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Voicyは、AI時代に人間らしさを届けるメディアプラットフォームなんです

ChatGPT 4oがまたひとつ壁を超えてしまったという感覚があります。AIがどんどん成長していく中で、次の時代はどうなるのか、Voicyはこれからどうあるべきか、音声市場にとってはチャンスなのか、という話を社内外に伝えていかなければと思っています。

いまはまだAIの時代のほんの入口ですが、ほとんどの物事がAIでできてしまうことがわかってきました。多くの人が「自分がつくってきたものは全部AIに駆逐されるんじゃないか」と不安に思っているでしょう。でも、逆にそこにはチャンスもあります。

音声技術スタートアップの危機

ここ最近、「音声技術スタートアップのサービスは軒並み終わる」と言われています。AIによる音声での返答のレベルが高くなり、音声変換や音声の生成サービスを主軸としているスタートアップは軒並み苦しいでしょう。

検索サイトがほとんどGoogleになったり、アプリのマーケットがAndroidとiOSに押さえられたように、この分野も一強の状態になっていく可能性があります。Open AIにかろうじてGAFAが食らいついていく程度で、小さい国のひとつの会社にできることはほぼないと思います。

AIでできることが増えすぎると、多くのサービスがなくなっていきます。かつてスマホの登場とともに、音声再生プレイヤーがなくなって、地図がなくなって、計算機がなくなっていったように、同じことがまた繰り返されるでしょう。

技術が大きく進むときは「その技術がこれからどうなるのか」という話ばかりしがちで、「その技術をつかった人は、どういうふうに動くのか」「人の生活がどう変わっていくのか」ということはあまり話さないんですよね。

でも、僕としては本当は、その技術を受け取った人が取りうる行動のほうが重要であると思っています。

人間味を求める世界の到来

ChatGPTをはじめとしたAIの性能はこれからも指数関数的に伸びていくでしょう。そのときに人の生活がどう変わるのか、ということをぜひみなさんと話したいです。

僕はこれからの世界は”一次産業返り”する、というか、人間味を求める世界がやってくると思います。同時に、残念ながら、デジタルコンテンツどこにでも高いクオリティのものが溢れコモディティになるでしょう。

ChatGPTやAIという技術自体は、基本的には発信者革命の源となります。人間がつくれるもの以上のクオリティと量を、AIがつくることができる。そういう技術になっているわけです。

今までの100倍以上のコンテンツ生産能力を、世界中の人が持ってしまったんですよね。

一応、僕らはAIのことを「人間のクリエイティブ活動のお手伝いをするためのツール」と呼んできましたが、どう考えても、人の代わりにものをつくったり、人ができないようなものをつくったりできるようになっています。

たとえば、いまみなさんが読んでいるこのnoteのエディタ画面にもAIが搭載されていて、僕らには到底できないようなスピードで、思いつかないような提案をしてくれます。

これから急激に、信じられないくらい上手いコンテンツが無限に溢れてきます。普通の人の発信なんて誰も目にとめないでしょう。

AIは人間らしい創作の作法までトレースできます。つっかえながら話したり、「えーと」のようなフィラーを入れたり、ちょっとした誤字脱字を紛れ込ませたり、ヘタウマみたいな領域まで学習しています。

これからは上手にAIを使って発信するか、それともAIに駆逐されるか、という2択になっていくと思います。

リアルの経験こそ唯一の差別化要因

でも、そんなAI社会において、僕らが唯一勝負できることがあります。それは「AIはリアルの社会には生きていない」ということです。

コンテンツをつくるにはいくつかの方法があります。

「知識をまとめて提供する」というパターンAと、「想像力や表現力をはたらかせ、加工してコンテンツにしていく」というパターンBと、「日記のように自分の身に起こった事実を書いていく」というパターンCがあります。

このなかでAIが得意とするのはAとBです。人間よりも高速で高品質で大量につくりだせます。

でも、パターンCの実体験だけはAIにはつくれません。これからはコンテンツの面白さの大部分が、「いかに豊かな実体験をもっているか」「いかにその人自身がユニークなのか」という人間の素材にかかってくるんですよね。

あちこち動き回っていて、自分の目で見て、耳で聞いて、自分の頭を動かして、独自の考えを持っているかどうかが大切になります。ある意味、リア充な人たち。

そういったオリジナリティのある体験を持っている人じゃないと発信で差別化ができなくなってきます。デジタル世界の経験だけでものをつくっていた人にはなかなか難しくなります。

