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戦禍の子ども達を案じて(注:過激な表現があります。閲覧注意です)

 子どもの身体・精神・情緒の発達において、安全・安心な環境をつくり、守ることは大人たちの基本的責務です。しかし、思いもよらなかったコロナウイルス感染症のパンデミックにより、私たちの生活環境は脅威にさらされ続けています。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界にさらなる脅威を与えています。

 今回は、子ども達の視点から、これらの災害の脅威について考えてみましょう。パンデミックも戦争も、公衆衛生上の甚大な障害です。パンデミックは主に自然災害(一部は対応の失敗による人為災害)、戦争は完全に人為災害です。両者は、子ども達を直接的および間接的に殺傷します。今回のパンデミックは約600万人の方が亡くなっていますが(2022年3月現在)、子どもの死者数は少ないといわれています。しかし、保護者を失った子ども達は相当数います。戦争では、毎年何万人もの子どもが亡くなっています。

 戦争が起これば、戦地の保健や福祉は崩壊します。摂食状態や環境衛生も確実に悪化し、感染症が流行し、子ども達に重篤な感染の脅威が迫ります。戦争は軍施設のみが標的にされるわけではなく、病院などの保健施設が攻撃されることがあります。医薬品は略奪の対象になり、医療物資は傷病兵の手当などに使用され、物資は極端に不足し、その輸送も困難になります。必要な予防接種プログラムも中断され、救急治療が優先されてしまい、障害をもった子ども達の医療支援はストップするでしょう。

 学校教育も崩壊します。砲撃された校舎、略奪。いなくなる教員。コミュニティの象徴である学校は、地域の誇りでもあるはずです。子ども達の人生を形作る基盤は失われます。教育や職業技能の継承は限りなく困難になります。

 戦禍における子ども達の苦難は、平等ではないかもしれません。元々、障害や疾患をもった子ども達、幼い子ども達の死亡率や罹病率が高まるでしょう。特に、3歳未満の子ども達の生命は危険にさらされます。赤ちゃんには母乳を与えることができず、清潔な水の確保が難しいなか、栄養状態を保つのは困難です。

 戦禍にある子ども達の心理状態もたいへん心配です。戦争は、安心・安全な家庭を崩壊され、家族を離散させます。コミュニティを分かち、疑心暗鬼を増幅させ、不足物資の奪い合いを招きます。子ども達は、身の回りの安全が崩れていく恐怖に加え、大人たちの人間的な弱さや醜さを目の当たりにするでしょう。知り合いが傷つけられ、殺し・殺される経験をし、自分の身に危険が直接迫る危険性もあります。心が深く傷つけば、深刻な心的外傷体験になります。長期的な悪影響を子ども達に及ぼし続けるのです。

 子ども達は、大人たちがどのような論理づけをして戦争をしたとしても、それを許しはしないでしょう。心身ともに育ち、教育を受け、社会を学び、毎日働き、その結果が戦争を起こすことなら、誰も大人になりたくありません。私たちは、子ども達の未来に投資をするといいながら、実は搾取し続けているのかもしれません。

 平和や紛争解決の大切さを広め、世界が冷静になるよう呼び掛ける時期だと思います。私たち大人たちのふるまいを、子ども達は曇りのない目で見ていることを忘れないでいたいです。



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