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若林の本を読んでバンタンへの愛深まる

風が吹くと桶屋が儲かる、という言葉があるが、私の毎日は「〇〇するとバンタンへの愛が深まる」な現象が起きてばかりの日々である。

2018年に出版されたオードリー若林正恭のエッセイ「ナナメの夕暮れ」を久々に読み返した。私は新刊本を買う時に「読んだらメルカリで売ろう」と思うし実際にさっさと読んで売るタイプなのだが、これは最初の数十ページを読んで「これは本棚に残しておこう」と思ったお気に入りだ。

このエッセイに描かれているのは、若林という、世の中に生き辛さを感じている人の心模様と小さな成長の軌跡だ。スタバで「グランデ」と注文できない自意識過剰な気にしすぎ青年が、芸人として売れて、ゴルフにハマったり海外旅行を楽しんだりするまでに成長し気付いたことやそれでも未だに疑問に思うことなどがセンスの良い言葉選びで綴られている。ちなみに、まえがきには以下のような記述がある。

生きづらいという想いを抱えていて、息を潜めて生きている人はもし良ければお付き合いください。
毎日が楽しくて充実しているという人は、今すぐこの本を元の位置に戻して、引き続き人生を楽しんでください。
若林正恭「ナナメの夕暮れ」より

多分、だが、私が青年若林に会って彼への共感について語ったら「えー、絶対僕と同じタイプじゃないでしょー」と言われると思う。確かに、彼は「生き辛い族」(←勝手に命名した)においては上層部にいらっしゃる感じの人物で、私は彼からすれば「世渡り上手」に映りそうだし、実際、彼より若い時から上手く立ち回る能力があったと思う。それでも、外から見れば一見"この世に何の疑問も生き辛さも覚えず幸せに暮らして"そうに見えるかもしれない私のような"フツー"の人間も実は内面では若林と同じような葛藤や疑問を抱えている。もう結婚もした2022年の若林なら多分十分にそのことを理解してくれるだろう。

若林は高級ブランドで9万9000円のスウェットを手に入れることの価値が理解できない。正論が持て囃される世の中に疑問を持っている。この国に蔓延している冷笑文化が嫌いだ。「全ては自己責任だ」とか「挑戦し続けよう」など自己啓発本に書かれてあるような強者の論理に嘆息する。

本のタイトルにある「ナナメ」というワード。確かに正常に動いている世の中に対して小さなことにも一々疑問を持って立ち止まってしまう「生き辛い族」は少し捻くれていて何でもナナメに見ているように映るかもしれないが、彼の文を読んでいると、疑問だらけの世の中を普通に生きている方がナナメで、疑問を持つ方が真っ直ぐなのではないかと思えたりする。この本から伺える若林像は絶対に「ド直球な人」で、だから私は彼のエッセイが好きなんだと思う。

さて、では本題に移ろう(遅い)。

そんな若林の本を読みながら、私はいつもと同じく、若林から遠く離れたバンタンを想い、バンタンへの愛を深めた。それは何故か。

BTSはスーパースターで成功者だ。9万9000円くらいのスウェットを着て、ユニセフとか国連をバックに世界に"正"のメッセージを発信し、常に努力を絶やさず前へ前へと前進している。

文字だけで見るとキラキラ眩しすぎて青年若林が絶対に近づけなさそうな人々。でも、私は彼らはどちらかと言えば若林側にいる人たちだと思っている(違うかな…)。

何しろ、彼らはスカしてない。私はスカしてる奴が本当に大嫌いなんだけど、バンタンは誰一人としてスカしてない。スカした感じの写真撮るけど全然スカしてない(しつこい)。

グラミーでの彼らもそうだ。

彼らは2年連続でノミネートされ、受賞は逃したがめちゃくちゃカッコいいステージを見せ、グラミーの夜を世界のスーパースターたちと一緒に楽しんでいた。表面的に見ると、それは一切の隙がないスターの姿である。

でも彼らは必ず種明かしというか、ありのままを教えてくれる。ステージのために物凄く練習を頑張ってきたこと、「取れるかもしれない」と微かに期待していたこと、取れなくてやっぱりめちゃくちゃ悔しい気持ちであること。そこには強がりとか見栄っ張りとかカッコつけとか卑下とかそういった要素はゼロだ。

はっきり言ってアミはグラミーなんて別に欲しくない。グラミーを獲ろうが獲るまいが彼らは私たちのナンバーワンに変わりないから。現実にグラミー賞の視聴率を支えているスーパースターだから。そんな環境下で、彼らが「もうグラミー狙うのはやめてやりたいことだけやっていきます」と言っても「やっぱりグラミー欲しいからまた今年も一発英語曲流行らせます」と言っても、どちらも私は100%受け入れたいと思う。だってそれは自意識とか自己顕示欲とか承認欲求とかそういう余計な感情から生まれたものではなくて、彼らが忙しい生活の中で立ち止まってじっくり考えた結果の決意だとわかるから。

ウィークエンドが「腐ってる」と批判して決別宣言したような賞をあんなに真っ直ぐな瞳で臆せずに「欲しい!」と言える彼らが私は大好きだ。

若林はBTSのことどう思ってるかな…「僕の仲間」とは絶対に思ってないだろうけど、彼の中の「あの人なんか嫌い」センサーは絶対に反応していないと思う。彼らについて知る機会があれば、寧ろ、清々しく、彼らに未来への希望を感じるのではないかな。

・・・

※読み返してみたらなんか凄くわかりづらいし多分ほとんど伝わらないだろうなと少し反省。
私は生きることに拗らせがちな性格なんだけど、要領とか物覚えとか空気読んで取り敢えず順応する力はある方で、だから若林みたいに完全に拗らせたりはしない。でも、小さなことにすぐ疑問持っちゃうし、違うと思うことは絶対に飲み込めない頑固者だし、若林が心の中でプスプスとくすぶらせてる思いを全部理解できるから若林みたいな不器用な人が好きなんです。若林の話の要点だけを話すと「わかるわかる!」って言ってくる人は多いと思うんだけど、基本が拗らせな性格だから「いや、あんたわかってないよ多分」って思っちゃうからホント手がつけられない困った奴なんだよな自分。でも、そんな性格の癖してバンタンは勝手に仲間だと思っている。ホント勝手なんだけど、そう思ってるから彼らを好きだったりする。どうしてあんな雲の上の人たちにそんなことを思うのかと考えてみると、多分、彼らはそれくらい自分たちのカッコ悪い部分とか弱い部分を見せてくれているってことなんだと思う。

成功という名のアクセサリーをジャラジャラつけている彼らが、要領の良い陽キャでも、正論振りかざし野郎でも、斜に構えたクールガイでもないことに私はどれだけ安寧を得ているか。彼らのストレートで正直でキラキラした姿はいつだって私の荒れ果てた心の要塞跡地を綺麗に地ならししてくれる。

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