太陽光発電の出力制御率の疑問

各一般送配電事業者から
出力制御見通しの算定結果が公表されています。

その出力制御率に疑問を感じたので
調べてみることにしました。

●出力制御率
すでに接続されている太陽光に
接続契約申込量が全て導入されたと仮定した場合の
各送配電事業者の出力制御率がまとめてあります。

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北海道で50%、九州でも30%と驚きの数字です。
だいたい10年後の2030年頃には
接続契約申込分も連系されると仮定してそうです。

この数値を見ると
太陽光による発電電力量のうち
30%や50%が制御されそうな気もしますが、
その数値を詳しく見ていきたいと思います。
(図の注釈を見れば分かる話ですが)

●九州電力送配電のシミュレーション結果
先ほどの表は各送配電事業者のシミュレーション結果を
資源エネルギー庁がまとめたものです。

既に出力制御が実施されている九州送配電のデータを見ます。

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接続量・接続契約申込量合計の1445万kWには
30日等出力制御枠の817万kWに
600万~700万kW必要なことから
31%~33%はここからきています。

また、この表を見ると
400万(合計1217万)kWの太陽光設備導入時は
22%の出力制御が想定されています。

なお、2020年度の出力制御の実績は3%です。
(385,533MWh /12,864,532MWh)
※太陽光設備容量が998万kW(2020年9月時点)

今後、219万(1217万-998万)kWの設備増で
22%まで出力制御が増加するのか疑問です。

そこで22%の計算を探ることにします。

●出力制御率の計算根拠を推測
私が想定する計算は以下の通りです。

・太陽光の設備利用率を約14%(1250kWh/年)と仮定
・増加分(+400万kW)の年間発電電力量を算出
・想定される制御量と増加分の発電電力量から制御率を算出

この想定に実際の数値を代入すると
・増加分の発電電力量:400万kW × 1250kWh/年 = 5000GWh/年
・出力制御率:1095GWh / 5000GWh = 22%

ちょうどいい感じの数値です。
+500万~700万kWでも同様の方法で
制御率を算出することができたので
たぶんこの計算方法だと思います。

となると、
30日等出力制御枠の817万kWから
増加した設備の発電量だけで
制御率を算出していることになります。

この数字が何を意味しているのかは分かりません。

●実際の出力制御率(私の想定)
+400万kW(合計1217万kW)であれば、
・想定発電量:1217万kW × 1250kWh/年 = 15,212GWh
・制御率:1095GWh / 15,212GWh = 7.2%

これが制御率として扱うべきではないかと考えます。

ちなみに998万kWから1217万kWの増加分を比較すると
・制御量:385GWh → 1095GWh  ※385は2020年度実績値
・発電電力量:12,475GWh → 15,212GWh
となり、26%が制御されることになります。

太陽光は需要の少ない春に多く発電しますから、
年間の約100日分はいらないことになりそうです。

●他の送配電事業者は?
最も制御率が高い算定結果が出た、北海道を見てみます。

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やはり設備利用率を約14%として、
増加した設備容量で制御率を算出してそうです。

ちなみに制御率が50%北海道ですが
すでに接続済みの容量が194万(117万+77万)kWで
2021年5月現在で制御未実施です。

仮に+100万(合計217万)kWで
想定される制御量があるとすれば
・217万kW:620GWh / 2712GWh = 22% 

となります。
が、既設容量で制御がないところから比較すると
・制御量:0GWh → 620GWh(+620GWh) 
・発電電力量:2425GWh → 2712GWh(+290GWh)
と発電電力量より制御量の方が多くなります。

北海道はこれから風力の導入量が増えるので
その影響を受けてこれから制御が増えるのかもしれません。
私の想定する計算方法での各エリア制御率は以下の通りです。

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※あくまで個人的な試算・見解です。ご理解ください。

●とはいっても
九州エリアで12%の出力制御と想定しましたが、
これは全太陽光発電電力量に対する割合です。

ですがご存じの通り、
太陽光設備にも制御対象と対象外が存在します。

そこで指定ルールの制御率を推測します。
推測条件は以下の通り。
・設備利用率は14%(1250kWh/年)
・制御量は九州送配電の資料を引用
・998万kWから増加する設備は全て制御対象
 (既設制御対象の595万kWに追加)
・オフラインは300万kW固定
・オンラインはオフラインとの差
・旧ルールの最大制御率は13%(30日ルールの観点から)

上記条件で+400万kWと+628万kWの制御を推測します。

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接続申込量分が連系する頃には
指定ルールでざっくり25%制御され、
売電収入が75%になるわけですね。
※あくまでも2017~2019年度の実績ベースの想定です。

●気になる連系線の増強検討
日経新聞の記事にもなりましたが、
連系線の増強で最大4.8兆円の投資が検討されています。

これにより出力制御が減るのではと
再エネ事業者にとってgoodなニュースでした。

この4.8兆円はOCCTOの検討委員会の資料からで
いくつかあるシナリオの最大投資額です。

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増強前の出力制御率は17%で、
連系線の増強により4%に改善され、
再エネ比率は42%になるとの検討結果です。

このシナリオの検討条件になる設備容量は
太陽光はほぼ接続契約申込量含んだ量ですが、
洋上風力がドカドカと盛り込まれています。

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ここまで洋上風力が盛り込まれると
再エネ出力制御率はほぼ風力に起因しそうですが、
エリア別の制御率が気になるところです。

●再エネ出力制御はもったいないのか
再エネ比率向上を目指す中で
制御するのはもったいない気もしますが
その制御をなくす策を講じて
電気代が高騰するならば
制御することも考えたくなったりします。

電化を含めて需要が高まる時間帯が
シフトするような策に期待したいです。

それでは、また。

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