時には大人げないことも言いたい

「大人げないこと言うな」と誰かに言われた訳ではないし、私はここで十分に大人げないことをしているのだけど、それでも、大人げないことは言わない方がいいとなんとなく思っている私が大人げないことを言いたくなった話を今から書きます。

私の推しが来日していた。MAMAへの出演のためだ。それが決まった日から私の心はずっと祭りのようだった。公演日は娘の誕生日で、それ以外にも外せない予定が入っており、私は早いうちから大阪入りは諦めていた。結構スパッと諦めていたため「ああ、推しに会えない…」というような気持ちは強がりでもなんでもなくかなりゼロに近かった。それよりも寧ろ、ロラパルーザでのコンサート以来音沙汰なかった彼のソロ活動が見られることの興奮が大きかった。私がずっとハイブに望んでいたことだったし、彼の素晴らしさを多くの人に知ってもらえるという喜びが非常に強かった。だから、いわゆる拗らせ感情は本当になく、ただただ推しの活躍を見たくて見たくて毎日うずうずしていた。

実際に来日したらさらに興奮は高まり、もし私がどこかの国の国王なら全ての罪人に恩赦を与えてしまうのではないか、と言うくらい幸せな数日を過ごした。

しかし、MAMA当日の朝、私は愛が膨らみすぎて喜びや興奮よりも推しへの愛しさで苦しくなった。わかっている。既婚の子持ちがそんなこと言ったらすごく気持ち悪いことは、わかっている。ただ、私は正直にありのままを書きたいだけなのでどうか許してほしい。あの朝、私は「推しに会いたい…」とかのレベルではなく、本当に恥ずかしいですが、推しにぎゅーっと抱きしめてもらいたい、というような、そんな気分で辛くなった。すみません、変なこと書いて。でも恥を忍んで本当のことを書いているので許してください。とめどなく溢れてしまう推しへの愛を推しご本人に抱擁で止めてもらいたいというような、そんな奇天烈な感情で「あ、もしやこれが拗らせってやつか!」とさほど頻繁には拗らせない私は苦しんだ。本来ならもっと祭り気分のボリュームを上げてパリピみたいになりたかったのに、私の場合はそれができなかった。

娘の好物である唐揚げを揚げている時に推しがレッドカーペットに登場した。胸元がかなり深く開いている黒のスーツにサングラスをかけて「ザ・セレブ!」といった出立ちで彼は現れた。推しが気合いを入れている。推しが「緊張」「プレッシャー」という壁を超えるために「自己陶酔」という手段をとった、その事実に胸が一杯になった。モデルみたいに立つ姿にちょっと笑ったし、カッコつけた割に呼ばれたら素が出てしまう可愛さに癒され、胸筋がうっすらだけ見える細い身体がチラチラと見えると少しばかり興奮した。そして、推しの気合い100%な姿を見て、朝のネガティブ拗らせモードはやっと落ち着いた。

推しのパフォーマンスは素晴らしかった。文字にするようなものではないのでその内容や感想は割愛する。でも、私の感情の動きについては記録のために残しておきたい。私の感情は「興奮」と「寂しさ」が組み合わさったみたいな、今までに経験したことのないものだった。感情が波のように動いた。はっきり言って自分でもわけがわからなかった。全体としては「興奮」が強く「きゃー!」という感じではあったが、手離しでそういう状態というのではなかった。時々妙な切なさが襲ってくるというか…長くなりそうなのでこのくらいにしておく。

その後も推しはBTSとして2つ賞を受賞し、その度に舞台でコメントを述べた。いつも涙がぽろぽろとは出ないけど瞳に涙を溜めて目をキラキラと輝かす私の推し。我慢できているつもりでも全然バレバレな私の推し。その日の彼もまさにそんな姿だった。私の推しへの愛は爆発寸前までパンパンになった。はち切れそうだった。寧ろジンくんの生電話でちょっと落ち着けたくらい(感動はした)、推しへの愛ばかりが膨らみすぎた。

