カワサキの意欲的な珍バイク【デザインを考える】ヤマハも少し
カワサキは、Z900RSやW800からもわかるとおり、過去の遺産を再利用することが上手なバイクメーカーである。
ところがその一方で、新しいデザインや斬新な形状を試みることも忘れない。
つまりカワサキは、真似することも、真似しないことも、両方ともするのである。
ただカワサキの新しいデザインのバイクは、ことごとく外している印象がある。
それを意欲的な珍バイクと呼びたい。
このバイクは2011年に発売になったER-4n。
このバイクは恐ろしく不細工なのだが、デザインの1つひとつの要素はとても素晴らしい。
最初に褒めたいのは太いパイプフレームだ。
エンジンの上部と中部にパイプを回して、まるで鳥かごのよう。
とても面白い。
そしてリアサスの位置が絶妙だ。
メインフレームとの連続性があって「ここからデザインを始めたのかな」と思わせる。
そして短足マフラーがよい。
スイングアームがみえてメカメカしくなるからだ。
シュラウド(エンジンカバー)にウインカーを埋め込んだ挑戦も評価したい。
これらのデザインのアイデアはどれも素晴らしく、これだけそろえばドカティ・レベルになってもおかしくない。
ところがカワサキは、これらを集めて欲しくないバイクをつくるのだ。
次はGPZ250R。これもかなり昔の作品。
ここまで造形に凝りながらどうしてこんなに格好悪いんだ、と思わせる一品。
カウル前部はGPZ400R、ステップ周りは初代NINJA、サイドカバーはカタナの形状を流用している。
いずれも名作である。
それなのに、だ。
それらをまとめた途端に不細工になっているのはER-4nと同じ。
次はこれ。
カワサキのデザイナーのいわんとしていることはわかる。
・変わった形状のフレームをつくりたい
・変わった形のヘッドライトを付けたい
・変わった形のサイレンサーにしたい
この気持ちをすべて受け止めたあとにいえることは、失敗している、である。
これはザンサスという。
古いバイクだけではない。
今販売されているバイクにも疑問符が付くものがある。
次のバイクについては「これを格好悪いというお前の目のほうがおかしい」と言われるかもしれない。
それでも私には、格好良くみえないのだ。
上から順に、ZX-10R、ZX-4RR、Ninja250である。
この3台のデザインコンセプトは「上部は正スラント、中部は逆スラント、下部を尖がらせる」で共通している。
共通させるほどの格好良さはないと思うのだが。
いや、ここまでさらしておいて遠慮していても仕方がないのでいってしまうと、このデザインコンセプトは格好悪い。
カワサキに限らず最近のSSの顔はどれも格好悪いが、この3台はそのなかでも特筆して無様だ。
しかもSSで失敗しているところが罪深い。
SSには、尖ったデザインを採用できるという特権がある。
そして尖ったデザインは格好良くしやすい。
それなのになぜ、カワサキはわざわざ格好悪い形をSSに採用し、しかもそれを拡張するのか。
次はこちら。
これはベルシス1000SE。
ツアラーにまで「上部は正スラント、中部は逆スラント、下部を尖がらせる」を採用してしまった。
多車種に同じデザインコンセプトを採用する手法は、自動車ではマツダがよくやる。
さらにいえばBMWは永遠に、同じデザインコンセプトを全車種に使っている。
私はこの手法は好きではない。
工夫がないからである。
しかも成功している感じもない。
最近はヤマハでも珍デザインが散見される。
「でも」というのは、私には、ヤマハのデザインは美しい、という先入観があったからだ。
ところがこの3台はそうじゃない。
上からMT-10、MT-09、MT-07である。
なんだこりゃ、である。
しかも、登場してすぐに違和感を持ったのではなく、これらが出て日が経ってもいまだに、なんだこりゃ、なのだ。
デザイナーは社長から「格好良くしたら承知しないからな」と言われたのだろうか。
いや、奇抜を否定しているわけではない。
奇抜な形状は、ラインナップのなかに1台くらいはあってもよい。
しかし、ヤマハの大排気量ネイキッドは多くの人が期待するジャンルである。
その重要なジャンルでこれほどの冒険を--もっといえば無謀な冒険を、しかも長年にわたって行なっている。
ヤマハの狙いがわからない。
それとも、ヤマハの狙いを、私ごときがわからないのは当然なのだろうか。
以下の顔は、2025年に出るMT-07である。
ヤマハはまだ珍デザインを続けるつもりである。
ライトの光源の高性能化によって、ヘッドライトをかなり小さくすることができるようになった。
必ず搭載しなければならない部品を小さくできると、デザインの自由度が増すので、本来は格好良くなるはずである。
ところがヤマハはそうしない。
バイクメーカーは、バイクに乗ってもらえないことに困っているのではないか。
それなのに珍バイクを出し続けている。
みてすぐ「格好良い」と思えるバイクを出して欲しい。
性能の追及はもう要らない。
デザイン最優先でバイクをつくってもらいたい。
一瞬で「もってく」デザインを期待してやまない。