OGAL体験型マルシェ 庶民の器を手掛ける紫波の窯元「陶房 金沢」

 陶房 金沢は、東根山のふもとにある、紫波町指定有形文化財「武田家住宅」の南側に窯があります。
 作家金沢さんの陶芸のルーツは、益子焼。釉薬を使った益子らしいオーソドックスな器を作り続ける「大誠窯」で5年間修業したのち、地元岩手に帰郷しました。

画像1

 益子焼は「庶民の器」。日用雑器と呼ばれる類に入るこの焼物は、素朴で、泥臭い。益子は、江戸時代末期に柳宗悦らと共に民藝運動を推進した、陶芸家濱田庄司氏の影響により、庶民の暮らしに根付いた道具を作る産地として発展しました。
 その益子の中でも地道に益子らしさを貫く「大誠窯」で修行した金沢さんは、1996年に地元岩手で独立開窯しました。

画像2

 地元に戻って1,2年は、益子の釉薬を使い、益子時代とすっかり同じ器を作り続けていましたが、やがて、益子の地を離れた自分が益子焼を作り続けることに、違和感を覚えたそうです。そうして次の一手を模索する中で、自然とたどり着いた答えが、現在金沢さんの作品の8割がたを占める「粉引」の技法でした。
 古くは朝鮮半島にルーツを持ち、16世紀に茶の湯が流行した際に日本に伝来した「粉引」。皆さんもよく目にされる、全体として白い中にも土っぽさが表れている、温かみのある陶器です。学生時代にちょこちょこと作っていた経緯もあり、自分には「粉引」が向いているなと思ったと言います。

画像3

 なぜ「粉引」が自分に向いているか、どんな所に惹かれるのか。益子焼との折り合いは。そのような思いの部分を、すぐに饒舌に語ってはくださらない所も、金沢さんの魅力の一つです。

 現在は「炭化焼き締め」という黒っぽい焼き上がりの技法も採用し、使い分けをする金沢さん。土の表情にこだわり、荒々しさを出したい作品には、この技法を用いるそうです。

画像4

 新しい作品の構想を固める時には、形・焼き方が両方整った状態で思い浮かべるとのこと。「手作り料理・お菓子で器とコラボしたい」という夢を持つ奥様との晩酌も、新たなアイディア創出のために大切な時間と伺いました。

 皆様の食卓を、より趣深いものに変えてくれる、「陶房 金沢」の、「ふだん使いの器」と「花器」と「酒器」。作家の金沢さんとの会話も、ぜひ楽しみにいらしてください。

画像5