見出し画像

データで見る認定遺伝カウンセラー

皆さんは「認定遺伝カウンセラー」にどんなイメージを持っていますか?
今回は、認定遺伝カウンセラー資格保有者に対し2年ごとに行われている実態調査のデータ(*)をもとに、認定遺伝カウンセラーにまつわる?(ハテナ)を見ていきます。
意外な発見があって認定遺伝カウンセラーへのイメージが変わるかもしれません!

(*)日本認定遺伝カウンセラー協会「認定遺伝カウンセラー現状調査2020詳細結果報告」(非公開) より抜粋。結果は2020年3月時点のものであり、回答率は57%(153名/267名)  あることから、認定遺伝カウンセラーの全員の情報を反映したものではないという限界についてご了承ください。

認定遺伝カウンセラーってどんな人がなっているの?

男女比

(n=150)

年齢分布

(n=148)

認定遺伝カウンセラー資格取得前に学んだ分野

(n=150, 複数回答可)

国家資格を保有している者の資格の種類

(n=68, 複数回答可)

認定遺伝カウンセラー資格取得までの職歴

(n=149)

 認定遺伝カウンセラーは多様な人材で構成されるよう、医療資格保持者以外にも門戸が開かれています(*)。新卒か既卒かや、医療保健分野での職務経験の有無に関わらず、認定遺伝カウンセラーになりたいと思ったその時から目指すことができる職業です。
(*)大学院によっては、入学者を医療資格保持者に限定している所もあります。

認定遺伝カウンセラーってどこで働いているの?

勤務地

(n=144, 複数回答可)

 首都圏以外での認定遺伝カウンセラーの人数がまだまだ少ないですが、最近は首都圏以外での養成校が増えてきていますので、全国に広がっていくことが期待されています。

雇用先のカテゴリー

(n=153)

雇用先の医療機関の種別

(n=119)

医療機関での所属部署


(n=120)

医療機関で認定遺伝カウンセラーが関与している診療科

(n=113)

雇用先の企業の業種

(n=10, 複数回答可)

企業での所属部署

(n=10, 複数回答可)

 認定遺伝カウンセラーの仕事場としてはやはり医療機関が最も多いですが、遺伝医療の知識と経験を生かして検査会社や製薬企業で働く人もいますし、大学で研究や教育に従事している人もいます。
 病院では、幅広い診療科でのニーズに応えていることが分かります。最近は、がんゲノム医療が始まったことによりがん診療に従事する認定遺伝カウンセラーが増えている傾向があるようです。

認定遺伝カウンセラーってどんな仕事をしているの?

医療機関で勤務している認定遺伝カウンセラーの業務は多岐に渡ります。ここでは回答者の7割以上が行っている業務を紹介します。

遺伝カウンセリングの準備

  • 予約の受付や変更

  • 遺伝カウンセリング当日の前に患者さん・ご家族からお話をうかがう

  • 遺伝学的検査結果の確認・解釈

  • 疾患・治療に関する最新情報の収集(文献検索)

  • 社会的資源(患者会等)の情報収集

  • 患者説明資料作成

遺伝カウンセリング

  • 家族歴聴取、家族図の作成

  • 疾患、遺伝形式、遺伝学的検査に関する説明

  • 社会的資源(患者会等)の情報提供

  • 患者さん・ご家族の気持ちを代弁・伝達

  • 同一家系内での他の家系員への説明

  • 遺伝カウンセリング記録作成

  • フォローアップ電話・面談

情報管理

  • 遺伝学的検査結果の管理

  • 遺伝カウンセリング数・検査数などの集計作業

その他には、病院全体で遺伝医療のサービスを向上するために、医療者や患者さん向けの勉強会を行ったり、様々な診療科や専門職を繋ぐコーディネート役として働いています。また、学会での講演、研究論文の執筆、学生への講義や実習指導といった研究・教育活動を行っている人もいます。

遺伝医療に関する学術的な専門性と、患者さんご家族への支援や他の専門職との連携に必須であるコミュニケーションスキルを活かして活動しています。

認定遺伝カウンセラーの仕事のやりがいとは?

