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3月11日

あの日、私達はカウワイ島のホテルで眠っていた。

真夜中にドアを叩く音で起こされた。津波が来るから今すぐ高台にある小学校まで逃げろと言われ、1歳にもならない娘を抱き、貴重品だけを持って車に乗り込んだ。

高台の小学校には、すでに沢山の人が避難していた。設置された一台の小さなテレビを無言で見つめる人々の姿を思い出す。大変なことが起こっている。それだけは分かった。

テレビには津波が街を襲っている様子が映し出されていたが、その時はまだ他人事のように眺めていた。

Japan、Japan。という声がどこからか聞こえてきた瞬間、頭が真っ白になった。なんとあの衝撃映像は、日本で起こっていたのだ。他人事が自分事になった瞬間だった。

幸いにもカウアイ島の津波の被害はほとんどなく、昼前にはホテルに戻り、翌日予定通りオアフ島へ移動した。被災の深刻さが報道され続けており、知れば知るほど落ち込んだ。

オアフ島。そこは笑顔で楽しむ観光客で溢れていた。まるで何事も無かったかのように。無邪気に遊ぶ観光客の姿に怒りすら覚えたし、慈悲もないのかと人間に幻滅した。

それでも、ハワイは南国の楽園のままだった。どこで、誰に、どんなことが起こっても Life goes on なのだと知った。

先述で、他人事が自分事になったと言ったが、実際は被害に遭われた方たちの苦しみや悲しみは当事者以外にはどうやっても理解出来ないし、理解したつもりになってもいけない。

ただ、被災された方たちが一番分かっているのかもしれないと思った。どんなことがあっても生きていくしかないんだって。


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