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一年一か月の彷徨

 noteに最初の記事を書いてから、一年一か月が経ちました。そのときは、双葉社Webマガジンで「妻が逮捕された日」の連載を始めたばかりで、終了までまさか一年以上もかかるとは、思ってもみませんでした。
(もちろん、連鎖が終わったからといって、作品が完成したわけではありません。これから修正、加筆を経て、ようやく一冊の本になるのです)

 連載が長きに渡ると予想できなかったのは、展開をまったく考えていなかったためもあります。

 前作「極刑」(連載時タイトル『憐れみの詩』)も、後半は執筆をしながら展開を練ったのですが、今回はそれ以上の見切り発車でした。何しろ連載前にあった構想は、「妻が逮捕された」という、その一点のみだったのですから。
 途中途中で現れた人物も、最終的にどのような役割を果たすのか、決まっていたわけではありません。いえ、主人公を初め、すべての登場人物についてもそれは言えます。
 また、内容も世情を意識して書いたわけではありません。書いているうちに、自然とそういう流れになったのです。

 私たちの日々は、何らかの構想に従って送られているわけではないのです。事件が起これば、そのときそのときで対処する。起承転結でドラマチックに運ぶことなど稀です。そういう意味では、むしろ行き当たりばったりのほうが、よりリアルに人間を描けるのではないでしょうか。

 などと、それらしいことを述べましたが、すべては後付けの理由です。無事に着地できたのは、今回も双葉社のYさんのアドバイスや励ましがあってこそなのです。そのご恩に報いるためにも、よりよいものが書けるよう、努力を怠らずに進んでいく所存です。