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99.価格交渉

弊社の社員が取引先と価格交渉を行う上で相談に来ました。その時の出来事を書きます。

今世間では賃金UPで盛り上がっていますが、そもそも中小企業が賃金UPするには、受注単価の上昇が必要となります。

しかし、それを取引先に申し出るのには勇気が必要なことも分かります。相談に来た社員にメールで次のように返答しました。一部誤解を与えかねない表現や不足している文言があるので手を加えますが、出来るかぎり送ったそのままを投稿します。

以下メール本文


価格交渉する上で重要な点について、情報を共有しておきます。


関係性について

まず、取引先との信頼関係を構築している必要があります。信頼関係というのは、お互いに思ったことを言い合える状況と定義できます。もちろん、基本的な礼儀はありますが。

〇〇君の場合は、業務を通して既にその関係が構築出来ているように思えます。その理由としては

「誰もしない仕事を受けている」

このことに他なりません。

他のパートナーは利益率を考えて行動していると思いますので、そう考えると「うまみがない」から手を引いたとも言えます。

しかし、それを受けている時点で、〇〇君にはアドバンテージがあります。つまり、取引先にとっては重要な役割を果たしている事となります。

交渉をする上で重要なことは

「相手を信頼する」

このことに他なりません。つまり、信頼しているからこそ交渉も出来る、とも言えます。もちろん期待した通りにならない可能性もありますが、信頼関係が構築されているうえで話をした場合、経験上かなりの確率で交渉が成立しています。

逆に言えば、成功しないのであれば信頼関係の構築が不十分である、とも言えます。この時に、ネガティブな考えを持ち込まないことが大切です。今回であれば

「工数単価を上げてもらった後に仕事がもらえなくなる」

このような懸念を持っているようですが、そのこと自体が相手を信頼していないこととなり、そうした思いは相手に伝わってしまいます。

繰り返しになりますが、信頼し思ったことを率直に伝える、これが最も重要です。


単価が低い理由

〇〇君は残業なしで作業をしているわけではないですよね。つまり、人より多くの時間労働していると言えます。

これは技術的な問題ではなく、十分に技術のある〇〇君がそうしなければいけないことに問題があります。

そうした状況で、今期であればおよそ〇〇〇〇万程の売り上げとなっていますが、本来会社というのは社員への報酬の倍の売り上げがあって初めて利益へとつながります。

もちろん会社の規模などにより利益になる割合は変わるのですが、企業というのは、常に人や設備に投資し続けなければ維持できません。特に人に対しての投資が最も大切で、それが出来ない企業に未来はないと感じます。

単価が低いと考える根拠ですが、今回の場合で考えると次の事が言えます。

  • 能力のある〇〇君が、多くの労働時間を使う必要がある

  • 売り上げは約〇〇〇〇万

  • 自身の報酬を倍にすると〇〇〇〇万を超える

  • 会社は赤字となる

  • 現状の単価ではかなり無理な働き方をしないと、黒字化出来ない


報酬が高すぎるというツッコミがあるかもしれませんが、けしてそうとは思いません。日本と国外を比べた場合、報酬の桁が一桁異なります。つまり、日本のエンジニアの報酬がそもそも低すぎるのです。

以前まで近所に住んでいたアメリカ国籍の方が本国に帰ったので、その後仕事の話を聞いたことがあったのですが国外の案件はどれも、最低でも数百万単位の案件で、弊社が行っている特殊な業務だと、数千万単位となります。

そう考えると、今の〇〇君の報酬が高いというのは、とてもじゃないけどそうではないと言い切れます。

もちろん、他の取引先のパートナーはさらに安い単価で作業をされているかもしれませんが、その人たちの報酬と〇〇君の報酬を比べた時に、どうでしょうか。

取引先パートナーの方が報酬が高い、ということは無いのではと感じます。

つまり、安い賃金で働いているとも言えます。本来はそうした方々も、もっと報酬があってしかるべきです。

このような背景から、現在国内では賃金UPが言われていますが、結局下請けの場合は単価を上げてもらわなければ賃金UPは出来ません。

本来であればさらに満足のいく報酬を提供したいとは思いますが、会社が赤字になるためにそれが出来ないのが現状です。

その理由として、私が代表になってからは弊社の利益還元率は95%程です。一般的に派遣業の場合、売り上げ還元率が60%とも言われています。派遣先企業から得られた60%が労働者の賃金として支払われるということですね。このように考えると、派遣社員の給与が上がりにくい構造が理解できると思います。

これを考えると、利益を95%還元している企業は殆ど無いはずです。もちろん設備投資が必要な時は90%程まで下げることもありました。

前期はかなりの売り上げがあったと思いますが、その分辛い思いをしたはずです。しかし、本来はそうであってはいけないと思うのです。

普通に仕事をして、それが会社の利益につながる形にならなければ、会社としては正常な経営とは言えません。

これらの事が、工数単価を上げる必要があると感じる理由です。

実際にどの程度単価をあげるのかは交渉次第ではありますが、私が〇〇君の立場であれば〇〇〇〇〇円からスタートして、交渉次第で徐々に下げる感じですね。

今期は売り上げが想定を大幅に下回っていたので、先日私はこの状況を取引先の部門代表の方にありのまま話をしました。

そして、業務についての単価アップに了承頂き、加えて多くのJOBを今期付けで発注いただきました。恐らく、信頼して伝えることをしなかったら、現状はなかったと感じます。

ちなみに私がその単価で見積もりを作った時、先方は「それで大丈夫ですか?」と言われました。

つまり、さらに上も狙えたのですが、流石にそこは節度を持った額として、受け入れて頂いたことに深く感謝をしました。


まとめ

交渉する上で重要なこととして、アドリブ要素があります。今まで〇〇君と何度も話をしてきましたが、よく

「うまく思ったことを伝えられない」

と、〇〇君は言ってましたね。それには一つ感じる所があります。

受け答えする時に、理論重視で思考すると、回答に時間がかかるばかりか思ったことを伝えられない状況に陥る場合があります。

では、なぜ理論重視となるのかですが、これは

「間違ったことを伝えてはいけない」

この思いからではないでしょうか。

「間違ったことを伝えると、そこに突っ込まれるかもしれない」

このような思考が働く場合もあります。もしこのように考えるのであれば、それは相手を信頼していないためです。

人との会話というのは率直に感じた事を伝えることが、より解像度の高い伝わり方になります。どれだけ理論立てて伝えたところで、伝わらないのです。

それは、人には感情があるためです。

このことを理解していると、もう少し素直に感じた事を伝えられるのではないでしょうか。また、そうした会話の中で交渉すると、より期待した結果につながりやすくなります。

会話における重要な点は

「相手の心情に訴えかける」

これが最も大切です。そのためには

「相手を信頼する事」

これが、必要となります。

信頼関係を構築している関係では以下の事が言えます。

「信頼して失うものより、信頼せずに失うものの方が大きい」

このことを知っておいてください。

以上です。


メール本文終わり。

実はこの後の続きもあるのですが、それはまたの機会に書きたいと思います。これを書きながら、私自身もホントに信頼した行動が出来ているのだろうかと自問自答しながら書いていました。

言葉や文字で「信頼」を表現するのは簡単ですが、それを実際に行うとなると難しいですよね。なぜ難しいのか、これも私の中では一つの答えを持っているのですが、こちらも長くなるので、またの機会に。

現在価格交渉をされている方も多くおられると思います。「信頼」をベースに交渉してみてください。良い結果になることを祈っております。

#価格交渉 #相談 #エンジニアの単価が低い #信頼する事

お気持ち感謝に尽きません🙇‍♂️