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ある事情に関する実験と考察4『dust of ground』

「待ってたよ。エルシャコフ」 「私こそ、また、こうして話ができることをどれほど待ち望んでいたことでしょう」 「早速だが、ひとついいかね?」 「どうしましたか? 随分と慌てているご様子ですが」 「ああ。 時間が無いのだよ。 急ぎで悪いが、例のへびの件なのだが。」 「昔、あなた様と議論しましたっけね。懐かしゅうございます」 「あれから進展はあったかね?」 「ひとり考えあぐねておりましたが、heelというのは、文字通り、踵ということと、暗喩で、へびの尻尾ということ

    • コメント募集中  『ある事情を解き明かす為の実験と考察について』

      不確実性が益々強まる世の中で、人は私も含め、無宗教の人間にとって 指示する政治政党の無い人間にとって。 正社員という枠組みで生きていない人間にとって。 地域のコミュニティが崩壊されつつある独り暮らしの人間にとって。 普遍的なもの。不変なもの。 宇宙に近いもの。 昨日、聖書のアプリをダウンロードしました。 1憶人が、ダウンロードしていました。聖書のアプリは数多くありました。 その中のひとつが一億人です。世界一のベストセラーと言われる所以です。 気付

      • ある事情を解き明かすための実験または考察について『move heaven and earth』3

        アーチャは、西日が落ちていくと共に廊下の灯りをともして歩いていた。 母を失った今、アーチャは、混沌とした深い闇を感じてもいた。 本来ならば、横になって寝てもいたかった。が、そればかりでは、自分の体力ばかりではなく精神も消耗していくだろうということだけは感じていた。それにしも、この虚無感はなんだろう。 アーチャは、ひとつ灯りをともす。心が癒されるのであった。 灯りをともし終わると、アーチャは、月灯りと蝋燭の灯を頼りに、裏山へと足を運んだ。 湧き水で喉

        • 『魚心あれば水心 1』

          Dear 世界へ 俺は、この町を離れることに決めた。 道中、学生時代の友人のSが、向こうから歩いてくるのが見えた。 「やあ」 最初に声をかけてきたのは、彼だった。 「先を急ぐんだ。ごめん」 そういうと、俺は足早に彼の横を通り過ぎた。 昔、彼とは、夜を徹して他愛のない話をしたものだった。 そんな中で、ふと彼が言った。 「地球は、どうやってできたと思う?」 「さあな」俺は答えた。 「創世記は、読んだことないか?」 「無いな」 「簡単に言うと、一日

        ある事情に関する実験と考察4『dust of ground』

        • コメント募集中  『ある事情を解き明かす為の実験と考察について』

        • ある事情を解き明かすための実験または考察について『move heaven and earth』3

        • 『魚心あれば水心 1』

          ある事情を解き明かす為の実験または考察について『与えてはいけない、いや与えよ』2

          「head over heels. まっさかさまに、慌てふためくさ。ヘビにとってheelsとは、どこかね? 踵は無いから、尻尾だろう。『お前は彼のかかとを砕く』と言われても、その彼が、ヘビの頭を砕くのだから、ヘビにとっては、慰めにもなりゃしない。確かに彼には、かかとが有ったし、それは、それで、酷い惨状だった。目を背けたくもなる。問題なのは、ヘビが直接、手を下した訳では無い。ということだ。ごめんよ。また、ヘビの話で。ただ、どうしても、ここから抜け出せないんだ。ここが、とにかく

          ある事情を解き明かす為の実験または考察について『与えてはいけない、いや与えよ』2

          ある事情を解き明かす為の実験または考察について『奇跡と信仰』1

          「兄さん、何を言っているんですか?」 そう尋ねた彼は、あまりにも純粋無垢だった。 「まだ、解らないかね。いや、解らなくて良いんだが、要約すると、こういうことだ。 人間とは、何か。何者か。 自分は、何を求めて生きているのか。 時には、神を求めてみたくもなる。けれども、目の前に神は居ない。まして、神の名さえ、知らぬ。百歩譲って、俺が、神の全てを知ったとしよう。だが、次にある俺は、神を待つより、奇跡を待っているんだ。悪魔が、俺のすぐ側にいることも承知でね。」 「どういう

          ある事情を解き明かす為の実験または考察について『奇跡と信仰』1

          『SixNine』14 救いとは何か

          曇りの野原 (ナインとメフィーストフェレス)                ナイン 悲惨な目にあって、絶望に沈んでいるのだな。長いあいだ、惨めな思いをして世の中をさまよったあげく今は囚われの身になっているあの可愛い因果な娘が罪人として牢獄につながれて、恐ろしい憂目を見ているとは。そこまでになったか。役にもたたぬ裏切りの霊め。しかも貴様はそれをおれに隠しているのだ。そうやって突っ立ていろ。いつまでも立ったまま。腹立たしげに悪魔らしい目玉を頭の穴の中でぐるぐるまわしていろ。