「リアルの世界でどんな経験をしたか」というAIがタッチできないところから材料を持ってくるしかないんですよね。でもそれって特別なことではありません。

要はたのしく生きて、自分なりに考えて、そのたのしさを伝えればいいんだと思います。

IT技術が発展して、いろんなサービスが出てくることによって誰にも会わなくてもいろいろなことができる「引きこもりのチャンス」が増えたのに、そのチャンスがまたAIによって消えていく。

人はふたたび、人間味のある世界観に吸い寄せられ、リアルの経験がある人がどんどん魅力的に見えていくでしょう。ちょっと前の世の中みたいですかね。

あなたは人生をたのしく生きているか、自分なりの価値観や感性を持って動いているか。そうじゃない人がつくってきたコンテンツは、これからはAIが担当していくでしょう。

コンテンツプラットフォームからメディアプラットフォームへ

Voicyはコンテンツプラットフォームではなくて、メディアプラットフォームだと思っています。

「一人ひとりが”自分を表現するメディア”になれるプラットフォーム」を志向してつくってきました。

コンテンツプラットフォームとメディアプラットフォームのちがいについて。コンテンツプラットフォームは、「発信者自体が好き」というよりも、コンテンツ単位でおもしろいものが並んでいて、それらを好きな順番でたのしむ場所です。

一方、メディアプラットフォームは、そのメディアが発信する世界観自体を好きになっていく。そんな場所だと思っています。

発信者が自分の世界観を発信し続け、受信者が発信者ベースで好みのものを見つけるのがメディアプラットフォームで、おもしろいコンテンツがとにかくたくさんまとまっているものがコンテンツプラットフォーム、という感じでしょうか。

Voicyは基本的に、コンテンツ単位で「何をしゃべっているか」よりも、発信者単位で「誰がしゃべっているのか」ということのほうが求められている。

コンテンツプラットフォームは再生数が重要ですが、メディアプラットフォームはサブスクライバーの数がポイントなんですよね。AI時代においては、そこが大きな違いになっていくでしょう。

これからはちゃんとサブスクライバーを抱えているかがものすごく大事になっていく。いっときのバズや再生数はどんどん駆逐されますから。

コンテンツはコピー可能だけれど、人の魅力や世界観はコピーできません。メディアプラットフォームであることが強みになってくるんです。

Voicyはこれまでかたくなに、パーソナリティの審査制をとってきました。たくさんのコンテンツがほしければ、誰でも発信できるUGC型を採用すればいいものを、人を軸にしたメディアプラットフォームをつくるために審査制をえらび、魅力的なコミュニティをつくったりしてきました。

その土台がやっと意味を持ってきた、という感覚があります。

AI時代の受信者の生活

これまでは発信者側の話をしてきました。では受信者側はどうでしょうか。

コンテンツが無限に溢れてきて、人間がつくったのか、AIがつくったのかもよくわからない時代になってきています。むしろ「気がついたらほぼAIが出したコンテンツばかりだった」というのが当たり前の社会になっていくでしょう。

AIがつくったコンテンツだけで人生をたのしむ人たちも相当数出てくるでしょう。情報が全部カニカマのようになっていく社会がくるんです。

人生を生きるよりも、人生ゲームをやっていたほうが快適。

AIがつくった自分に都合の良い情報だけを見ていたほうが気持ちが良い。

そんなことをずっと繰り返していく。すべてデジタルでたのしんでいるだけで人生が幸せに感じられる、というマトリックスみたいな世界で生きていく人もいるでしょう。

これはとても幸福なことです。それしか選択できない人もいたり、「こっちのほうが頑張らなくてもいいし、楽だよね」と積極的に選ぶ人も増えていくでしょう。

でも、その一方で、「本当にこれでよかったんだっけ?」と振り返る受信者たちも残ると思います。

僕は「情報は食べ物と同じように摂取するもの」という考え方を持っています。「ポテトチップスはおいしい」という人もいれば、「それだと栄養バランスは良くないよね」という人もいます。同じように「AIが便利だから情報はこれでいいよね」「いやいや、情報の栄養バランスがよくないよね」という論議もまた繰り返されるでしょう。

「わざわざ勉強をしたり本を読んだりするくらいだったら、手軽に人生をたのしめるほうがいいよね」「お金を稼がなくてもAIがあればずっと楽しいんだ」というパラダイスのような状態になっていく。その人が不健康になればなるほど、不健康な人向けの味の濃いものが提供されていく。しかも、それが全部無料で。

すごく笑えるコンテンツも、恋愛にドキドキする経験も、自分がすごい人になったような気分になることも、AIがすべて叶えてくれるかもしれない。不幸な人がすごく減るし、まあ楽しいならこれでいいんじゃない、と考える人で溢れていく。

