

  アスタロトは 真っ暗闇のガスの塊のような全身に灰色のフード付きのコートを被り、ニタニタと笑う半月型の目と、これまたニタニタと笑う大きな口だけが浮き出している悪魔。

セーレ「そうみたいだね」

  と、アスタロトにウインクして、牢屋の柵を握り壊して脱獄。 
  アスタロト、霧のように空気に消えていく。

セーレ「クロム、君も乗せてあげようか?」

  と、白馬に跨って。
  が、クロムは既に牢屋の外へ去っている。

クロムの声「ダンタリオンの旦那に会える!ひゃっほーっ!!」

  という声だけ聞こえて、笑うセーレ。

■魔界・魔王城・外観

  さらに崩れている魔王城。
  巨大蜘蛛にのったマモンがやって来る。

オークのリポーター「これから、7つの大罪を司さどる悪魔会議が開かれ、
 今後の方針を…ってちょっと!マ、マモン様!?」

  マモンが、マイクに模したコウモリをリポーターから奪う。

マモン「次の魔王は誰かなー?んふふ」 

  と、カメラ役のカラス1の瞳に向かってウインク。

■同・魔王の間

  巨大蜘蛛に乗ったマモンが来る。

マモン「ごめん、待ったー?」

  空席の王座を囲う円形に並んだ椅子に、リヴィアタン、ベルフェゴール、ベルゼブブ、アスモデウス、ルシファーが座っている。(それぞれの定位置)
  マモンも席につく。

アスモデウス「やあ、マモン。あのサタンを封印できるなんて、勇者はきっと美しい人間に違いないよって、話をしてたんだ」
N「アスモデウス 「色欲」を司る悪魔」

  アスモデウスは、スラリとしたピンク色のスーツに身を包んだ美青年。ピンク色の髪と目、目元は牡鹿の顔の骨で覆っている。
  アスモデウスの背後に立つセクシーな女性の姿をしたサキュバスのリンとメイナと、イチャイチャしている。

ベルゼブブ「勇者って、食ったらうまそうだな。ぐへへ」
N「ベルゼブブ 「暴食」を司る悪魔」

  ベルゼブブは豚の耳とワニの尻尾を持つ肥満の人間の男の姿。身長5メートルに及ぶ巨体であり、でっぷりと床に座りこんでいる。

レヴィアタン「違う!話を脱線させるな、下衆ども!魔王サタンの跡を継ぐのは誰がふさわしいのかという話だ!!」
N「レヴィアタン 「嫉妬」を司る悪魔」

  と、机をたたく。
  レヴィアタンの上半身は人間の青年の姿で、緑色のくしゃくしゃした髪、緑瞳の目を持つ。下半身はどす黒い紫色の大蛇。

ベルフェゴール「(目が覚める)……!ふあああ(あくび)」
N「ベルフェゴール 「怠惰」を司る悪魔」

  ベルフェゴールは、眠たげに瞼を垂らしている美少女。ゆるいパーカーを着ている。黄緑色の内巻きボブヘア。
  背後に厳つい熊の魔物。たまに頭を甘噛み(?)されている。

マモン「はいはーい!じゃあ、真っ先に勇者を捕獲したものが次の魔王ってことでどう?」
N「マモン 「強欲」を司る悪魔」

アスモデウス・バルゼブブ・リヴィアタン・ベルフェゴール「……!」
ルシファー「勇者はほおって置けば野垂れ死にます。それよりも……」
N「ルシファー 「傲慢」を司る悪魔」

  ルシファーは薄紫色の長髪を持つ人間の美しい女性の姿。背中には漆黒色の4対の羽を持つ。
  ルシファー、微笑んで、目を薄く開ける。

ルシファー「魔王城を守る、骸骨の戦士たち――アレを操れる者が魔王にふさわしい」

  他の悪魔たち、異論はないという感じで黙る。 

ベルフェゴール「確かに……骨ちゃんを管理するの、魔王の役目」
マモン「でもさ。あの骸骨たちを操れるのは、サタンが持ってる魔王の指輪だけっしょ?」

  赤色のエテルを施した魔王の指輪のイメージ。

ルシファー「伝統にのっとり、魔王の指輪を手にしたものが次の魔王としましょう」
悪魔たち「……」

  互いにけん制するように睨み合う。

ルシファー「以上、解散です」

  と、微笑む。


■魔王城・エントランス

  300体の骸骨の戦士と勇者が戦っている。

ユリウス「魔法攻撃がきいていないのか?こいつらには?」

 骸骨に雷の魔法を落とすユリウス。
 骨が崩れて、動きが鈍くなるが、すぐに回復して再び動く骸骨の戦士たち。

リア「いやっ!骸骨きもちわるいーっ!」

 リアは、両手から水を滝のように出して骸骨にあびせる。

ロミオ「骸骨なのにどうやって動いてるのかなぁ」

  ロミオは、土の壁を作って骸骨の動きをせき止め、その間に、崩れ落ちた骸骨の頭蓋骨を手持ち袋にしまい込む。
  採取に気を取られたロミオは、骸骨が襲い掛かっているのに気が付かない。

