群れの者と夢

2023.2.12

オガワは20歳前後の人間が集まる群れに数年属していた事がある。
そこにカドタと行ってきた。
オガワの時とおなじ群れの長が教えている人間たちが元気に作った作品を上映していて、ああ、オガワもやったなこれ。と思った。

オガワは昔アニメーションを作っていた。
今は…今もまあ作っているが、生業の傍らで作るのは時間がかかるものだと痛感する日々である。

あとお気に入りのマグカップを金継ぎしたりしてるからアニメーションを作る時間は減りがち。

その日のカドタはめんどくさかった。
若い者に声をかけてはアドバイスの真綿にくるんだ自慢を沢山しており、相手の理解度を測る気もないので、通じないネットスラングを多用して捲し立てていた。
オガワはそれを横で時々翻訳したりしていた。
おおむね楽しかった。
許せなかったことはひとつ。
あるアニメの設定が間違っているという話をしたら、「しかたない」と言ったことだ。
オガワはこの辺にアニメを志すのを諦めた所以がある。
ことアニメに関してだけは妥協できないタチなのだ…
商業アニメは常に団体競技である。ここで、何にも妥協できない場合すぐに詰む。
その「潔癖」な性格ゆえにオガワはアニメを生業にすることは諦めた。
久々に会った群れの長にはオガワが商業アニメを作っていないとは、と驚かれた。
たしかに同じ群れの者はほとんど商業アニメの世界にいる。

これを読んでいる人間がいたらお気付きだろうが、オガワは周りに夢を叶えられなかった人、と映っているのに怯えている。
なのでここで一度オガワ自身を肯定しておきたいと思う。
ちゃんと生業をこなしてメシを食っていて、空いた時間に自分のこだわりでアニメを作っている人間 がオガワである。
それ以上でも以下でもない。
コンクールとかに出したら評価もつくだろう。現状のステータス変更は不可だよ。

うーん、やはりこう見るとなかなか充実したステータスじゃないか?アニメ作りは誰でもできるが、作ることは自分で選んだのだ。はっぴーだな…

もうすぐ別の生業がひと段落してアニメを描きやすい環境にもどる。また気合を入れような〜

そういえばカドタはその日お昼を奢ってくれた。
「ご飯を奢れてうれしい」とあちらもあちらでオガワを使ってステータスビンゴを1つ埋められたようだった。
周りにこのステータス埋めたい人間があと1人いて、その人間も同じことを言っていた。
笑顔で「ごちそうさまです」と言っておいた。
ちなみにオガワはメシを奢られる可能性がある状態でメシを食うとストレスで半分以下の量しかくえなくなる。ので、基本は迷惑である。