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【毎日投稿】「eスポーツの裾野を広げたい」はもう聞き飽きたという話【3分記事】

僕はメディアの仕事をしています。メディアには、情報発信を通して「広く周知させる」「PRする」などの役割があるので、この仕事を続けているとクライアントからは「○○の裾野を広げたい」「新規を増やしたい」という要望は毎日のように受けます。

特にゲームというコンテンツに関わっていると、プレイ人口はゲームの盛況っぷりを示す分かりやすい指標のひとつなので、当然のように優先されます。しかし、そろそろ「裾野を広げる」という言葉を乱用するのは止めた方が良い段階に入ってきたように感じています。理由は2つあって

1:そもそも人口が減っている(国内)
2:混ぜるな危険 ※あとで説明します

1の理由について、まず国内市場で勝負する場合、そもそもの日本人の人口が減っているので、プレイ人口をKPIにするのはもう限界です。それはWEBメディアにおける、PV数も似たような議論がされており、PV数をKPIにするのではなく、エンゲージメント率やコンバージョン数を重きに置くことも検討されています。

2の理由について、2020年4月にナインティナイン岡村さんのラジオでの発言が炎上した出来事がありました。もちろん岡村さんの発言に対する批判がほとんどでしたが、一方では「昔のラジオなら許されていたブラックジョークが許されない時代になった、悲しい」という意見もありました。今回の炎上はラジオでの発言がネットに晒されたことによって起こりました。本来、ラジオでの発言は、ラジオの外には出ないことが前提であったようなところがあるので、岡村さん自身も驚きだったでしょう。ラジオ民とネット民という、本来混ざるはずのない2つのコミュニティが混ざってしまったことによって起きた悲劇です。

ゲームに置き換えると例えば、明らかな激ムズゲームである『リーグ・オブ・レジェンド』に『どうぶつの森』を遊んでいるライト層を同類して呼び込むのは間違い(大量の誹謗中傷チャットに押しつぶされる)ですし、ゲーセン時代や闘劇時代の”煽り文化”を格闘ゲームの良さだと思っている人達と、スポンサーの顔色を気にするようになった興行的でクリーンなeスポーツを期待しているファンが同じ会場に同居できるわけがありません。

双方の幸せのためにも、コミュニティは統合するべきではないのです。実際、米国のプロレスには2つのリーグがあります。1つ目のリーグは興行化が上手くいっているライト向けのクリーンなプロレスリーグです。もう1つのリーグは収益化は微妙ながらも、コアなファンがついている昔ながらのダーティでアングラなプロレスリーグです。混ぜないからこそ双方の良さを維持できているのです。

また、最も大きな落とし穴として、裾野を広げる際に用いられる手法の多くに”参入障壁を下げる”があります。これがまた厄介であり、参入コストが下がる離脱コストも下がるのが基本原理です。つまり始めやすいということは止めやすい。経営学の観点だと、参入障壁が高い状態というのは、決して悪い状態ではなく、他との差別化が出来ている証とも捉えられます。業界内の質を維持するために、意図的に参入障壁を上げることも行います。

つまり、参入障壁が高いゲームはその分、他ゲームと差別化が出来ているといえます。参入障壁を下げるのは、大衆向けにすることでもあるので、一歩間違うと没個性化、他のゲームとの差が徐々に失われ、既存のファンを失いかねません。(それがいま起きているのがマジック:ザ・ギャザリングかも;;)

個人的には今のゲームやeスポーツは裾野を広げることを一旦やめて、本当に既存ファンたちを楽しませられているのか?に立ち返る段階なのかと思いました。なので僕は2021年、新規層にeスポーツをオススメするのではなく、既存のeスポーツやゲーム好きに対して、教育やビジネスなどを絡めたもっと射程の広いeスポーツコンテンツを発信して「eスポーツのことさえ追いかけていれば、いろんなことが分かって楽しい」状態を作りたいと思っています。

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