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日本代表監督は日本人が良い #28

2012年1月、FIFA年間最優秀選手にメッシと並んで、なでしこジャパンの澤穂希選手が選ばれた。女子年間最優秀監督賞には佐々木則夫監督が同時に受賞している。これらは2011女子ドイツワールドカップの優勝から得られた栄冠である。

世界の頂点に立ったなでしこジャパンの偉業は、次に男子サッカーの道標となれると考える。現在FIFAランキング上位にいる代表チームの監督は母国語を話す。もしくは、通訳なしで選手とコミュニケーションが取れるのが世界基準である。これは男女のチームを問わずである。選手が所属するクラブチームと違い、同じ時間を共有する事に限りがあるため、短時間でコミュニケーションを取れる能力が必要となるからである。

男子よりも先に結果を出した、なでしこジャパンの歴代監督は以下の通り。

市原聖曠(1981年)※1981 AFC女子選手権およびポートピア'81国際女子サッカー大会時の監督
折井孝男(1984年)※中国遠征時の監督
鈴木良平(1986年 - 1989年)
鈴木保(1989年 - 1996年)
宮内聡(1997年 - 1999年)
鈴木保(1999年)
池田司信(2000年 - 2002年)
上田栄治(2002年 - 2004年)
大橋浩司(2004年 - 2007年)
佐々木則夫(2007年 - 2016年)2011ドイツ女子ワールドカップ優勝、2012ロンドンオリンピック準優勝、2012FIFA女子年間最優秀監督賞
高倉麻子(2016年 - )※男女のA代表を通じて初の女性監督。2014 U-17女子ワールドカップ優勝

wikipediaより引用

正式な女子代表チームが結成された1981年から外国人監督はひとりもいない。その中でFIFA女子ランキングを着実に上げて行き、ワールドカップ優勝、オリンピック準優勝を勝ち得ている。この状況下で外国人監督を招聘するのはほとんど意味がないだろう。

元々、女子サッカーは体格の勝るアメリカ、ドイツ2国が競い合うパワー重視。対して、体格では2強に優る事はない日本は、ずっと個人の技術を磨きパスサッカーで彼らに挑んできた。監督の交代の際にもパスサッカーの継承はずっと行われてきた。それはトップチームだけでなく、アンダーカテゴリーすべての女子サッカーの共通理解でもあった。

次に、上記のなでしこジャパンと同じ時期に当たる男子代表監督を見ていこう。

川淵三郎(1980-81) Jリーグ創設者、初代Jリーグチェアマン
森孝慈(1981-85)
石井義信 (1986-1987)
横山謙三(1988-1991)
オフト(1992-1993)
ファルカン(1994)
加茂周(1994-1997)
岡田武史(1997-1998)
トルシエ(1998-2002)
ジーコ(2002-2006)
オシム(2006-2007)
岡田武史(2007-2010)
ザッケローニ(2007-2010)
アギーレ(2014-2015)
ハリルホジッチ(2015- )

ワールドカップ出場を果たした日本人監督は岡田武史さんだけである。

Jリーグ発足前はすべて日本人監督であるにも関わらず、Jリーグ発足後は積極的に外国人監督を招聘しているのが見てとれる。これはJリーグ効果で日本人選手のレベルが上がり、外国人監督が日本代表を引き受けてくれるようになったからではなく、日本サッカー協会に資金が増えて、外国人監督にお金が使えるようになったからである。Jリーグの発足は1993年、その時のオフト監督の年俸は2000万円である。自国開催のトルシエ監督は1億2千万(推定)、ジーコ監督からは2億円(推定)に跳ね上がっている(とは言え、日本サッカー協会の資金力からすると2億円の予算はかなり少ないと思われる)。

日本代表の監督としてワールドカップ出場を果たした者たちは、この実績を元に他国の代表監督候補として自分を売り込んだり、海外クラブチームの監督に招聘されたりして来た。岡田監督が初めて海外クラブのトップチーム監督として指揮をとったのも、ワールドカップ出場を果たし、ベスト16の実績を買われての事だろう。

4年に一度、32人だけに与えられるこの貴重な機会を、今なお外国人監督に委ねる必要がどこにあるだろうか。日本人監督でもワールドカップ出場を勝ち取れる事は、もう20年前に岡田監督で実証されているにも関わらずである。Jリーグ発足から25年が過ぎ、自国開催を含む6大会連続ワールドカップ出場を果たした。もうそろそろ日本人監督が他国のチームを率いて活躍していてもいい頃である。しかし、現実はそうなってはいないどころか、まるで夢物語のようになりつつある。

なでしこがワールドカップで優勝した事により、女子の世界はパスサッカーが主流に変わった。男子サッカーはこれに習い、スタイルの確立を急ぐべきである。その際、監督が日本人である方が絶対的に有利になる。日本サッカーのスタイルを幼い頃から体得し継承してきた者は、そのあり方を細部に渡って理解し伝えていける力が、自然に備わっていくからである。

今のハリルジャパンの堅守速攻型のサッカーなら、日本人監督の誰でも出来てしまうだろう。まして自ら選手を選び出せるのなら、そんなに難しいタスクではない。ただ、それを証明する場所が与えられていないのは、サッカー関係者なら一度は思った事があるだろう。日本人選手の活躍と反比例するかのように、日本人監督が世界に羽ばたいていけていない現状を打破するためにも、日本代表監督は日本人が良いと思う。今は監督がどんなサッカーをするかの価値がより高まってきているからである。

現在、ジョゼップ・グアルディオラ監督の年俸が1500万ポンド(約26億円)で世界最高額。精密で華麗なパスサッカーで見るものを楽しませてくれている。しかしながら、世界最高のタイトルは過去4年間獲ってはいない。それでもこの価値なのである。

ワールドカップを制したサッカーが世界の主流になるのは、なでしこも証明してみせた。男子サッカーはまだそのチャンスが残されている。日本のスタイルを確立し、世界を制する監督を生みだす事こそが、日本サッカーに与えられた新たな課題だと考える。今はまだ夢物語を語るようなものに見えていたとしても。

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