パブロ「……ロミオっ!危ない!」

  パブロ、ロミオの前にたち、火で燃え上がらせた剣で、一斉に骸骨をはじく。

ロミオ「ありがと…パブロ」
パブロ「(ロミオに微笑むが)……っぐ」

  倒れるパブロ。

ロミオ「どうしたの?」

  ロミオが土の壁を作り、パブロを守る。

パブロ「いや、なんでか急にしびれが…」

 いよいよ剣を持ってられないまでにしびれ、パブロははなんとか剣を鞘に納める。立っているのも苦しく、地面に膝をつく。

リア「パブロ!!大丈夫?」
ユリウス「まだ魔王城も出れていないんだぞ!ここでその調子じゃまずい!」

 パブロをかばって骸骨と戦う勇者3人。

パブロ「……くっ」

  覚悟を決めたパブロ、目を閉じて開ける。

パブロ「……俺の残りの魔力を使い切れば、骸骨の足止めくらいならできるかもしれない」

 ゆっくりとうなずくユリウス、リア、ロミオ。

ユリウス「パブロ、君の雄姿は忘れない」

 リアとロミオは涙ぐんで、勇者3人はパンデモニウムの出口へと去っていく。

 パブロ、なんとか立ち上がり、ユリウスたちを追いかける骸骨めがけて口をすぼめ、口先から豪火を吹き出す。

 骸骨の動きが鈍っている間に、ユリウスたちは逃げ切り、入り口のドアを閉める。骸骨たちはその先にはいけない。

パブロ「ふっ…」

 パブロ、胸をおさえて地面に倒れこむ。
 パブロを囲むように、300体の骸骨がじりじりと近寄ってくる。
 パブロは必死にもがくが、しびれて動けない。

パブロM「このまま死ぬのか…俺」

 

■(回想)人間界・オズワルド王国・フルーム伯爵家の屋敷

パブロ「え……勇者に、ですか?」

  パブロの驚く顔。
  アリス・フルーム(36)と対面している。

アリス「(わざとらしい笑顔で)カルロスが熱を出してしまったの。代わりに魔界へ行って来て頂戴?」
パブロ「はい。ですが、勇者に選抜されてない俺が行っていいんですか」

  奥の寝室で、顔を赤くして眠っているカルロスが見える。

アリス「あの状態で魔界へ行けっていうの?王国から預かった勇者の剣よ。フルーム伯爵家の名に恥じない働きをしてきなさい」

  と、勇者の剣をパブロに渡すと、すぐにカルロスの看病に戻る。

パブロ「……承知しました、母上」

  と、勇者の剣を手に、歩きだす。
  メイドと執事の噂話が聞こえる。

メイド「おかわいそうなパブロ様。突然、今から魔界へ行けだなんて。死ねって言っているようなものよね?」
執事「奥様からしてみればパブロ様は目障りなんだろうな。実子のカルロス様を差し置いて、養子のパブロ様が伯爵位を継承するという噂もある」
メイド「そりゃあ旦那様は、パブロ様を痛くかわいがっておいでですもの」
執事「それが余計、奥様の癪に障るのさ」

パブロ「……」

  と、廊下にあるマシュ・フルームの肖像画を見上げる。

■(回想)人間界・オズワルド王国・フルーム伯領・孤児院

  パブロ(8)、うずくまって何かを庇い、いじめっ子数名に踏んだり蹴ったりされている。

いじめっ子「ちっ、もういいわ」

  と、去っていく。
  パブロがうずくまって庇っていたものは、怪我をした子猫。

パブロ「もう大丈夫だからな」

  パブロ、微笑んで子猫を抱く。
  マシュ・フルーム(31)、馬から降りて、パブロの傍まで歩いてくる。
  マシュはクリーム色の髪で、あごに髭も蓄えている。第2魔法騎士団の制服を着ている。

マシュ「強いなあ、君」
パブロ「……みんな俺のこと、弱虫って言うけど」

  と、いじめっ子に蹴られた怪我の血をふきながら。

マシュ「いいや。大切なものを守りぬいた君は強い」

  と、パブロの頭を撫でて、子猫を見やる。
  そしてパブロを肩車するマシュ。

マシュ「だが無理はよくない。助けが欲しい時は、助けを求めるのも、強さの一つだ」
パブロ「助けてくれる人なんて、いない」
マシュ「……。ならば、これからは私に頼りなさい」

  マシュ、パブロを降ろして、微笑む。

マシュ「君は立派になれる。私はそう、信じている」

  と、パブロの頭を撫でる。

■(回想)同・フルーム伯爵家の屋敷・外観

N「俺はフルーム伯爵家の養子になった」 
 
  馬車をおりて、荘厳な屋敷を見上げるパブロ(8)。隣にはマシュ(31)。 玄関で出迎えるエレナ・フルーム(7)、カルロス(6)、アリス(27)。
 エレナはフレンドリーにパブロに微笑みかけ、パブロは赤面する。

