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Epic Games vs Apple/Google解説

今回は本日(8/14)ニュースになっているFortniteがApple/Googleのアプリストアで削除されるEpic GamesとApple/Googleの戦いについて解説します。Twitterでバズったのでnoteでも転載しますw。

EpicはApple/Googleがアプリ内での購入に対して30%の手数料を取ることについて批判していた。Fortnite内でApp Store経由で払うかEpic Gamesに直接払うオプションを提示。Epicは手数料分は取らなく、ユーザーがコストカットできるように見せている。

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ちなみにこの「ダイレクト決済」はマクドナルドやスタバをOKされているが、ゲーム・メディア業界はOKされてない。Appleはデジタルコンテンツ以外は自社決済をしても良いとのことなので、UberやAmazonとかも基本的にはオッケー(Amazonのデジタルコンテンツは分からないですが)。

過去1ヶ月でEpicから購入した場合、20%の払い戻し + アイテムをもらえる。Fortniteが自社の売上をユーザーに返しているというすごいことが行われている。

その影響でAppleがFortniteのApp Storeから削除。

そして続いてGoogle Play Storeからも!

App StoreでFortniteを既にダウンロードした人はとりあえずはプレーし続けられる。ただ新しいアップデートになると新しいコンテンツへアクセスが出来なくなる。

Epic GamesはAppleがこうすることを誘ってたのは間違いない。そして準備万端だったEpic Gamesは早速Appleに対して訴訟を。

同時にAppleが過去IBMに対抗することを意思表明した代表的CMの1984をFortnite化して動画をリリース。以下動画はFortniteとAppleのCMを同時に見せているので、どれだけ似ているかが分かりやすい。

この1984のCMの意味合いはGeorge Orwellの本の1984から来たもので、支配者の「Big Brother」によって人類がコントロールされているのを見せている。AppleはIBMが世界を支配したく、そんな世界を壊して行くのがAppleと証明したいのをFortniteがそれをそのまま活用して、元々世界を良い方向性に変えたかったAppleが今になってはIBM(支配者)の立場になったと見せるめっちゃイケている動画。

唯一の悪い部分はFortniteユーザーの13歳〜20歳ぐらいの若手層は1984のCMを見たことがないので、これが何の裏の意味合いがあるかを理解してないかもしれないことw。

同時に #freefortnite をバズらせている。

Appleは想定通り、ユーザーからiOS上で直接お金をもらうことを「安全性の問題」と発言している。

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Fortniteは繰り返しでFortnite版の1984をライブ配信し続けているw。

Epicは明らかにApp Storeのフレームワークに対して批判していて、Appleのリアクションを予想していた。アプリ内で直接支払いが出来るのはそういうレスポンスを及ぼすきっかけにすぎない。そしてそれに対してすぐに訴訟、動画、キャンペーンを出すのは素晴らしい。

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このままいくと、iOSとAndroid(スマホ)でFortniteは8月27日よりプレーができなくなる。アップデートをズラすのか、それともユーザーが離脱するリスクを取るのかが見所。恐らくリスクをFortniteは取るはず。全世界をApple/Googleを嫌わせる作戦なはず。

Epic Gamesの訴訟文で1番のポイントはApp Store以外(例えばMac)だと誰でもアプリを開発して直接ダウンロードや支払いを出来ると言っている(実際にそう)。何故App Storeは同じルール上で存在しないのか?という疑問点。

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正直Epic Gamesはこの訴訟・戦いには勝たないと思うが、彼らは長期的に勝利する可能性を作っている。ちょうどApple・Googleやテック企業が独占禁止法でアメリカ政府から見られている中、より社会的にApple・Googleが悪者に見えると将来アメリカ政府がAppleを制限させる可能性がある。

EUだと既にApp Storeのポリシーが見られているので、EUからアメリカにその流れが来るのをEpic Gamesが加速させようとしているように見える。

そしてこれはEpic Gamesの長期戦略の「メタバース」コンセプトに実は繋がっている。Epic Gamesはプラットフォームのゲートキーパーコンセプトをぶち壊そうとしている。

オンラインのEpicゲームストアを見るとそれが明らか。ゲーム業界だとストアの手数料は大体30%だが、Epic Games Storeではゲーム販売の12%しか取らない。ただ、Epic Gamesのすごいところは、ゲーム開発者がUnreal Engine(Epic Gamesのゲーム開発エンジン)とEpic Games Storeを使うと、Unreal Engineの5%のライセンス手数料が免除される(結果7%のみ)。ゲームのディストリビューション(ストア)とエンジンのライセンス(開発)は別サービスと見られるので、どちらともフィーをとっても良いと思うが、Epic Gamesの考え方はちょっと変わっている。

