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【毎日投稿】マジック:ザ・ギャザリングは”死にかけている”のか?【3分記事】

27年続いてきた元祖トレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」がここにきて死にかけている(説がある)。最近の事件としては《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》というカードがスタンダードフォーマット禁止カードとして制定、発売から17日後に禁止という、スタンダード使用期間最短日数記録を塗り替える結果となった(《記憶の壺/Memory Jar》の45日が最短だった)

昨今のマジックにおける禁止カードの変遷を簡単に説明すると、2011年、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》が禁止カードとなって以降、しばらくはスタンダードでの禁止カードは発行されなかった。しかし2017年、3枚の禁止カードを皮切りに、2018年のカラデシュ~イクサラン・ブロック期で合計9枚のカードが禁止に。その後、WotCはバランス調整に特化した部門「プレイ・デザイン・チーム」を設立したが、事態は悪化の一途を辿っている。

と、ここまでは禁止改正のせいでコンテンツが死にかけてると言いたいようにみえるが、書きたいのはそういうことではない。今のマジックが抱えている”病”はもっと別のことだと思う。というのも、昨今の禁止カード乱発に対するTLの怒り(少なくとも日本国内の)には何か別のモチベーションが潜んでいる気がした。あくまで個人的な意見だが下記だと思う。

目標が消失したプレイヤーたちのストレス

この数年でマジックに起きた変化は禁止カードだけではない。競技の仕組みが大きく変わっている。プロツアーからミシックチャンピオンシップ、プレイヤーズツアー、2019年からはそこにマジックプロリーグ制度が組み込まれている。

2019年頃まで、マジックにおける”プロ”の定義は良い意味で曖昧だった。プロプレイヤーズ・クラブのレベル制度によって、プラチナ~ブロンズまで世界中のプレイヤーに”プロ”という箔を与えていた。また、アマチュアプレイヤーにとってプロツアー出場は手に届きそうで届かない夢の舞台だった。

今思い返せば、2019年までのマジックはインセンティブ設計が神バランスだったのかもしれない。月曜日〜金曜日まで社畜だったとしても、週末の大会に勝てば夢への扉が開かれる。しかし、今となっては多くのプレイヤーが長年憧れを抱いていた"プロツアー"に相当するイベントはどれなのか分からないし、MPLのメンバを目指すのはあまりにも目標として遠すぎる。生配信からその枠を狙う訳の分からない奴らも登場した。その結果、多くの競技プレイヤーたち目標を失ったのではないだろうか。

また、競技への取り組み方もフルコミットに近いスタイルが求められるようになった。マジックアリーナの予選はラダーという多くの時間と労力を投資する形式になり、さらには配信でPVを稼ぐという新たな指標も登場した。

この短期間に、目標取り組み方、これら2つの大幅な変更に振り回されたプレイヤー達は完全に疲弊した。

ここで話を戻すと、日本国内は諸外国と比較すると禁止カードに対する反感が飛びぬけて高いとも言われており、それはトレーディングカードに求める資産性、テーブルトップの構築フォーマット、この2要素への期待が著しく高いのが理由だという説もある。しかし、このフラストレーションの爆発度合いには、純粋に禁止カード乱発に対する怒りだけではなく、「目標」を失ったプレイヤー達の行き場のないストレスがスゴイ勢いで流れ込んでいる気がしてならない。もちろん今でも「目標」を持ち続けているプレイヤーはたくさんいるだろうし、スムーズにカジュアルプレイへ移行した人もいるだろう。そういった方々は現状の禁止カードの連発にも「それでも環境が良くなるのであれば」「それでも友達と楽しく遊べるならば」とそこそこ寛容になっていると思う(相対的に)

結論として、いまのWotCがやるべきなのは、禁止カードを未然に防ぐ抜本的な対策ではなく。もう一度、プレイヤーたちに夢溢れる「目標」を与えることだと思う。たとえそれが虚構でも良い、「サラリーマンを続けながら週末の2日間さえ頑張れば、ゲームと賞金で遊んで暮らせる日が来るかもしれない」という壮大な夢をもう一度見させてくれるだけでいい。また、僕はカジュアル層のプレイヤーとも親交深いので分かるが、カジュアル層は、競技と断絶した別の空間に自分の身を置くのではなく、ある程度は競技層の遊び方や考え方を気にしており、競技層のプレイ&デッキを模倣して遊ぶという遊び方もする。それは憧憬なのか、自尊心なのか分からないが、競技層の盛り上がりはカジュアル含めた業界全体の盛り上がりに確実に影響を与える。競技層が不安になるとカジュアル層にもその空気が伝染する。

マジックはeスポーツの仲間になんか加わらなくてもいい、古くからのマインドスポーツとして、どのeスポーツなんかよりもデカい夢を見させて欲しい。それが出来ないのであれば、永遠に禁止カード、新規イラスト商法、などをチクチクと突かれ続け、元祖TCGとしてブランディングの貯金を使い果たし、いつか本当に死んでしまうかもしれない。


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