Boy with Luvはいつも私に幸せをくれる
私には音楽やアーティストを歌詞で評価する癖がある。10代の頃聴いていた音楽で例を挙げれば、hideはいいがYoshikiはダメで、イエローモンキーやブランキージェットシティはいいがLUNA SEAはダメ、とか、そんな感じ。勿論、歌詞がまずまずでも好きになることもあるのだが、それはかなり稀なケースで、流行っている歌などでも「あー、曲もいいし歌も上手なんだけどこのサビの歌詞がどうもなぁ」とかお茶の間で言ってるタイプの人間だ。
そんな私がこのバンタン沼に落ちたのも、やはり、歌詞がきっかけだった。歌よし、踊りよし、顔よし、性格よしでも、歌詞が微妙なら私は沼落ちしなかったと思う。だから、彼らの歌詞世界を支えるラップライン及びPdoggさんなのか誰なのかわからないけど制作の方々には「私をこの沼に蹴落としてくれてありがとう」といつも感謝している。
先日、どうしようもない妄想小説で溢れるこのnoteでAnpanmanの歌詞について駄文を書いた。それで、需要はないと思うが、私のバンタンへの愛が真面目なベクトルで溢れる時、好きな曲や歌詞についてあーだこーだ書くちょいウザめな一面をここで出すことをお許しください。もし最近バンタンを好きになったアミさんたちが彼らの歌詞世界を知るきっかけになるのならとても幸い。(でも私は普段は考察とか苦手な人なのでかなりフィーリングで書いてしまってます。そこはご了承ください)
記念すべき?第2回目はBoy with Luv。この曲は、私が初めてリアタイで聴いた曲で、本格的に沼落ちする頃には若干聴き飽きていたくらいなのだが、沼に落ちて彼らについて深く知るにつれ愛が物凄く増した曲だ。(ちなみに歌詞以外の点でも、ダンスがシンプルであるがゆえに私の推しJ-Hopeのダンスの上手さが一際目立つ曲で、そこも好きな理由の一つだったりする)
という訳で、この曲の魅力について、勝手な考察も織り交ぜつつダラダラと書いていきます。
①5年ですっかり大人の男に成長した7人
Boy with Luvの原曲のタイトルは작은 것들을 위한 시。訳せば「小さきものたちのための詩」である。なぜこのタイトルの英語版がBoy with Luvなんだよって話だが、これは彼らが2014年に発表したBoy in Luvに合わせたもので、そこにまずこの曲の意義深さがある。
2014年のBoy in Luvの原題は상남자、訳せば「男の中の男」。ただ、この曲の歌詞世界はまだ男女のことがあまりわからないテストステロン過剰分泌中の若い男子がキレイな女子に恋しちゃってもがきまくってる、という感じだ。
この曲の歌詞はヌナ目線で言えば「まだみんな青くてかわいいわね」って感じで、ラブソングというよりは青春ソングという趣きがある。ただ、当時のBTSは「ホルモン戦争」等の歌詞でミソジニーを指摘されており、それとの繋がりで考えると若干だが「何もわかってない男」感も滲み出る。
しかし、Boy in Luvから約5年後、彼らはBoy with Luvを発表する。この5年で彼らが立派に成長したことが歌詞からはっきり見て取れる。
歌い出しから最高である。5年前に「どうやったら俺の方を向いてくれるんだよ!こんなにお前のことばっか考えてるのに!」と叫んでいた男たちが「今日はどうだった?どんなことで幸せを感じるの?メールして教えて」と言っているのである。
後半のSUGAのパートもとてもロマンチックだ。
もしこんなラブレターをもらったらはっきり言ってイチコロである。
RMはこの曲についてラジオのインタビューでこう語っていた。(Youtube動画の7'30くらいから)
若い頃は恋に恋するじゃないけれど、自分の中に生まれる「相手への興味」という小さな感情よりも、その感情を生んだ「恋」という現象の方に集中してしまい、その「恋」をどう発展させるか、自分の感情をどうするかといったことばかりに関心が行くものだ。しかし、彼らは大人になり、今まさに自分が抱く「相手への興味」といった些細な感情を慈しみ、相手の笑顔を願い、そこに幸せを見出している。女性にとって(いや、人類にとって?)理想とも言える男性に、彼らは成長を遂げたのである。
②「君」とは「ARMY 」である
この曲を普遍的なラブソングとして聴くことは可能だし、十分にロマンチックな内容になっている。ただ、歌詞全体を通してはっきりしているのは、これはBTSとARMYのラブソングであるということだ。
ARMYの力で世界へ羽ばたき成功したが、ここは高すぎるからもっとARMYが見えるところに行きたい。そしてそんな風に思える、愛を知る少年になれたのはARMYのおかげだ、と歌っている。
ところで、Boy with LuvのMVには映画「雨に唄えば」へのオマージュが沢山散りばめられている。部屋の壁には雨に唄えばのポスターがあるし、かの有名な街灯につかまりくるりと回るシーンはJINが一瞬やるし、ソファーが出てくるのも、SUGAが鍵盤の上で歌うのも、RMのシーンなんかは完全に「雨に唄えば」のワンシーンをモチーフにしている。
