集客のためのコンテンツマーケティングを詳しく解説(プロ向け記事)
集客におけるコンテンツマーケティングとは、コンテンツを使って集客目的のマーケティングを実施することです。
一般的なマーケティングのなかにももちろん、集客を目的した施策があるわけですが、それではone of them(たくさんの施策のなかの一つの施策)になってしまいます。企業が集客を急がなければならないときは、集客にフォーカスしたマーケティングが必要になります。そして、この集客マーケティングに使われるコンテンツが、集客コンテンツです。
コンテンツが集客マーケティングで機能するのは、現代の消費者がコンテンツを強く求めているからです。コンテンツは今や、客を引き寄せる力を持つまでになりました。
なお、集客マーケティングにどのようなコンテンツが適しているかは、後段の「集客コンテンツの手段」の章で紹介しています。
集客コンテンツにおいて重要なポイント
集客マーケティングで使うコンテンツ(集客コンテンツ)を作成したり配信したりするときは、次の3つのポイントを押さえておく必要があります。
●目的を明確にする
●ターゲットを明確にする
●集客コンテンツを明確にする
目的を明確にする
企業のマーケターやコンテンツ担当者は、まずは、集客コンテンツを使って何を成し遂げたいのか、その目的を明確にします。
集客コンテンツの目的には、新規顧客を集める、離脱した顧客を取り戻す、見込み客を増やす、これまでリーチできなかった層を集める、といったものがあります。
目的を定めることで、どのような集客コンテンツを用意すればよいのかがみえてきます。
ターゲットを明確にする
次に明確にするのは集める客、つまり集客コンテンツのターゲットです。
企業のマーケターが「どの客でもいいから集めればよい」と考えることはほとんどないでしょう。多くのマーケターは、若い客を集めたい、中高年を集めたい、富裕層を集めたい、グローバル志向の人たちを集めたい、といったターゲットを持っているはずです。
自社の商品・サービスの想定客をそのまま集客コンテンツのターゲットにしてかまいません。ターゲットが明確になると「このような人に喜んでもらえるコンテンツをつくろう」といったようにコンテンツをつくっていくことができます。
集客コンテンツを明確にする
目的とターゲットが明確になれば、自ずと集客コンテンツが明確になるわけですが、この「集客コンテンツを明確にする」という取り組みにはもう一つ狙いがあります。
それは、集客目的に特化したコンテンツをつくることです。裏を返せば、集客目的以外のコンテンツは(とりあえず今は)つくらないようにすることが大切です。
コンテンツを企画、作成するときに、マーケターたちは「なぜこのコンテンツをつくるとお客さんが集まってくるのか」という検討を加える必要があります。例えば、人気キャラクターを使ったコンテンツを配信するアイデアが出たら、「キャラクターのファンが集まってくるので集客につながる」と考えることができます。
このように集客コンテンツづくりでは、集客とコンテンツを絶えず結びつける必要があります。
集客コンテンツの主な種類
集客コンテンツには次の種類があります。
●認知獲得コンテンツ
●ファン化コンテンツ
●自分ごと化コンテンツ
●購買訴求コンテンツ
それぞれがどのようなコンテンツであり、なぜこれらのコンテンツが集客に結びつくのか解説します。
認知獲得コンテンツ
認知獲得コンテンツは、企業、ブランド、商品、サービスなどを認知させる目的でつくります。認知獲得コンテンツは、「認知度アップ→その商品が欲しい」という流れで集客していきます。したがって認知獲得コンテンツは、単に企業・ブランド・商品・サービスの存在を知らせるだけでなく、「欲しい」と思わせる工夫が必要になります。
認知獲得コンテンツには、ブランドを紹介する動画や、業界のトレンドを解説したブログ記事などがあります。商品・サービスの広告やキャンペーンも認知獲得コンテンツに含まれます。
ファン化コンテンツ
ファン化コンテンツは、既存客をファンにアップグレードさせるためのコンテンツです。既存客とファンをわける要素は熱量です。既存客は必要なものしか買いませんが、ファンは必要がなくても「そのブランドのものだから買う」といった購買行動を取ります。ロイヤリティが特別に強い既存客をファンと呼んでもよいでしょう。
