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怪物を憶えているか?

註:文中、拙作「極刑」の内容に触れているところがあります。特にネタバレと呼べるようなものではありませんが、未読の方はご注意ください。


 小倉日向のデビュー作である「極刑」も、2作目の「いっそこの手で殺せたら」も、双葉社のCOLORFULとWebマガジンでそれぞれ連載されたものです(初出時のタイトルは『憐れみの詩』と『妻が逮捕された日』)。
 以前にも書きましたが、どちらも最後まで展開が決まっていたわけではなく、書きながら次を考え、ラストへと辿り着きました。そのため、単行本にまとめたとき、作品を少しでもよくするため加筆修正をし、「極刑」はプロローグを、「いっそこの手で──」はプロローグとエピローグも加えました。それによって作品の印象がどうなったかの評価は、読者諸兄に委ねます。

 このnoteで最初に発表した一文、「己の力のみを頼ることなかれ」で触れたように、「極刑」についてあらかじめプロットが固まっていたのは、連載の中盤ぐらいまでです。ただ、エピローグのラスト、主人公にどう決着をつけさせるのかについては、わりと早い時期から決めていました。
 私がイメージとして抱いたのは、ある海外クライムドラマの最終回でした。
 タイトルは出しませんが、IMDbでのシリーズ評価が8.7とかなり高く、知っているひとも多いのではないでしょうか。ところが、最終回の評価だけが、やけに低いのです。多くの視聴者は、あのラストに納得がいかなかったようです。
 でも、私は妙にしっくりきたのです。ああするしかなかっただろうと、素直に受け止められました。
 その影響から、「極刑(憐れみの詩)」の最終回は書かれました。もちろん、ドラマのシーンをそのまま写し取ったわけではありません。それを視聴したときの思いを、描写に生かしたまでです。

 なお、「極刑」のラストシーンにはモデルにした場所があります。この冬、その地を訪れたときに、写真を撮りました。

 主人公が見たのも、こんな景色だったのかもしれません。