普通に考えるとEpic GamesはEpicのストアとエンジンをどっちも使っている開発者からより低い手数料を取るのは自分の売上を下げている。しかも2020年5月にEpicはUnreal Engineで開発したゲームの初期$1M(約1億円)の売上に対してのライセンスフィーは免除すると発表。ほとんどのゲームは$1M以上の売上を達成しないので、Epic GamesはそこからUnreal手数料はゼロとなった。

逆にUnityとか見ると、エンジン開発のために開発するユーザー数に応じてお金をとっている。そう考えるとゲーム開発側からするとアップフロントでお金を払わなければいけないUnityとほぼお金を払わなくても良いEpicを比較すると、Epicを選ぶのは間違いない。最終的にUnityはフィーを同じように免除するかもしれないが、Epicはゲームエンジンからお金を取らない文化を作っている。

Epic Gamesの凄さは今までお金払っていたツールやプラットフォーム手数料を削減、場合によってはゼロにしていること。そこから単純計算すると、ゲーム業界の$120B(12兆円)の市場の全てのゲームがUnrealエンジンで開発された場合、Epicは$6Bの売上しか貰わないことになる。そして全てのゲームがUnreal Engineで開発されて、Epic Games Storeで販売されてもEpicは合計$15Bの売上にしかならない(市場全体の12%)。

しかもEpic GamesのTim SweeneyさんはEpicではユーザーデータは広告用に絶対売らないと発言しているので、それ以外の売上チャネルはない。

では、何故Epicは自分の首を絞めるような戦略をとっているのか?それはTim Sweeneyさんがゲーム市場規模が見たことないぐらい拡大すると信じているから。Tim Sweeneyさんはこの12兆円のゲーム市場が10倍、100倍成長できると思っていて、その仮説の中心となるのが「メタバース」。

このメタバースについては以前記事を書いたので、ご興味ある方は是非読んでみてください!

上記記事以上の情報を知りたい方は以下ポッドキャストを。

そして英語でもオッケーであれば、この長時間のポッドキャスト(2時間)を是非お聞きください!

Epic Games Storeの良さについては以前スレッドを書きましたので、ご興味ある方は是非読んでみてください(そこまで長くないですw)。

このタイミングでEpic Gamesがこういうアクションをとったのは明らかに計算していたことは間違いない。そしてEpic Gamesの長期戦略として、何かアメリカ政府がAppleを制限するきっかけ作りとしてこういうアクションをとっている気がする。

恐らくEpic Gamesは訴訟に対して勝つことを想定していない。訴訟とキャンペーンによってアメリカ・世界で一般的にApple/Googleの支配力に対しての会話のきっかけ作り、そしてそれが後に政府へのプレッシャーと変わっていくことを狙っている。Epic Gamesは何年も先を読んでいる気がする。

SpotifyもEpic側に立っている。今後いろんな会社が意思表明をしそう。

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EpicがGoogleに対しても訴訟を。Epicの言い分はスマホはPC/Macと同じようにオープンにするべきこと。

最終的にこれはPR的にApple/Googleとしては最悪。
・ゲーム開発側からするとEpicを応援する
・iOS/Androidで人気ゲームのFortniteをプレーできなくなると若手層がApple/Googleを嫌う
・話題性が高まると政府側もプレッシャーを感じる

Epic Gamesの戦略が凄すぎる。負けても長期的にunderdogとして見られてPR的に勝つ。

Coinbase CEOからもAppleに対してに批判、Epic側に立っている。

どんどんこういう発言が増える。Epic Gamesの戦略が成功している証。そしてHEY創業者のDavidさんが現在Twitterから休暇をとっているのが勿体ないw。彼のリアクションを見て見たい。

Tim Sweeneyさんの発言。頑張って欲しい。

Uberも過去にAppleに注意された時には逆らえなかった(その時はUberがデータプライバシー周りを無視していたから)。Apple・Googleを批判できる企業は中々いないのは、それだけその二社がプラットフォームを支配している証拠。

Epic Gamesがこれだけ批判できるのは上手く色んなプラットフォームで確立したから。Timさんは本当にオープンなメタバースを狙っていて、そのビジョンを成し遂げる為に大手と戦い続ける。

プラットフォーム依存しない力。

最後に:Apple/Googleへの訴訟・批判プロジェクトは社内で「Project Liberty」と呼ばれていたw。

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中国資本(Tencent)とAppleの30%が何故高いと思うかについてはこちらをご覧ください(もちろん個人としての意見です)。



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