ファン化コンテンツには、ブランドのロゴをあしらった商品や、製品・サービスの使い方を紹介した動画、顧客の成功体験を紹介した記事、ファン・ミーティング・イベントでのプレゼンテーションやデモンストレーションなどがあります。
自分ごと化コンテンツ
自分ごと化コンテンツとは、消費者に共感させたり没入感を持たせたりすることを目的にしたものです。
自分ごと化はファン化と似た概念ですが、ファン化コンテンツはベクトルが「顧客→コンテンツ」という方向になるのに対し、自分ごと化は「コンテンツ→顧客」というベクトルになります。
例えば、作者が個人的な感情を取り入れたコンテンツは共感を呼ぶことができるので自分ごと化コンテンツといえるでしょう。
自分ごと化コンテンツを提供できるようになると、企業は消費者や顧客と強く結びつくことができます。
企業が自分ごと化コンテンツをつくるには、顧客一人ひとりに関心事やニーズを探り、その一つひとつに応えていく必要があります。
購買訴求コンテンツ
購買訴求コンテンツはとてもわかりやすいものです。消費者や顧客、見込み客たちに購買を促すコンテンツで、広告により近い存在です。
例えば、購入者に特典やプレゼントを付与するキャンペーンや、購買を促すメールマガジンは購買訴求コンテンツです。
集客コンテンツを制作するメリット
企業が集客コンテンツを制作するメリットには次のようなものがあります。
●低コストで始められる
●潜在顧客にアプローチできる
●資産として蓄えられる
いずれも広告やイベント、プレゼントなどの集客ツールにはない、集客コンテンツ独自のメリットといえます。
低コストで始められる
最も低額な集客コンテンツの価格はゼロ円です。企業が自社サイトにブログ機能を追加すれば、従業員に記事を書いてもらうことができます。例えば、集客目的のイベントを開催するとき、その担当者が自社サイトのブログにイベントのポスターのPDFをアップすれば、ゼロ円で集客促進を図ることができます。
集客コンテンツはゼロ円、または低コストで始めることができるので、効果が出た集客コンテンツにのみ資金を投じてつくり込むといったことができます。
潜在顧客にアプローチできる
ホワイトペーパーやチュートリアル動画、インフォグラフィックは、潜在顧客にアプローチできる集客コンテンツといえます。
企業が潜在顧客をつかむには彼ら彼女らのニーズをつかまなければなりませんが、潜在顧客のニーズは「潜んで」いるわけなので、企業がこれをみつけることは容易なことではありません。
そこで、内容を充実させたホワイトペーパーやチュートリアル動画、インフォグラフィックを発信し続けることで、潜在顧客の目にとまるようになります。「このような商品・サービスを探していたんだ」と思ってもらえれば、潜在顧客にアプローチできたことになります。
資産として蓄えられる
集客コンテンツは資産のように蓄えていくことができます。
例えば、自社サイトにホワイトペーパーやチュートリアル動画、インフォグラフィックを掲載しておけば、いつでも誰でもみることができます。これらのコンテンツはいつまでも集客効果を生み続けます。
また、企業がイベントを開催して、それが盛り上がったとします。そのままでは来場者に喜ばれて終わりですが、そのイベントの様子を動画撮影しておき、自社サイトにアップすればコンテンツになります。さらに、このイベント動画を使って「次のイベントもこれくらい盛り上げますよ」とPRすれば集客効果が生まれるので、これも集客コンテンツになるわけです。
集客コンテンツは資産として蓄えられるだけでなく、質の高いものをつくれば資産のように高い価値を有するようになります。
集客コンテンツを制作する注意点
企業が集客コンテンツを制作するときの注意点を紹介します。
成果が出るまで中長期間の時間がかかる
集客コンテンツは、成果が出るまでに時間がかかります。したがって集客コンテンツを使ったマーケティング施策を行った翌月に客が倍になるといったことは起きにくいでしょう。
集客コンテンツに集客効果が生まれるまでに時間がかかるのは、1本の集客コンテンツがヒットしただけでは消費者に信頼されないからです。何本もヒットを重ねることで、あの企業のコンテンツは「魅力的だ」「信頼できる」と思ってもらえるようになります。
