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【1話】アーク+チャイルド〜EP1 どこにでもいるちびっ娘魔技講師、闇堕ちの未来しかない少女を弟子にする〜

あらすじ

地球外生命体クリフォトが解き放った生物に寄生することで進化する生命体ワームウッドによって世界は危機に瀕していた。
それに対して人類はアークスと呼ばれる棺型の金属で構成された謎の存在の力を借りることで、アークスに選ばれた少女を魔技という異能を行使できる棺子と呼ばれる存在で対抗する。
棺子の人であるハスカ・ドラゴエルはクリフォト討伐後、心に傷を負って引きこもるようになってしまうが専属オペレーターのミタマに拉致され謎の島に輸送機から落とされしまう。
その島でハスカは黒いローブを纏った親友に似た少女エリシャと出会う。
「あなたにはこの闇落ち寸前の彼女の先生をやってもらいます。殺すも救うも自由です」

1話

星歴XXXX年

ある日、この星で2つ目の大きな出来事が起きた。

1つ目は世界各地で棺型の金属の物体アークスが上空から現れ人類に
3年後、クリフォトと呼ばれる地球外生命体によって侵略されることを告げた。

人類のトップ層とアークスはとある条約を結んだことにより、

アークスの持つ技術の提供、

アークスに選ばれた少女を魔技という異能を行使できる棺子と呼ばれる存在に進化させるという恩恵を得る。

2つ目は予言通りにこの星は大きな湖に落ちた隕石から異形の大樹クリフォトが現れた。

クリフォトが自らが解き放った生物に寄生することで進化する生命体ワームウッドによって湖どころか世界を侵略しようとしている。

その日から人類の希望である棺子と異形の侵略者との争いが始まった。

だが、この長きに渡る戦いも一つの終わりを迎えようとしていた。

ハスカ・ドラゴエル「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

軍服を纏った背丈の低い少女ハスカは短い肉塊で構成された建造物の通路を走り続ける。

白紫の肩まで伸びた髪をなびかせながら右へ左へと通路を進むと大きな肉塊の扉を見つける。

ハスカは扉の前で深呼吸をして、ゆっくりと扉を開ける。

ハスカ・ドラゴエル「何よ、これ……」

目の前の光景をハスカは理解することができなかった。

そこは肉塊で構成された城の王の間のような広々とした空間で、

その奥にはこの世界を壊した魔王に等しい異形の大樹クリフォトがいる。

その姿、肉塊で構成された大樹で枝に該当する部分が無数の人間の腕ようになっていて、

幹らしき部位に顔が複数埋め込まれている。

間の中央にはハスカと同じ軍服を纏った少女たちの無惨な遺体が転がっていた。

少女たちには何故か人間が刃物で切りつけたような切り傷がある。

そして、ハスカ以外に地に足がついている鮮血に濡れた軍服の少女がいる。

その少女は丁寧に結ばれた茶髪のポニーテールでその瞳は濁った赤い血の色ようだった。

少女の手には機械の剣が握らされていて、剣先に肉の塊がこびり付いている。

???「…………はっすん……。ひひ、あはは、やっぱり……間に合っちゃたんだぁ……」

ハスカ・ドラゴエル「アリ……シャ……?」

ハスカがアリシャと呼んだ少女はぎこちない笑顔を向ける。

ハスカ・ドラゴエル「ま、間に合っちゃったって何の話よ……? 私、トラップで入り口に転移させられて、合流が遅れてーー」

アリシャ・プラーナ「あはは、いつも言ってるよね。そんな簡単に人を信じちゃうと後悔しちゃうよって……」

アリシャはハスカに向けて剣先を向けて、ふらふらと近づく。

ふらふらと歩くアリシャの背中から植物の根を形どったような触手が突き出す。

その触手はゆらゆらと舞う。

ハスカ・ドラゴエル「や、やめて……。なんで、なんで、なんで、なんで!! 誰よりも……私なんかよりも強いあなたがどうして……!!」

ハスカはその光景を見て、足を震わせながら後ろに下がる。

アリシャ・プラーナ「……強いだけじゃ何も現実を変えられないんだよ……? 奇跡すら起こせないんだよ……!? だからねーー」

アリシャ・プラーナ「私はこの歪な神秘に縋るしかないんだよ……。これから起こす奇跡が呪いによって起こるものだったとしても……」

そして、アリシャがゆらゆらと震えて動けないハスカの目の前に現れると視界のノイズが走る。

アリシャが首が杖状の鎌で切り落とされる静止画、クリフォトが真っ二つに切断される静止画、黒い棺型のアークスがアリシャの遺体を遺体を吸い込む静止画が点々と切り替わって視界は閉ざされた。