さて、ここからが本題です。

私は「ロス」というやつを経験することになった。朝も訳がわからなかったけど、公演後の自分はもっと訳がわからなかった。YouTubeに動画がアップされて喜んで見に行くも、さっきのように「きゃーカッコいい♡」と興奮することができず、なぜか涙がこみ上げる。その時の私にとって推しの映像は薬ではなく毒みたいだった。何度か試したが全部その調子で、私は3回くらい辛い気持ちで見たけどそれ以上はやめた。

翌日になっても症状は変わらず、TwitterのTLで推しの映像や写真を見ただけで「うっ」と涙がこみ上げる始末。YouTubeも然り。なんだこれ!と本気で思った。何度も書くが、強がりでもなんでもなく、本当に「大阪に行きたかった」「ホビを直接見たかった」「どうして娘の誕生日にMAMAだったの」という感情はなく、無意識でそれが原因なのだろうかと何度かじっくり己れの心に向き合ってみたけれど、どう考えてもその感情は私の中に見つからなかった。それなのに!なぜこんなに辛いのか!いくら考えてみてもその日にその答えは出なかった。ちなみに家族が寝静まったあと一人でえんえん泣いたらちょっとだけ楽になった。あとテテのソロ曲(2曲)にもだいぶ癒してもらった。ホビ入隊までにソロアルバム出してくれ、お願いだ。

その翌日になるとだいぶ落ち着いてきた。それで私の感情をもう一度冷静に分析した。結論、多分だけど、私はめちゃくちゃ大人げない感情で拗らせていた、と思う。

「兵役やだ」

お恥ずかしながら、シンプルにそれだった。

なんとなく、推しのソロ活動はこれで終幕です、と言われた気に勝手になって、私の中で彼の新たなソロ活動の可能性を探してみたけど、その度に兵役スケジュールが邪魔をした。そして無意識下で推しの兵役が近づく予兆を感じ取り、いくら期限付きとはいえ、いや、寧ろ期限付きで推しに会えない時間が来るということにものすごい悲しみを覚えた。

バンタンが兵役に行く知らせが最初に出た時、Twitterの中の私はみんなを励ます側にいた。夫が兵役経験者だからと、私を強くしてくれた夫の言葉をシェアして、それは結構な数の方に届いたようだった。それにその時は、結構本気で「推しに会えなくなるの辛い」という感情があまり良く理解できていなかった。「そりゃあ辛いけどさぁ、そんなこと言っても仕方ないじゃん」と思っていた。辛い辛いとウジウジ言っているジンペンを「ジンペンらしいなぁ」とか思って見ていた(ごめんなさい)。

がしかし!!その私が!!まさに!!その感情になった!!!!!
ジンペンごめん!!!!!

私の場合、ではあるが、この感情は決して私自身が推しに会えないことの辛さではなく、推しの貴重な時間、すなわちそれは推しと私の貴重な時間とも言えるのであるが、それを奪われてしまうということへの辛さ、なのかなと思っている。とかなんとか言ってるけど、簡潔に言えば「兵役のバカヤロウめ!」というやつで「私の推しを連れていかないでお願いだから!」である。

ジンくんの入隊まであと8日となった。あの時ちゃんと理解してあげられなかったジンペンの気持ちを、一部ではあるけれども、私は理解できるようになった。そして、大人げなく「兵役行かないで〜!」とは呟かないSNS界隈の恐ろしさを知っている大人なジンペンたちをうるうるした目で私は眺めている。ねえ、ジンペンさん、私には大人げないこと言っていいよ…って思っている。なぜなら、私はもうすでにそう思っている大人げない奴だし、今この記事を正直度100%で書いたから。だって悲しいんだもん。大人だって大人ぶらずにアイゴーアイゴー言って泣きたい時だってあるんだもん。泣こう、もう、ホントに。

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