ロジカル vs ギャンブル
こんにちは、おふとんです。
前回の記事はめちゃくちゃ反響をもらって、感謝感激雨あられでございます。続けてると良いこともあるもんですね。
今回は日本のシージ競技シーンのメタの変遷とその背景について自分なりに考察して書いてみました。楽しんでもらえると幸いです。
1.ロジカルこそシージ
数年前までシージの競技シーンは、そのほとんどがロジカルなチームであったと言ってよいでしょう。ロジカルなチーム、すなわち過剰なリスクは避けながら論理的なアプローチでラウンドの展開を作っていくような攻め・守りを行うチームです。
実際にどのようなチームが活躍していたかを見てみると以下のチームが挙げられると思います。
世界では
・Fabian, Penguを中心とするPENTA, G2のメンバー
・Canadianを中心とするContinuum, EGのメンバー
日本では
・ShiN選手を中心とするeiNsのメンバー
・Wokka選手を中心とする野良連合のメンバー
これらのチームは(一定程度の撃ち合いの強さは前提としてありつつも)論理的なアプローチを軸とした安定感のある戦い方を強みとしたチームでした。
では、なぜ初期のシージでロジカルなチームが活躍していたのでしょうか?
明確な答えがあるわけではないですが、個人的な考えとして当時ある5 vs 5の中でもトップクラスに難易度が高かったからというのが大きな理由ではないかと思っています。
「補強」や「工事」という概念やドローン・ガジェットなど様々な要素が複雑に絡み合うことで、一般的なFPSプレイヤーにとってはなかなか難しく、慣れるまでに時間を要するタイトルであったと言えるでしょう。
一方で、頭の良いプレイヤー、すなわちロジカルで筋の良いプレイができるプレイヤーにとっては、用意した作戦や立ち回り、ゲームの知識によって他のプレイヤーに対して簡単に差をつけられたはずです。
こうした背景からロジカルなプレイヤーが、上位層として台頭し、結果としてロジカル型のチームが活躍するという初期のシージの勢力図が出来上がったのではないかと推察できます。
2.ギャンブルの台頭
ここからは日本の競技シーンに限った話になりますが、盛者必衰と言いますようにいつまでもロジカルなチームがトップに君臨し続けるわけではありません。
2019年頃からはCAGが日本シーンの覇権を握ります。
CAGは純粋なロジカル型のチームというわけではなく、リスクのある非常にアグレッシブな動きも織り交ぜつつ戦うようなチームでした。語弊を恐れずいうのなら半分ロジカル型・半分ギャンブル型のチームであると言えます。
さらにギャンブル型のチームの台頭を決定づける出来事としてRJC2021でのDONUTS USGの優勝を外すことはできないでしょう。
従来であればリスクが非常に大きいため「筋が悪い」とされている動きを躊躇なくチームとして行い、結果として日本一に輝きました。
では何故本来「筋が悪い」とされるはずのプレイを軸にしたチームが勝つようになったのでしょうか?
個人的に大きな要因だと思っている2点についてこれから話していきたいと思います。
2-1. ロジカル慣れ
ロジカルがギャンブルに対して弱くなってしまった一つの要因としてロジカル慣れというものがあると思います。
第一章でも触れた通りシージは当初ロジカルなチームが活躍した結果、トップシーンは殆どロジカルなチームによって占められていました。そうした状況では、対戦する敵がすべてある程度ロジカルなプレイをするため、例えば「ここの通路には有刺鉄線が置いてあるから壊れるまで敵は入ってこないだろう」であったり、「ここのエリアは敵が情報を取っていないから入ってくる前にドローンを流してくるだろう」であったり、敵も当然ロジカルなプレイをしてくるであろうという考えてしまいがちです。
これこそがロジカル慣れであり、こうした敵も当然ロジカルなプレイをしてくるであろうという考えのもとプレイしていると、有刺鉄線を壊さずに突っ込んでくるといったギャンブルに対する警戒が非常に薄くなってしまい、ギャンブルに対して相性が悪くなってしまいます。
2-1. 筋の良い「筋の悪い」プレイ
とはいえ、いくらギャンブルに対する警戒が薄くても、そもそもギャンブルは「筋の悪い」プレイであり、ロジカルなプレイをしているチームであればある程度対処はできるはずです。
それでもなおロジカルなチームがギャンブルに苦戦してしまった要因としては、ギャンブルをする側が筋の良い「筋の悪い」プレイ、すなわち成功率の高いギャンブルができるようになったことがあると思います。
ギャンブルをする側がそうしたプレイをできるようになった背景として、シージがリリースされてからある程度の年月が経ったことでデファクトスタンダード(※)が確立され、ある程度の守り方や敵の位置などを予測しやすくなったことがあげられます。
予測がしやすくなったことで、敵の警戒が薄く、ギャンブルが通りやすいポイントを突きやすくなり、筋の良い「筋の悪い」プレイ、すなわち成功率の高いギャンブルができるようになったわけです。
※デファクトスタンダードとは
3.ロジカルの復活
ギャンブルタイプのチームが活躍していた日本シーンでしたが、2022年に入ると一気にSCARZが覇権を握っています。SCARZは圧倒的な練習量に裏打ちされたロジカルな試合運びを特徴としており、間違いなくロジカルタイプのチームに分類されるでしょう。
逆に先述のUSGを中心にギャンブルタイプのチームはあまり成績が振るいません。なぜここに来てロジカルタイプのチームが復活してきたのでしょうか?
3-1. ロジカル慣れの解消
1つ目の要因としてはギャンブルタイプのチームが活躍しすぎたことにより、ロジカル慣れがなくなりギャンブルに対する警戒が上がったことでしょう。
ギャンブル自体はいくらギャンブルをする側が筋の良い「筋の悪い」プレイができるようになったとはいっても、そもそもが筋の悪いプレイであることには変わり有りません。だからこそロジカルなチームにしっかりと警戒されてしまうとギャンブルを成功させることは難しくなってしまいます。
3-2. リーグ戦の導入
2つ目の要因としてはリーグ戦の導入があげられます。
RJLの誕生により、日本のトップシーンにおいてもリーグ戦が導入されました。
リーグ戦が導入されると、対戦するチームが限られる上に、全ての試合が配信されるため、各チームは勝つために自分たちの作戦の練度を上げるだけでなく、敵チームの傾向を見て対策を施していきます。
こうなってしまうと、ギャンブルタイプのチームと対戦するチームはギャンブルに対して最大限の警戒をしてくるため、ギャンブルを成功させることは非常に難しくなってしまいます。この時にロジカルなプレイもできるチームであれば問題ないのですが、ギャンブルしかできない場合はどんどん手の内が枯渇していき、勝つことが難しくなってしまいます。
こうした背景からギャンブルの成功率が下がり、再びロジカルなチームが台頭しはじめたのではないかと思います。
いかがだったでしょうか。
今回は日本シーンの歴史を振り返りつつ、その時々でなぜ特定のプレイスタイルが強かったのかを自分なりに解説してみました。
ちなみに今回の記事はUSGのAokayuくんに査読してもらいました。ギャンブルの超本人に確認してもらったし、たぶん書いてることは間違いないと思います(笑)。
ロジカル vs ギャンブルという構図でいうと、現在はロジカルが強い時期に差し掛かっていますが、理論上はいずれギャンブルが強い時期も来るのではないかと思っています。
各チームのプレイスタイルを見て、今はどういったチームが何で強いのかという観点でリーグ戦を見てみるのも面白いかもしれないので、ぜひやってみてください。
それではまた。
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