日本のように(かつて)中流階級あたりに人口が集中した社会では、「人と比べれば幸せだな」と思っている人たちが一定数いると思うんですが、これからはその下だと思っていた層の人たちがまったくいなくなる。

誰もが幸せなようで、同時に「自分たちがボトムなんだ」と突きつけられる社会がやってくるかもしれない。

コンテンツは山ほどあるけれど、リアルな社会でしっかりと働いて稼ぐ受信者がどんどん減っていくので、そういう人たちに向けて情報を届けたい企業にとっては熾烈な客の取り合いがはじまるでしょう。

企業としては「リアルでも頑張っている人を採用したい」という気持ちがあるでしょうから、採用活動もかなり大変になっていくと思います。

これからのVoicyの役割とは

デジタルコンテンツが無限に生産される一方で、リアルの体験は相対的に絞られてくるので、逆に必要性がすごく増してくるでしょう。

たとえば、人はずっと「食べる」ことは続けることになります。そして、そのたのしみ方はより多様化して発展していくはずです。

それから人間関係をキープする能力が求められなくなってきて、その能力をそもそも身に付けない人が増えていくことを考えると、リアルで人に触れられるイベントや、話を聞いてくれるサービスなんかも伸びていくでしょう。

飲食系のサービスとリアルで人と触れ合えるサービスは、これからすごく強くなっていくと思います。

そういう意味では、「人と人を繋ぐ」ということに対してVoicyはもっとできることがあると思っています。

Voicyは「人が人らしさを届ける」というプラットフォーム。僕らは「日々と社会がより豊かになる」ことを考えてVoicyをつくっています。「より豊かになる」というのは、「人間らしさをどれだけ分配できるのか」ということなんです。

これからのAI社会の中でVoicyは、飲食サービスや人と会うサービスに近いことをやる会社になっていくと思います。

デジタルのメディアプラットフォームではあるけれど、一次産業のような社会を支えるアナログなサービスでありたいと思います。

ここから先はアナログにこそ価値があるわけです。いろんな人がAIによって音声コンテンツを生成できるようになっているので、逆にアナログでつくったもののほうが面白くなっていくでしょう。

そのアナログの人間らしさをインターネットに載せたいと思っています。

これからの世界は、できるだけ最新技術を使えば良いというものでもないんです。人と人が集うイベント会場は、必ずしも最新の会場が必要なわけではなくて、良い人が集まりさえすればそれでいいんですよ。

AI時代に人はどう生きて、何に価値を感じるのか。これからの未来に期待もありつつ、不安も抱いているのがいま現在だと思うんですが、僕としてはワクワクのほうが勝っているし、「見てろよ、Voicyはここからやるぞ」と思っています。

すごく楽しみですけれど、混沌とするでしょうね。

人間味を磨いて、リアルの世界でいろんな経験をしてVoicyをやってみよう、なんて考える人が増えるんじゃないかと思っています。

人間はやっぱり「孤独」を拒否する生き物ですし、できれば自己肯定感を得たいし、人からリスペクトされると気持ちがいい。「自分の発信にAIが感想をくれたら幸せ」という人は当面増えないと思います。

Voicyで発信すると、AIとは全然違う名誉がついてまわる。そこに居場所ができて人が集まっていく。そういうサイクルがとても大事だと思っています。

ここからVoicyがどういうふうにポジションをつくっていくのかを楽しみにしてほしいです。

AIをうまく利用しつつ、そこに依存するのではなくて、自分の人生を豊かにするにはどうすればいいかをしっかりと考えていきたいですね。

「自分が豊かになるためには、結局、自分の足で歩かないとね」

そういうことを再認識する時代がくるのかなと思っています。Voicyがその道を示すようなプラットフォームになれたらいいですね。

最後に

たまに飛び出るAIの新機能がすごすぎて、まったく追いつけないか、追いついた結果「これはやばい」と思うかのどちらか、という感じです。でも、最近はもうレベルが高くなればなるほど、僕は「よし!」と思っていて。

最近、社員のみんなには「Voicyにとっておもしろい時代がきてるよ」という話をよくしています。一方で社会には、「Voicyを楽しみにしていてくださいね」という話をしたい。

そして、多くのユーザーさんたちとは「自分の人生をもっと豊かにするためにはどうする?」という話を、これからもしていきたいですね。



声の編集後記

記事の執筆後に、あらためて音声でも話しています。よかったらこちらもお聴きください。

https://r.voicy.jp/LMKxoxXMVyo

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