集客コンテンツを使ったマーケティングには時間がかかるため、企業は、即効性がある広告などのPRツールと集客コンテンツを組み合わせた中長期的な戦略が必要になります。
専門的な知識が必要になる
集客コンテンツはマーケティングのツールとしては比較的新しいものになるので、企業がこの施策に取り組むには専門家の力を借りたほうがよいでしょう。
では集客コンテンツの専門家は誰なのかというと、集客コンテンツごとに異なります。動画制作会社が集客コンテンツの専門家になることもありますし、ブログ記事を書くライターを抱えている記事作成会社が集客コンテンツの専門家になることもあります。
ただし、すべての動画制作会社や記事作成会社が集客目的のコンテンツをつくれるわけではないので、集客コンテンツづくりに実績のある業者を探す必要があります。
集客コンテンツの手段
集客コンテンツの手段として、以下の7つを紹介します。
●オウンドメディア
●メールマガジン
●プレスリリース
●音声
●動画
●SNS
●ホワイトペーパー
これらのコンテンツを集客マーケティング向けにつくっていくことで客を集められるようになります。
オウンドメディア
自社で保有して、自社のことや自社が属す業界の出来事を自由自在に伝えることができるオウンドメディアは、有益な情報を消費者や顧客などに伝えるのに便利なツールです。
消費者はオウンドメディアによって、オウンドメディアの運営会社の商品・サービスのことを知ることができます。知ることは客になる一歩目になるので、オウンドメディアには集客効果があるといえます。
また、すでに顧客になっている人がオウンドメディアから情報を得ると、その企業のことをもっと知ることができるので、ファンへと成長するかもしれません。
メールマガジン
企業が自社の商品・サービス情報などを顧客たちにメールで提供するメールマガジンは、SNSが普及した今となってはオールド・ツールと思われがちですが、集客効果はいまだ健在です。
SNSの双方向性に対して、企業から一方的に情報を提供するメールマガジンは一方通行のコミュニケーション・ツールですが、こちらを好む消費者や顧客も少なくありません。消費者からすると、SNSはこちらから積極的に情報を取りにいかなければなりませんが、メールマガジンなら送られてくる情報を取捨選択するだけでよい、という気軽さがあります。
プレスリリース
プレスリリースはかつては、企業がマスコミ(プレス)に対して自社商品・サービスの情報を提供するツールでした。プレスリリースを受け取ったマスコミは、それが読者や視聴者に有益な情報であれば報じます。プレスリリースの内容をマスコミが報じれば、それはお墨付きを得たようなものなので、消費者は報道された商品・サービスには「一定の価値がある」と思います。これが集客効果になるわけです。
そして今は、企業のプレスリリースをほぼそのまま掲載するWebサイトがあり、多くの閲覧者を抱えています。プレスリリースWebサイトには、マスコミによる選別がなく、料金を支払えば原則どのような内容でも掲載してもらうことができます。
プレスリリースWebサイトを使う企業のなかには、自社が行ったアンケート調査を経済情報として提供するところもあります。このアンケート結果プレスリリースも、閲覧者に「この業界について調査をしているということは、この業界について詳しいはずだ」と思ってもらえるので、集客コンテンツとみなすことができます。
音声
音声に動く画像を合体させたのが動画であり、したがって動画のほうが音声のみより多くの情報を伝えることができます。ラジオがテレビに進化したように、音声ツールの進化形が動画とみなされることがあります。そのため音声は動画より劣っているとみなされることがあります。
しかし制作に手間がかかる動画に対し、音声は音または声を録音するだけで完成するので、簡易コンテンツとしての魅力があります。
また消費者のほうでも、動画から情報を得るには「みる+聴く」の2つのアクションが必要になりますが、音声なら「聴く」だけで情報が得られる気軽さがあります。
さらに動画コンテンツが全盛の今、音声コンテンツは消費者に新鮮に映るでしょう。
動画