■(回想)同・フルーム伯爵家の屋敷
N「それから俺は、父さんの期待に答えたくて、必死に努力した。だから――」

  図書室でエレナ(8)と共に本を読み込むパブロ(9)。
  ダイニングでアリス(31)に怒られながらテーブルマナーを学ぶパブロ(12)。
  庭でマシュ(38)と共に剣技の特訓をするパブロ(15)。
  パブロが成長していくイメージ。

  (回想終了)

■元のエントランス

パブロ「……こんな所で……死んでたまるかっ!」

  と、這いつくばる。

パブロ「誰かっ……!」

  骸骨が大きな口を上げて、パブロに襲い掛かってくる。
  真っ黒な穴の開いた目が迫って来る。

パブロ「……っ、助けってくれっ…!!」

 咄嗟に、硬く目をつぶる。

パブロ「………。あれ?」

 骸骨が襲ってこない。

 恐る恐る開いたパブロの目に飛び込んだのは、骸骨が次々と地面に崩れおちる光景。しかも、骸骨は回復せず、消えてなくなる。

パブロ「……なっ、なんだ?」

  骸骨を倒しているのは、剣先を伸ばした巨大な剣クロム。

パブロ「剣が勝手に!?」

  クロム、骸骨を全滅させた後、剣先から渦巻き状に丸まっていく。

クロム「いやあ―久々に動いたあ!!」
パブロ「しゃべっ…!?」
クロム「兄ちゃん。大丈夫かい?」
パブロ「えっと…」
クロム「おいらはね、元々はダンタリオンの旦那の剣なんでさあ!お見知りおきを」

 クロム、お辞儀をする(90度にカクンと曲がる)。

パブロ「ダンタリオン…?」
クロム「何年も前だな…魔王サタンが、ダンタリオンの旦那からおいらを奪ったんだ。けど、あんたがサタンを封印してくれたおかげで、旦那のもとへ帰れるよっ!だから、骸骨を倒したのはお礼さ!」
パブロ「そうか。……ありがとな」
クロム「兄ちゃん、顔色がひでえや。なんとかしねえと。俺は剣だから治せないけど、ダンタリオンの旦那なら!薬屋なんだよ!」
パブロ「うっ……げほっ」

  ゆっくりと瞼が下りていくパブロ。
  その手に剣を強く握りしめて、気を保っている。

  ダンタリオンが現れ、とびつくクロム。

クロム「ダンタリオンの旦那!」
パブロ「……!」

  パブロ、ダンタリオンを見上げ、その風格がある姿に圧倒される。

パブロM「ダンタリオン……」

  ダンタリオン、パブロを見下ろし、パブロの剣を蹴って遠くへやる。

パブロ「なに…す…!」
ダンタリオン「勇者。その剣が、お前の命を蝕んでいる。呪いだ」
パブロ「っ……?勇者の剣が、俺を呪ったって言うのか?ありえない……!?げほっ」

 パブロ、剣をとりかえそうとする。 
 が、パブロの剣が、巨大な蛇「ヨルムンガンド」に変身。 
 パブロに襲い掛かる。

ヨルムンガンド「ぎゃあああっ!!」
パブロ「……っ!」

  ダンタリオンがパブロを担いで移動。
  ヨルムンガンドの攻撃をかわす。

ダンタリオン「あれを見てもそう言えるのか?」
パブロ「……っ!?…そんな、くっ……」

  と、気を失う。 

クロム「兄ちゃん、しっかりしろよ!」

  ダンタリオン、トランクから「角が伸びる薬」を取り出す。

ダンタリオン「おい、ヨルムンガンド。誰に依頼されて呪いをかけているのか知らんが、この勇者に手をだしたら、全てを溶かすこの薬をお前にかけるぞ(棒読み)」
ヨルムンガンド「ぎゃうううう」

  ヨルムンガンド、怖気づいてそのまま魔王城の外へと逃げていく。

クロム「だ、旦那ァ。そんなやばい薬持ってたの?」
ダンタリオン「これはマモン様に作ったただの「角が伸びる薬」、はったりも効くもんだな」

 と、薬を鞄にしまう。

クロム「へへっ、さすがだぜ旦那ァ。ねえ、その兄ちゃん、どうするの?」
ダンタリオン「マモン様のところへ連れて行く……が。」

  ぐったりとしているパブロ。

ダンタリオン「その前に治療しないと死ぬな」
クロム「助かる?」
ダンタリオン「助けるさ。俺は悪魔の薬屋だぞ」

  と、言いながら、パブロを抱えて魔王城を去る。
  クロム、嬉しそうに飛び跳ねてついていく。

〈第2話へ続く〉

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