「雨に唄えば」はサイレント映画からトーキー映画に移り変わる時代を描いたミュージカルで、大スターであるドンと名もなき彼のファンであるキャシーとの恋が描かれる。ストーリーを要約すると、ある日ひょんなことで出会ったドンとキャシーが恋に落ち、ミュージカル映画を撮ることになったドンが悪声の共演女優リナの吹き替えをキャシーにやらせ、それに腹を立てたリナがキャシーに永遠に自分の吹き替え役をやらせようと画策、しかし、舞台上、観客の面前でキャシーこそが映画を成功させた影の主演女優であることが明らかにされ、これによってキャシーはスターの座を手に入れ、ドンとも結ばれる…って感じかな。
私が特に注目したいのは、ドンとキャシーが出会うシーンだ。サイレント映画のスターであるドンに対して、初対面のキャシーは無謀にもサイレント映画を批判する。始めは腹を立てたドンだが、彼女の言い分も正しいと思えてきて、二人の距離は縮まり、結局彼女のおかげでドンは時代がトーキー映画に変わっても成功することができる。
これってなんか、ARMY味ないですかね。バンタンらしからぬミソジニー的歌詞を見つければちゃんと批判し、秋元康に曲をもらうのを止めたり、「これは進むべき道じゃない」と思えばはっきりとそう指摘するのがARMYだ。そして結果、それらは彼らのキャリアにとってとても大切なアドバイスであり、彼らの今はARMYが築いたと言っても過言ではないだろう。
「雨に唄えば」のラストでドンがキャシーに歌う曲の歌詞は、Boy with Luvの世界にも共通するスターと彼を見つめるファンの愛という風に聴くことができる。
ここまで来れば、Boy with Luvの原題「작은 것들을 위한 시: 小さきものたちのための詩」が持つ意味もわかってくる。小さきものとは、BTSが思う愛、つまり、愛する人の些細なことやそれが気になってしまう心のことであり、同時に、名もなき存在だがBTSにとっては大きな存在でもある一人一人のARMYのことを意味しているのではないかな。
③高い場所にいる彼らの苦悩
この曲には、2019年当時、頂点に上り詰めようとしているBTSが今後どこに、どのように向かおうとしているのかについての意思やメッセージが込められている。そしてそれはAnpanmanの時から変わらない。
まず、J-Hopeのパート。
まさに、今目の前にいる人を助けるというアンパンマン哲学。国連に呼ばれ、ユニセフのLove Myselfキャンペーンをリードしたり、人種差別への反対を訴えたり、2021年にはSDGsのスピーチをしたり、世界平和に確実に貢献していそうなBTSだが、彼らはそんな大きなことよりもただARMYを守りたいという気持ちでやってきたしこれからも同様だと歌っている。
最後のRMのパートはさらに具体的だ。
イカロスとはギリシア神話に出てくる人物。王によって幽閉されていたイカロスとその父は蝋で翼を作り脱出を試みる。父に「低すぎて海に近いと蝋が湿気でダメになるし、高すぎて太陽に近いと蝋が熱で溶けてしまう」と忠告されたにもかかわらず、いざ空を飛ぶとイカロスは自らを過信して太陽神の所まで行ってやろうと高く飛びすぎ、蝋の翼は熱で溶け墜落死する。
彼らは成功街道まっしぐらの中苦しんでいた。高い所から逃げたいとまで思っていた。だが、苦しむ彼らの姿を見るARMYも苦しく、それを見る彼ら自身も苦しいのだと、そのことにも気付いたのだろう。困難の中で、この世界の頂点よりもARMYのいる場所が自分たちの目的地だと思うことで彼らは頑張り、これからもそうありたいと歌っているのかもしれない。
今これを書きながら、映画「Break the Silence」で多分全ARMYが感動に震えたRMの言葉を思い出した。
彼らはそもそもすでに物凄く高いところを飛んでいる。目的地はARMYのいる場所だと言い聞かせ自分を保っているとは言え、勝手に高度を下げることは今はまだなかなかできないだろう。彼らはもはや墜落死する恐怖だけでなく、翼を燃やしてしまう太陽に囚われすぎてしまうことも、もしくは太陽に適応してしまうことすらも恐れているのかもしれない。
逃げ出したくなるほど高い場所を飛ぶ時の気持ちなんて私には永遠に分かり得ないが、地上で空を見上げている私にはわかる。高いところで太陽に飲み込まれることもなく、いつも心は空を見上げる地上の人々と共にあり、本当のLoveを知っている彼らがどれだけ素晴らしいか、ということは。
まさかまさかで既に5,000字書いてしまったみたいなのだが、結局のところ、彼らが尊過ぎて大好き過ぎる、という当然すぎる結論で終わらせていただきます(ズッコケ!)。ここまでお付き合いくださった方、長文読ませてごめんなさい。ボラへ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?