西村あさひ法律事務所の正体【北大法学部の後輩たちの就活を応援】
西村あさひ法律事務所のキャッチフレーズは「リーダーとしての自覚とともに法的インフラの発展を目指して」(*1)。
「リーディング・ファーム」ではなく、自らを「リーダー」と断言しています。これは、所属弁護士数国内トップの自負と考えてよさそうです。
また、法律事務所や弁護士は法的インフラを「使う側」ですが、キャッチフレーズではこれを「発展させる」ともいっています。
同事務所は法律を研究する組織を持っていて、これが法的インフラを発展させる事業を担っています。
大学の法学部に所属して弁護士を目指している学生なら、同事務所を研究しないわけにはいかないでしょう。
そこでこの記事では、同事務所の概要や活動の特徴、最近の動向などを紹介します。
記事中のデータは2022年12月現在のものです。
*1:https://www.nishimura.com/ja/firm/index.html
活動内容と概要
西村あさひ法律事務所の業務分野には「コーポレート」や「事業再生・倒産」「争訟」といった、法律事務所らしい名称がある一方で、「リアルエステート」「インフラ、エネルギー、資源」「アグリフード」「IT、メディア、エンタテイメント」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった、事業会社のビジネスのような名称も存在します(*2)。
このことから同事務所の2つの大きな特徴がみえてきます。
■西村あさひ法律事務所の2大特徴
●同事務所は、一般の人が「法律事務所」と聞いてイメージする刑事事件や人権、離婚、債務整理といったことは原則行わない
●企業案件、ビジネス案件は、それがどのような内容であっても、どれだけ難解なものであっても徹底して対応する
同事務所の業務内容については後段でさらに詳しく解説します。
*2:https://www.nishimura.com/ja/practices
事務所概要
西村あさひ法律事務所の概要を紹介します。
■西村あさひ法律事務所の概要
●設立:2007年10月(前身は1966年に故西村利郎氏が設立した西村法律事務所)
●主事務所の住所:東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー
●その他の国内拠点:名古屋、大阪、福岡
●海外拠点:ニューヨーク、フランクフルト、デュッセルドルフ、北京、上海、台北、バンコク、ハノイ、ホーチミン、シンガポール、ヤンゴン、ドバイ
●その他の拠点:ジャカルタに提携事務所、香港に関連事務所
●弁護士:計792人(内訳:パートナー232人、オブカウンセル8人、カウンセル74人、アソシエイト478人)
●税理士、弁理士、アドバイザー:22人
「西村あさひ法律事務所」となったのは意外と最近で2007年です。このとき、西村ときわ法律事務所とあさひ法律事務所の国際部門が統合しました。
弁護士が792人もいますが、所属弁護士たちの立場はさまざまです。
パートナーは一般的には法律事務所の共同経営者と理解されます。その重要なポジションにあるパートナーが232人もいます。
アソシエイトは若手弁護士や補佐的な業務を行う弁護士、または月給制の弁護士といった意味合いがあります。その数478人。「上を目指す」弁護士がこれだけいることがわかります。
オブカウンセルはパートナー以下、アソシエイト以上の弁護士と理解されています。
カウンセルは顧問と訳されることが多く、やはりパートナー以下、アソシエイト以上の弁護士といえます。
ただ792人のなかには、日本の弁護士制度上の弁護士以外にも、海外の弁護士制度上の弁護士も含まれている可能性があります。その内訳は公表されていません。
そして上記の概要のなかで最も特徴的なことは、海外拠点の多さでしょう。
欧米、中国、中国以外のアジア、中東と、世界中に同事務所のネットワークが敷かれてあります。
「世界で活躍したい」と考えている弁護士志望者にとって同事務所は、憧れのローファームになっているのではないでしょうか。
業務の種類~ほぼすべてのビジネス上の法的課題を網羅
同事務所はあまりに大きすぎてその規模感を測れない人もいると思います。そこで同事務所の業務内容をすべて紹介します。ただし、これでも国内業務だけであり、この他に海外業務があります(*3)。
上記の表は、同事務所の公式サイトからの引用になります。ほぼすべてのビジネス上の法的課題を網羅していると考えてよいでしょう。
これだけ詳しく業務内容を公表している法律事務所はほとんどみかけません。すなわちこの表は、同事務所の「企業案件、ビジネス案件はすべてお任せください」という自信の現れとみることもできます。
*3:https://www.nishimura.com/ja/practices
難しい事案に果敢に挑む
上記の表で注目したいのは、難解事案に果敢に取り組んでいるところです。
不動産紛争、消費者集団訴訟、企業不祥事争訟、投資家対国家紛争、国際訴訟、粉飾決算、相場操縦、贈賄規制違反、政治資金規正法、カルテル、談合、政府調達、経済制裁――といった項目が並んでいます。
これらはどの法律事務所でも扱える、といった案件ではありません。
そして、企業がこれらのいずれか1つにでも巻き込まれたら、あるいは1つでも引き越してしまったら、経営を揺るがす事態になりかねません。
同事務所は企業の防波堤といえそうです。
同業と異なる特徴
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?