認定遺伝カウンセラー養成大学院では、遺伝医学の基礎と臨床、カウンセリングスキル、遺伝医療を取り巻く社会的問題について、講義と実習を通して学びます。現場でどのようにそれらを生かしているか、それぞれの感じる「認定遺伝カウンセラーがいる意義」について、アンケート結果の一部(*)を紹介します。
(*)表記の統一のため、専門外の方にも分かりやすくするため、一部改変しています。

患者さん・家族の自分らしい選択を支える

「患者さんから『自分らしい意思決定を行うことができた』、『味方でいてもらえたから家族に検査の結果を話すことができた』などの言葉がかえってきたとき存在意義を感じます」

「患者さんから『医師の診察時には(外来が混んでいて)気を使って聞けなかったことが聞けてよかった』、『先生の話はさっぱり分からなかったけど内容が理解できた』と言われたとき」

「患者さんから『ゆっくり話ができて(聞けて)良かった』『これまでモヤモヤしていた点が少し晴れた』などの言葉をもらったときに意義を感じます」

「医療者と患者さんをつなぐことが認定遺伝カウンセラーの役割と感じているので、患者さんの主訴をなるべくありのまま感じ取り、それをスタッフ間で共有して患者さんの目的を整理できたとき」

「遺伝カウンセリング中に、患者さんの様子から何か言い出せないでいることがあるのではないかと気づき、話を聞いた際にこれまで語られなかったその人にとって重要な懸念や内容が明らかになったとき」

遺伝性疾患の専門知識を生かして患者さん・家族を支える

「妊娠中に突然、胎児の形態異常の可能性を指摘された妊婦さんへの対応において、胎児の状況について医師からの説明を補足したり表現を変えたりしながら理解できるようにお伝えしたり、その状況に伴う心理的負担に対して寄り添っているときに必要性を感じます」

「遺伝医療という視点(家系を見渡し、長期的な展望)からの患者さん家族をみて、多面的・継続的な関わりができるとき」

「患者さんの心情の変化を把握するだけでなく血縁の方への対応まで考えて関われることが、認定遺伝カウンセラーのならではと思います」

「さまざまな科で、専門的な支援を受けられていない遺伝性疾患の方や疑われる方の存在に気づいて、関わる医療者に必要性を連絡できた時に意義を感じます」

さまざまな診療科や職種をつなぐ

「遺伝性疾患は一つの科に収まらない疾患が多いため、多職種連携の調整やカンファレンスの企画をするときに意義を感じます」

「診療科医師、診療科看護師、検査技師、治験コーディネーター、薬剤師、メディカルリサーチコーディネーター、ソーシャルワーカー、臨床遺伝専門医と一緒に、当事者にどのようなことが必要かを考えて、チームとして関わることができているとき」

「看護師ではできる業務が制限されているため、どの診療科にも所属しない認定遺伝カウンセラーは動きやすいです」

専門知識を生かして共に働く人を支える

「バリアント(遺伝子変異)の評価ができて、そこから考えられる患者さんやご家族の疾患のリスクを主治医や患者さんにお伝えし、遺伝性疾患として必要な対応を講じていただけるようになることが、認定遺伝カウンセラーとして意義を感じます」

「他の職種の方から、どの遺伝子検査が適切かや、どのような遺伝子検査の選択肢があるか、遺伝子検査の結果の解釈について質問や相談を受けるとき」

「製薬会社で働いています。社内は遺伝リテラシーがまだまだ低いので、資材作成や研修時など、認定遺伝カウンセラーの専門性や知識を活用する場面があります」

おわりに

認定遺伝カウンセラーにまつわる?(ハテナ)を見ていく中で、「そうだったんだ!」という気づきは何かありましたでしょうか?
まだまだどういう仕事か十分に知られていない認定遺伝カウンセラーですが、一人一人が遺伝の問題に直面している患者さんご家族のために頑張っています。
引き続き応援よろしくお願いいたします!

「認定遺伝カウンセラーとして働いてみたい」と思われた方は、こちらをご参照ください。あなたのチャレンジを待っています!


【転載・引用について】本記事の著作権は日本認定遺伝カウンセラー協会に属します。転載をご検討の場合には、下記の当協会問い合わせフォームまでご連絡をお願いいたします。引用する場合には、引用と明示したうえで改変せずに記載いただき、本記事のURLを出典先として併記していただけますようお願いいたします。
https://jacgc.jp/inquiry.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?