          『SixNine』14 救いとは何か

          『SixNine』13 愛とは

          (街から逃亡するメフィーストフェレスとナイン)            メフィーストフェレス あの横のところに、なにやら特別の光があります。その木の茂みのところにに、なんだか私は惹きつけられるのです。さあ、いらっしゃい。むこうへもぐこみましょう。               ナイン どこへでも案内したまえ。だがひどくおつなことをやったもんじゃないか。われわれはワルプルギスの祭りの夜に、たまたまブロッケン山に居るんだよ。それなのに好きこのんでこんなところへ逃避するとは。

          『SixNine』13 愛とは

          『SixNine』12 救いは何処に

          街路にて (グレートヘレナの兄なる兵士バレンティン)              バレンティン 人は自慢話をしたがる。酒盛りの席などに座っていると、連中は花形の娘たちを声高にほめそやし、ほめるのを合いの手にコップの満を引いたものだ。そのときおれは両肘をついて、いまに見ろと落ち着いて座り、みんなのお喋りを聞いているが、程よい頃、笑いみながら髪をなで、並々注がれたコップを手にとり、「国中でおれの可愛いグレートヘレナより一等の娘が居るか」「意義なし、意義なし」カチリ、カチリと杯

          『SixNine』12 救いは何処に

          『SixNine』11 恵みと憐れみを

          井戸のほとり               女友達 バルバラさんのこと何かきいて            グレートヘレナ なんにも、わたし、めったに人中へ出ないから               女友達 あの人・・・あの上品ぶったあの人がよ            グレートヘレナ どうしたっていうの               女友達 鼻もちならないのよ。飲み食いするのも今では二人分なんだって            グレートヘレナ まあ           

          『SixNine』11 恵みと憐れみを

          『SixNine』10 恋という

          ナインの部屋           メフィーストフェレス すっかり、あの娘にまいってしまったようですね。その様子では、明日にでももっともらしい顔つきで、グレートヘレナをたらしこみ、心から愛しているなどと吹き込むでしょう。もっともらしい嘘を。              ナイン 嘘つきはお前の専売特許ではないか。おれは、たらしこむなどと、心からの言葉だ。           メフィーストフェレス よろしい、結構です。それから永遠に変わることのない誠実だの、愛だの。また唯

          『SixNine』10 恋という

          『SixNine』9 マルテの庭

          夕べ (公園のほとりをナインとグレートヘレナが連れ立って登場)           グレートヘレナ (胸に輝く宝石を手にとりながら) こんな高価な品を、出会ってまだ間も無い間柄ですのに。やはり、頂けません。母に叱られてしまいます。              ナイン それもそうだろうね。しかし、それにしても美しい。           グレートヘレナ ほんと・・・美しいダイヤですわ              ナイン いや、君のことだよ (グレートヘレナが恥

          『SixNine』9 マルテの庭

          『SixNine』8 今宵、血が流れないことを祈る

          街路 (ナインとメフィーストフェレスが歩いているとひとりの娘とすれ違う)              ナイン おい。今の女は何という女だ。           メフィーストフェレス 早速、愛欲の炎に火をつけなさいましたか。でも、あの娘はおやめなさい。あれは、たった今、坊主のところから来た娘です。なんにも罪などはないと言い渡されましてね。先ほど、私が、懺悔椅子のそばをそっと通ってみたんですが、あれはまったく罪のない代物ですよ。懺悔をしに行っても、懺悔すべき種がないという

          『SixNine』8 今宵、血が流れないことを祈る

          『SixNine』7 地下室の手記

          (ナインむく犬を伴って登場)               ナイン +予感に富んだ申請な畏怖をおぼえさせ+ +われわれの中に霊を喚び覚ますところ+ +深い夜のとばりに包まれた+ +街中を後にしてもこよう+ +あらゆる狂暴な行動を伴ってくる+ +荒んだ衝動は我が身には眠り込んだ+ +今動き出しているのは人間愛+ +また神への愛を模索する+ 静かにしておれ、むく犬。あっちこっちと走りまわるな。なにをくんくん嗅いでいるのか。暖炉のかげに横になってろ。おれの一番上等

          『SixNine』7 地下室の手記

          『SixNine』6 ひとつの命が地球より重い

          市内 (復活祭 街中が賑わう    ナインとティーン登場)               市民A これはこれはナインさん、どうぞ一杯。今、樽から注いだばかりのジョッキです。               ナイン これは、どうも、では一杯いただきます。 (次いで、市民がティーンにもジョッキを渡す)               市民A いやあ、あの時には、あなたのお父様にはお世話になりました。あの疫病が流行った折には、恐ろしい高熱になやまされていたのを危ない瀬戸際助け

          『SixNine』6 ひとつの命が地球より重い

          『SixNine』5 月光と太陽

          君は希望を知っているか               ナイン 誰におれは教示をうけよう。あの心の欲求に従って行っていいのだろうか。そして、行為が苦難となって現れ出、生の歩みを妨害するのだ。精神が獲得した徳性があったとしても爽雑物がまといついてくる。地上の善なるものに到達したとき、より善なるものは単なる虚妄だ、幻想だと呼ばれる。生活に魂を与えてくれた美しい感情も、塵の世のどさくさでは凝結してしまう。おれは天使になど似てはおらぬ。おれの似ているのは、塵芥の中にもぐりこんでいる虫

          『SixNine』5 月光と太陽