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チャンネル変えればヌードショー

さて、当方は雑誌オリーブの話を書いたりしたせいで、時々シャレオツ男子みたいに思われることがあり、大変心外である。それを真っ向から消すべく、本当にくだらない話を書く。

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...かつて訪れた、あのヌード劇場は、俺の中で確かに何かを変えた。

きっとヌード劇場で人生が変わったというと、みんなストリップ嬢との淡い恋とか、性的な芽生えとかだと思うのだが、俺の場合は全く違うのである。
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これはサカナクションのビデオではなく、ドリフ大爆笑のオープニングテーマである。

ドリフは俺がガキの頃はギリギリ人気があったのだが、同級生でエロと噂されていた村瀬くんが、この曲に合わせて、下記の様に替え歌を作っていた。

ド・ド・ドリフのヌードショー
チャンネル変えればヌードショー
じいちゃんばあちゃん大集合
揃ったところでヌードショー
揃ったところでヌードショー

まるでマーチン・スコセッシが撮った映像のような歌詞である。美しい。

いまだに脳内で完コピしているくらいだが、今読み返しても本当に素晴らしい。しかも大爆笑の"笑"と”SHOW”とで、ライミングを小学生の時からかけていた村瀬くんは天才だったんじゃないのか。


そんなことはどうでもいいのだが、とにかく、ヌードショーとは、昭和のガキの中では「なんかよくわからないが、ヌード=裸でエロいが、笑いのネタになるような変なトコだが、きっとチンポコに毛が生えたような大人が行く、魅惑の世界」だったのである。


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平成もけっこう過ぎたころに、学生時代のツレが俺が住んでいた所に遊びに来た。しょうもない話をしている中、お互い「ヌード劇場というのが昔あった。ガキの頃は大人になったら行こうと思ってた」という話になった。

「俺らももう大人やで!せっかくだから行ってみるんや!」

となり、行ってみることにした。

俺の大人への冒険は、これで2回目である。1回目は「ポルノ映画館に行ってみる」という奴で、これは学生時代に「あくまでもポルノ映画をフィルム・アートとして鑑賞する俺」という設定で1人でやったのだが、めちゃくちゃ劇場の雰囲気が怖くてすぐ出てきてしまった。当時からヘタレである。しかし今回はツレもいるから安心である。

で、なんかで聞いたストリップ小屋を見つけ、ここやここやと入場料を払うのだが、そこのモギリの婆さんのモーションがめちゃくちゃ遅い。

後ろでツレが、「はよせえババア!恥ずかしいやろ!」と婆さんに聞こえないように毒づく。なんて器の小さい奴だ。

でも早くしろババア。

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スロウなババア・ゲートを超えて中に入るわけだが、ストリップ劇場=なんか淫靡なとこ、を想像していたところ、実際はただ上半身裸の踊り子さんが明るく踊っているだけである。それに踊り子オタのおっさんが、ポカリを差し入れする、という光景が繰り返され、俺もツレもとっとと飽きてしまった。

どうも時間帯もあるらしいのだが、俺が見た限りは、エロというよりも半裸のパフォーマンスライブに近い。

「もう次の見たら帰ろうや」と話し合って、2人で帰る準備をしつつステージを見たら、大音量のエース・オブ・ベイスが流れはじめる。うわ、だせえ!

ステージ奥から出てきたのは、ロシアだか東欧だからしき、2人のデュオ(ただし上半身裸)である。

それに合わせて、そのデュオは、

10 手前に移動
20 左に移動
30 右に移動
40 中央に移動
50 後退する
60 GOTO 10

という、俺が「こんにちわマイコン」を読んだ直後のコーディングみたいな動きを延々と繰り返し、そして曲が終わると袖に帰って行った。

俺とツレは、それをフィナーレにして劇場を出たのだが、2人とも口が重い。そりゃそうである。ずっとずっと想像していた”大人のハーレム”みたいな空間は無く、ロボットみたいな東欧のネーちゃんの半裸と、ポカリを差し入れるおっさんを見ただけだからだ。

俺もツレも、なんか悔しかったので、帰りに寄ったファミレスで、「あれは素晴らしい体験だった」という方向にもっていくことにした。

「おそらく言葉がわからないダンサーと振付師との間での、あのエッジあふれる落としどころは見ものだった」
「今後エース・オブ・ベイスを大音量で聞けることなんてないだろう」


外は比較的強い雨。
店の大きな窓ガラスには水滴がついて、夜景を滲ませている。


なんでこんな徳永英明が歌いそうな光景で、こんなくだらないことを自分たちでアゲていかないといけないのか腹が立ってきたのだが、その中でツレの

「普通はダンスは自己表現とか面倒くさいこというやん。
 でもな、あのダンスはそれを否定して、”他人にやらされてる”とこな、
 あれはあれで新しくてええんちゃうん」

という言葉は、俺の中で響いた。

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その後ツレの言葉がどうも脳内で変換されたらしく、それからは

「やれって言われたから、それをやります」

...というアーティストは、その後すごくカッコいいと思うようになった。簡単に言うと、昔の氷川きよしとか、マツケンサンバのマツケンとかだが、俺が歴代ナンバーワンなのは、ピンクレディーXである。

彼女らの詳しくはサッパリわからないのだが、本家からも否定されているかわいそうなユニットである。俺はこの曲は素直にイイ曲だと思うし、時々聴いたりするのだが、21世紀にはこういうのはずいぶん減ってしまった。

みんなまともな表現者たるアーティストやアイドルになってしまい、俺の好みは、ほぼ絶滅状態である。

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あのヌード劇場は、俺の中で”ダサいと感じるものも、見方によってはカッコいい面がある”という評価を教えてくれた、俺の人生においての歴史的な転換だった。


今思うと、村瀬くん、”チャンネル変えればヌードショー”はある意味あってたわ。でも正確には、”チャンネル変えたのはヌードショー”だ。











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