『アリスとテレスのまぼろし工場』

2023.09.26 上記観測。
総評は、ダメ。
まあ多分珍しいタイプのタイムスリップものではある。
なぜ珍しいか。皆つまんなくなる事に途中で気づいて完成しないのである。
その点完成させたから岡田麿里はえらい。
プロデューサーよ、監督から首輪を外すのが早すぎないか?テレビシリーズとか秩父3部作とかやってるからいいかなーって??
そう言われたらそうかもしれない。でもちゃんと監督したのこれが2本目じゃない??そんなもんだっけ…?確かに2本目でコケるって、コケ方は細田守と一緒な感じするけどさあ…

そういえばオガワは岡田麿里がガンダムオルフェンズで屈指の可愛いヒロインをマジでどうでも良いタイミングで殺した時から岡田麿里のファンである。
『さよならの朝に約束の花を飾ろう』では帰り道もずっと泣いてたくらいに刺さりまくったりしている(それも「あの国で『竜と悪い魔女の伝説』が伝わる時、女しか出てこないだろうな…しかも伝えたの女性だろうな…嬉しすぎるな。王子様は出てこない国だぞ。嬉しすぎる…」という謎の刺さり方をしていて、本筋の物語にはあまり興味がない)
秩父3部作は見てないが、まあオルフェンズ以降のファンということで時間軸的には矛盾は無いだろうと思っている。
大枠はにわかファンということで。

ここからはネタバレも含む


時間が止まった街で暮らす子供たちの話なのだが、時間を進ませようとすると自分たちの存在が無くなるという設定だった。
つまりは時間的に点のままドロップアウトしたような感じ。
タイムがスリップして時の流れの外に出てしまったわけだ。かわいそう(ちなみにこの設定は『僕の愛したいくつもの君に』?だっけ?あれも評判良くなかったけど、あれのクライマックスで使われた設定の「選択されなかった時間」の方に近い)。

作中ではまぼろしとされている。
で、そこに現実から来た女の子がいて、その子をどうにか現実に返したいのが主人公たちと、自分たちのまぼろし世界が崩壊するのが早まると言って帰したがらない他の住民たち…
という対立構造が描かれている。のが、物語後半。
そういう話ってわかるのがめちゃくちゃ遅い。ダメポイント1。

そもそも現実があって、まぼろし世界が主人公がいる世界で、実は現実側には時間が適切に進んだ主人公たちが生きている。
つまり、まぼろし側の主人公たちはそれ以上成長もできないから消えるしかないのだ。
現実とまぼろしを繋いでいるのは現実側から来た少女だけで、これを現実に帰せば時の流れとの接点を失った点は「なかったことになる」のである。
まずここの説明がちゃんとできてない。ダメポイント2。
ちゃんと説明したところで、まぼろしの方はどの道無かった事になるのでどうでもいいんだけどね…。これがダメポイント3。

タイムスリップ系で「選択されなかった過去」はデジャブ程度の価値しか持たないからあんまり執着しない方がいいぞ〜各位。
これをうまく使った作品はテネットくらいだからね。テネットだってギリギリだった。
あれ分かんない人が殆どだろ。あれは分からなくて良い設定と分かってないとダメな設定が同じ分量出てくるからね。難しいよね。
あとは蟲師のデジャブの回。あれは皆タイムスリップ系として認識してるかも怪しい。オガワも蟲のせいにしてるし。

まぼろし工場の方では「少女を現実に返す」以外に男女の色恋が別軸で走っていて、まあそこの感情描写が「さすが岡田麿里!」という感じで好きだったのだが、同時に「でもこいつらに未来とか無いしな…」となる勿体無さというか虚しさというか…こいつらはまぼろしなのでオガワがいくら応援していても結婚しない。無意味。
世界が壊れても良いから結婚式あげてセックスしてくれ。と、いつも思う。選ばれなかった過去の主人公たちよ。
バカくそロング尺のキスシーンがあったけど、そこでも大して世界終わらんかった。
あれで世界終わらんならもう結婚するしかない。
それでな〜現実の主人公はなんとなくデジャブな感じがするんだ。
とか、その程度の救いしか無いんだよね。この「選ばれなかった過去」ってもんは。

あと主人公が思ったことを喋りすぎ。
学生のくせにラジオに返事とかするな。
というか岡田麿里なら全然演技ベースで作品作れる腕前があるだろう。これがダメポイント4。
ナレーションベースみたいなセリフ回しが許されてるのは新海誠だけだし、正味オガワは許してないから『すずめの戸締り』を見ていない。

ま、というわけで「『TENET』以外のタイムスリップものがまた大失敗した感じの映画」
というのがオガワの評価である。
アリスもテレスも出てこん。

あとマッパが製作委員会に入っていた気がする。じゅじゅとチェンソで稼いだ金を駄作に突っ込んでくれてありがとうと思う。
…言い方が極悪になってしまった。
しかし、映画というのは大ヒット作など毎年10本あるか無いかというところで、それがアニメ映画になるとほとんどがテレビシリーズの劇場版という有様なのだ。
アニメ市場には現在全くと言っても過言ではないほどの「余裕の無さ」が立ち込めている。
そんな中唯一、完全新作・オリジナル脚本という賭けに金銭を投じる気骨のあるアニメ会社があるということに感謝している。
松竹とか東宝なんて何十本もの駄作に金出してるもんね。
あれのおかげでどんな映画も作れるのだ。マジで感謝してる。

追記
好きなシーンがある。
終盤でいつみがクラスの女子に連れ去られてカーチェイスが始まるところだ。
男子チームの車に彼氏が乗ってるせいでなんとなく締まらない女子チームの運転手が可愛い。