見出し画像

粋に生きる(原案)

叩かれる場所だから控えろ。
お前自身が後々どうなるかわからないし、俺も責任は持てない。

自分の無力さに、なんとも言えない脱力感があった。
音楽が全てだという俺は、こんな世界で音楽を奏でる事に意味はあるのかとも、そう本気で思った。

だがその思いは彼の勇気ある行動で一瞬にして打ち砕かれた。
彼は勇気を出して、この世の中に蔓延している「狂気」に立ち向かうかのように、ギリギリのタイミングで自然と現れた。
俺は流れ出る涙をグッと堪え、ステージに上がれと笑顔で詠った。

ステージに上がった彼はまさに怪物。
この狂気の世界に刃を突き刺すような叫びと共に豪快なリズムを刻み、腹に響きわたる強靱な世界を一瞬で醸し出した。

祭り(政・祀り)を叩き、自分の為だけに生きるのが当たり前の世界に成り下がった狂気の世界で、どうやって勇気を出すか。
彼は狂気に対し、強靭の切先をそれに向け天高く突き刺した。

その姿を横に、俺はいつも以上に6弦を奏で、涙を押し殺した力が演奏する手に響き、気がつけば真っ赤な鮮血が指を覆う。
唱い手は自らでステージの前に繰り出し、涙の感動を全面に押し出す。
その勢いは会場全体を包み込み、子供から老人まで、笑顔で満たされていた。

俺は、今までにない感動に包まれ、こんな狂気の世界でも、音楽には大きなチカラがある事を改めて、心の奥底から知った。

狂気に抵抗出来るのは、強靭のみ。
俺は誓いをたてた。
叩き、差別し、俺のいうことが正しいんだという様なことが当たり前になった「中途半端な正義」に立ち向かうべき姿は、強靭が必要不可欠。
俺は彼と同じように、狂気の世界に対して強靭に突き進む。
それこそが「人間」としての本来の生き方であり、歴史がそれを物語っている事を、心の底から学び、感じ得た物凄い瞬間だった。

※第三作目になる小説の原案を書いたまでです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?