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中国庭園リターンズ

 瀋秀園は神奈川県川崎市、大師公園の中にある中国庭園。中国の瀋陽市から友好都市提携5周年を記念して寄贈されたものである。滝、石、築山、橋、植栽など、どれをとっても中国感あるすばらしい庭園なのだが、5周年でこんなにいいものをプレゼントして後々だいじょうぶか、という不安も同時に感じる。恋人にあげる〇周年のプレゼントなど、こうした記念品は、前回よりも良いものを、が基本である。いいものをあげたい気持ちは山々だが、あまりにもハードルがあがりすぎないよう、次を見越していい塩梅に落とし込む。それだけ続くことが困難と思われていたのか?と、不安になって調べてみると、なんと2021年で40年目に突入していた。円満でよかった。(ちなみに40周年記念は両市の高校生によるオンライン交流。ここまでくると、もはや「もの」じゃなくなってくる。)

 ところで、日本庭園と中国庭園は別物と捉えている人がいるかもしれないが、本来、日本庭園のルーツは中国庭園にある。歴史を遡ると、6世紀の中頃、中国の庭園文化が日本に伝わり、それ以降、繰り返し中国文化の影響を受けながら、日本庭園は発展してきたのだ。現在、もともと伝わった原型に長い歴史を経て、日本独自の文化、技術が組み込まれ、唯一無二の「日本庭園」という素晴らしいジャンルが確立したが、ここ瀋秀園のように純に近い中国庭園もまた良い。
 瀋秀園が日本に来たのが昭和62年。庭園史から見ると中国庭園リターンズという感覚である。こうした中国庭園は現在日本にそんなに多くはないので、希少価値の高い庭園としてぜひおすすめしたい。さようなら。

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