コント手術室にて

若手医師::先生、この手術、私にやらせてください。
先輩医師:え、だいじょうぶか、君。ひとり立ちしてもらおうと、君にまかせた手術、1ミリ切るたびに「先生、これくらいでいいですか?」って聞いて、1センチ切る間に10回以上も聞いていたじゃないか。慎重なのはいいけど、20分で終わる手術に90分かかった。それも、後半は私が交替して何とか終えたんじゃないか。
若手医師:いやだなあ、昔の話をいつまでも言わないでくださいよ。
先輩医師:って、あれ、2日前のことだぞ。
若手医師:やればできる! 若い人の可能性を信じようじゃありませんか!
先輩医師:それを自分で言うか。そこまで言うなら、やってみたまえ。
若手医師:ありがとうございます。さっそく始めます。メス。(作業が続く)
先輩医師:お、スムーズにいっているみたいだな。
若手医師:あれ? 先生、これ、取れちゃったみたいです。ほら。
先輩医師:ほら、って。それまずいだろ。患部じゃないだろそこ。
若手医師:でも、取れちゃったんです。このメス、切れ味最高! で、どうしましょ。
先輩医師:正直に言うしかないだろう。
若手医師:「正直に」ですか。
先輩医師:つまり、あれだよ。「切り取ったこの臓器にガンが転移する可能性はゼロになりました。」ということだな。
若手医師:なるほど〜。切り取っちゃったんだから、ガンが転移することはあり得ない。嘘はついていませんね。さすがは先輩。(手術を続ける)
若手医師:先輩。今度はこれ、取れちゃったんですけど。
先輩医師:なにぃ。
若手医師:でも、だいじょうぶですよ。「この臓器にガンが転移することはありません」ということで。
先輩医師:うーむ。それしかないか。
患者:あのう。この手術、部分麻酔なので、いままでの話、全部聞こえているんですけど。
先輩医師:なに!? 全部聞いていたの?
若手医師:どうしましょう?
先輩医師:よし! では、記憶中枢の切除術を追加して行います。
若手医師:そうかあ、なるほど〜。この追加手術で、記憶中枢へのガンの転移の可能性がなくなりますね。
先輩医師:バカ!

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