動画は今や、集客コンテンツの王道といえます。音声(言葉)だけの解説や、文章だけの説明では理解してもらえなくても、人が解説・説明しているところを動画に撮れば理解してもらえることがあります。動画の情報伝達能力が高いのは、音声と文章とビジュアルで説明できるからです。
動画を集客コンテンツに使うメリットには、面白さもあります。もちろん面白さのレベルは動画の内容によるわけですが、しかし同じ内容を伝えるなら、音声だけより、文章だけより、動画を使ったほうが視聴者を飽きさせないで済むでしょう。
SNS
SNSも優れた集客コンテンツです。SNSには、動画を使ったものも、文章だけのものも、音声だけのものがあります。つまり企業はSNSを使って動画コンテンツも文章コンテンツも音声コンテンツもつくることができるわけです。
そしてSNSには億人単位のユーザーがついているので、企業がSNSを使って集客活動をしない理由はないといえるでしょう。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは硬派な集客コンテンツといえます。動画やSNSのような派手さや華やかさはないのですが、詳細な情報を伝えるにはホワイトペーパー一択になることがあります。
例えば「商品・サービスについてもっと詳しく知りたい」「専門用語を使って正確かつ濃密に情報提供してもらいたい」「エビデンスを豊富に使って解説してもらいたい」「専門家や権威者による見解を知りたい」というヘビーユーザーのニーズに応えることができるのがホワイトペーパーです。
企業がヘビーユーザーを集客したいときは、ホワイトペーパーをつくらないわけにはいかないでしょう。
集客コンテンツの選び方
ここまでさまざまな集客コンテンツを紹介してきましたが、種類がありすぎでどれを選んでよいのか迷ってしまうかもしれません。そこで、企業が集客を目的としたコンテンツマーケティングを行うときの、集客コンテンツの選び方を紹介します。
ペルソナに合ったコンテンツを選ぶ
マーケティングの企画段階でペルソナを設定すると思いますが、集客コンテンツはペルソナに好まれるものを選びましょう。コンテンツの種類があまりに増えた結果、消費者のなかには自分に合ったコンテンツだけを選び、そうでないコンテンツを見向きもしない人がいます。例えば、SNSを多用するようになってから検索サイトを使わなくなった、といったことが起きています。
また、特定の層で特定のコンテンツが好まれる、といった傾向もあります。同じ層にいる人たちはコンテンツをコミュニケーションのきっかけにするので、同じコンテンツが求められるからです。
ペルソナを設定できたら、そのペルソナに当てはまる人たちにリサーチをかけて、彼ら彼女らが多用するコンテンツを調べましょう。
目的に合ったコンテンツを選ぶ
集客コンテンツマーケティングの目的には、新規顧客を集める、離脱した顧客を取り戻す、見込み客を増やす、これまでリーチできなかった層を集める、といったものがあります。集客コンテンツは、これらの目的を達成できるものを選びましょう。
新規顧客を集めるにはインパクトが必要になります。この場合例えば、企業がインフルエンサーを起用して動画コンテンツを作成することができます。この方法なら、インフルエンサーのフォロワーに対して一気に周知することができます。
また、これまでリーチできなかった層の集客を目的にするなら、企業はこれまで使ったことがない集客コンテンツの使用に挑戦すべきでしょう。顧客の平均年齢を下げたいのであれば、若い人向けの商品・サービスを開発する一方で、若者に刺さる集客コンテンツを使うようにします。
ニーズに合ったコンテンツを選ぶ
ターゲット層のニーズに合った集客コンテンツを選ぶことも大切です。例えば、ターゲット層が詳細な情報を求めているのに、インスタグラムのショートムービーやXの短文でPRしても効果が出ないでしょう。この場合は、詳細な情報を大量に掲載したホワイトペーパーが必要になります。
その逆に、企業がタイパを重視する若者をターゲットにするのであれば、彼ら彼女らのニーズは短時間で簡単に情報を得ることにあるので、インスタグラムやXが有効な集客コンテンツになります。
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