ハスカ・ドラゴエル「(……まただ……)」

パジャマを着たハスカが目を覚ましてため息をつく。

目を開けるとそこは小さな輸送機の機内でハスカは席に座っているようだった。

しかし、腹部に違和感を感じて下を見ると鎖で縛られている。

機内音「ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!」

ハスカ・ドラゴエル「(…………まだ夢を見てるのかしら)」

機内音「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!」

ハスカ・ドラゴエル「なんなのよここ!? すごいうっさいわね!」

???「くひひ、やっと起きましたねハス先輩。相変わらずどこでも寝れるみたいですね♪」

ハスカの隣の席にいる軍服を纏った金髪サイドテールの少女はにこりと微笑む。

ハスカ・ドラゴエル「……あ、あなた……!?」

???「どーも、いつでもどこでもあなたの専属オペレーターのミタマですっ」

ミタマは小さく舌を出しながら敬礼する。

ハスカ・ドラゴエル「……とうとう、人に盗聴器つけたり盗撮するストーカーが拉致まで始めったってことね……」

ミタマ「心外ですっ! お仕事ちゃんとしてるのに、プライベートの趣味を否定されるなんて……!」

ハスカ・ドラゴエル「……え! あ、その……ってそんな豚箱行き確定な趣味認められるかぁ! 司法はどうなってるのよ司法は!」

ミタマ「ミタマはハス先輩に豚さんとして飼われるなら大歓迎ですっ!」

ハスカはミタマをゴミを見るような目で見る。

ミタマ「ぞ、ゾクゾクします……!」

ハスカはため息を吐く。

ハスカ・ドラゴエル「……で、どういうつもりよ? 私は棺子から引退して家に引きこもってたはずなんだけど? ……これは地球外脅威対策機関様のご命令?」

ミタマ「ハス先輩、棺子はアークスとの契約が続いている限り引退なんてできませんよ?」

ミタマ「……後、これは国や組織から命令されたことではありません」

ハスカ・ドラゴエル「……だったら、誰からのーー」

ミタマ「機密オブザ機密です♪」

ハスカ・ドラゴエル「なんでよ!?」

ミタマ「まあ、とにかくこれからとある島に落ちてもらいます!」

ハスカ・ドラゴエル「さらになんでよ!?」

輸送機のドアが開き、風の音が機内に響き渡る。

ミタマは鎖で縛られたハスカを担ぐとドアの前に立つ。

ミタマ「ハス先輩ってやっぱり軽いですね♪」

ハスカ・ドラゴエル「誰がチビよ! 畜生、変態、犯罪者!」

ミタマ「チビとは言ってないですよー? えいっ♪」

ハスカ・ドラゴエル「ぴぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ハスカは涙目で見たこともない離島の真上に落とされる。

その離島は上区からでも目立つ大きな大樹が特徴的だった。

ハスカ・ドラゴエル「(何で何で何でよ!? きっとこれはリアリティMAXの悪夢かドッキリよ! そうに決まってる!)」

島に近づくにつれてハスカはあることに気づく。

ハスカ・ドラゴエル「(軍事用バリア!? こんな離島に!?)」

島覆い尽くすような青いバリアがハスカの視界に映る。

ハスカ・ドラゴエル「(……くそ、何考えてるのかさっぱりだけど計ったわね) 」

ハスカ・ドラゴエル「アークス!」

ハスカが叫ぶと透明色の棺のような形をした金属の物体が現れる。

アークス「ーーーーーー」

アークスが何かを発すると鎖が粉砕される。

ハスカがアークスに触れると右目が青く燃え上がり、瞳に幾何学模様が浮かび上がる。

そして、ハスカが指を鳴らす。

すると、ハスカの視点は上空から地上に切り替わる。

そこは大きな山の上に聳え立つ大樹のそばだった。

その大樹は祀られているのかしめ縄のようなものが張られている。

???「か、かみさま……?」

ハスカ・ドラゴエル「へ?」

???「……え……?」

その声の方を振り向くと黒いローブを纏ったハスカと同じような背丈の少女が目に涙を浮かべながら祈っている姿が映る。

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