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「除霊」と、被害者意識

西陣の拝み屋には、ふたつの顔がある。
脳科学を扱う美惠子の顔、そして、もうひとつが靈を扱う「えみこ」という霊媒の顔。
元は故人と守護霊の通訳・通詞人だった。
神奈川出身のわたしが知る限り、2016年まで関東でプロを名乗り同業の仕事をしている人はわたし含め二人しかいなかった。
2012年、通訳を名乗る覚悟をした際、その方に会いに行った。
先輩として、本当に多くを教えてくださった。
2016年、占い師をしていたとき業界の先輩から霊媒師になるよう薦められた。
先輩曰く「霊媒師の自覚のある無しじゃなく、貴方がきちんと名乗らないとお客様が探すのに困るから」。
そんなもんか、と名乗り出したころ、霊媒師に会ってみたいJKと出会い「会いに行ける霊媒師」の名前を貰った。
この旗があれば、さぞや皆様のお役に立てるやろうと考えていた。

しかし、現実は甘くない。
「ちょっと祓って欲しいんです」
そう言ってくる人が集まり出した。
ちょっと祓って欲しい、それはなんだろうか。
守護霊や故人の通訳は「高級霊専門通訳」とされる。
例えるなら叶姉妹さんに「ちょっとうちの雨どい掃除して欲しいんです」と言うようなもの。
そんなん、しはります?
ていうか、あたしなら、よう言わない。
どの口が言うんや、と思う依頼に「お祓いしない霊媒師」を名乗り出した。
しかし、それでも来る。
「だって、先生には力があるから」とか、訳の分からない理由をつけてくる。
やらないと言ったらやらない、もっと力のある先生のところに行きなよ!
何十回これを繰り返しただろう。
「霊媒師のくせに祓えないの?詐欺師!看板下げなさいよ!」
そう吐き捨てられたことも一度や二度ではない。
わたしも人間だから、ほんまに二度と来ないでね、と思うのは、致し方ないんじゃなかろうか。

そもそも、霊には「周波数の法則」というものがある。
目が合うから、呼び合う。
呼び合う力が強ければ、憑かれる。
憑かれて、相性(居心地)が良ければ侵食される。
それを「除霊してください、もうささっと祓って」と依頼してくる。
違うよね、そうじゃない。
高級霊の世界は、そんな雑にできていない。
なぜ縁ができて、なぜそうなったかをみてから、どうするか決める。
高級霊専門通訳はネゴシエーターでもあるから、交渉して退いてもらう。
低級霊は、この「交渉」ができない。
そもそも、コミュニケーションがとれない。
その対応は、切った張ったの世界なんだろう。
それは、あたしの担当じゃない。
でも、祓え、という依頼人はみんな、わたしに戦を期待する。
仮にそうなら対価もそれなりになるんだろうが、バイト連れてきました、みたいな価格で祓って欲しいんです、と言ったりする。
見えない世界は等価交換、見積もりを誤れば身銭を切る。
申し訳ないけど、命を張れる人ほどの人は、誰しもプライベートにしかいないだろう。
殉職を期待されてるんだろうなあ、と思う方もいる。
さっき会ったばかりですよねー、無理じゃね?と、本気で思う。
そんな他人の命や人生を軽んじる人は、除霊したところで、またすぐ取り憑かれる。
次はもっとたちが悪いかもしれない、なら、今のままいなよ、とりあえず死ぬことはないみたいだし。
そんなことを、思ったりしてしまうのだ。

すいませんね、わたしも人なので。

取り憑かれた側が被害者意識を持つ感じは、例えばフラれた側が「あんなひどい人」というのに似ている。
でも、相手には相手の言い分も事情もある。
気持ちだってある、だからそれを聴かずに「あいつがストーカーです!逮捕してください!」みたいに除霊を頼むのは、なんか違う気がするし、そんなこじれた関係にたかたが通詞人ができることなんて、なんにもない。
お祓いしますよ、と言っている先生はたくさんいる。
なぜわざわざうち? なぜわざわざお祓いしないよ、という人間に依頼する?そう思った果てに「霊媒師廃業宣言」がある。
ま、宣言してからも依頼は来たから、きっと観てないのね、なにも笑
思い込みだけで動くと、火傷しますよー。
(力なく空に叫んでみる)

靈の世界もいろいろある。
わたしは死者専門だから、生霊のことは少ししかわからない。
ましてや低級霊は、例えるなら精神科の医者にいきなり外科手術を振るに等しい。
チーム・バチスタ、無理だから。
ええ、医龍とか無理なんで。
死にますよ、患者さん。
令和は、自己防衛時代。
被害者意識は、用法用量を守って正しくお使いください。

靈担当えみこside

脳科学担当美惠子side

日本に数えるほどしかいない故人の通訳。イタコでも口寄せでもなく三者面談風にお筆書きという自動書記を使い故人と遺された人をつなぎ明日を照らす活動をしています。サポートくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。