「自分に矢印を向ける」ことが問題解決の鍵
今回は「自分に矢印を向ける」というテーマについてお話ししたいと思います。
私はこれまでに、多くの研修やコンサルティングを通じて、様々な問題に直面する方々と接してきました。
その中で常に感じるのは、問題解決の際に重要なのは、「自分に矢印を向ける」ことだという点です。
「自分に矢印を向ける」とは、問題の原因を自分に置き換えて考えるということ。
どうしても外部の要因や他者に原因を求めがちですが、それでは問題の根本にたどり着くのは難しいことが多いです。
なぜなら、自分でコントロールできない要因にフォーカスしても、それを変えることはできないからです。
コロナ禍の売上低迷を例に考える
少し具体的な例を挙げてみましょう。
コロナ禍において、多くの企業や店舗が売上低迷に直面しました。
この時、よく聞かれた言葉のひとつが「コロナだから仕方がない」というものです。
確かに、コロナは誰にとっても予想外の出来事で、制約が多かったですし、誰もが影響を受けました。
でも、この「コロナだから」という発想では、一歩も前に進むことができません。
全ての店舗が同じような状況に置かれていたにもかかわらず、成功した店もあれば、そうでなかった店もあります。
その違いは何だったのでしょうか?
その違いのひとつは、やはり「自分に矢印を向けたかどうか」です。
コロナ禍という環境は変えられないにしても、その中で自分たちができること、工夫できることを見つけようとした店は、さまざまなアイデアを生み出すことができました。
たとえば、飲食店の中には、テイクアウトやデリバリーを強化したり、オンラインでの料理教室や食材販売を始めたお店がでてきたのです。 また食材の高質化やホスピタリティの改善など、最高の顧客体験をしてもらうことで平常時に戻った時、リピートしてもらうことを狙った企業もありました。
そうした店は「コロナだから売上が落ちる」という他責の考え方を捨て、自分たちのビジネスモデルを見直し、どうすればこの状況でも生き残れるかを真剣に考えたのです。
問題解決に必要な視点
問題解決技法のプロセスにおいても、この「自分に矢印を向ける」という視点は非常に重要です。
私はよく、研修でロジックツリーや「なぜ?」を繰り返すWHY−WHY分析を使ったワークを行います。
先日も、公務員の課長職を対象にした研修で、同じような場面がありました。
「自分たちの職場の問題点の原因分析を行う」というテーマで、ロジックツリーを使ってWHY−WHY分析をするワークを行いました。
その中で、ある受講者が「予算が足りない」という理由を問題の出発点にしたため、深掘りができなくなったというのです。
私はその時、「他責にせず、自分に矢印を向けましょう」と伝えました。
「予算が足りない」というのは確かに問題の一部かもしれませんが、それだけで終わってしまうと、永遠に解決策が見つかりません。
そこで「予算を増やすにはどうしたらいいか?」「他の支出を抑えるにはどうすればいいか?」と、具体的に考えるよう促しました。
このように、外部の要因だけでなく、自分たちができることに目を向けることで、新たな視点が生まれるのです。
自分の行動に目を向ける
問題解決において、「自分に矢印を向ける」ということは、必ずしも簡単なことではありません。
誰しも、状況や環境のせいにしたくなる瞬間はあると思います。
しかし「他者と過去は変えられない」のです。
苦しくてもそれでも、自分の行動に目を向け、何ができるかを考えることで、前進の道が開けます。
たとえば、課題の中に隠れている改善の余地を探すために、自分のスキルやリソースを最大限に活かす方法を考えることができます。
この「自分に矢印を向ける」姿勢は、単に問題解決だけでなく、自己成長にもつながる重要なマインドセットです。
問題解決の姿勢としての「自分に矢印を向ける」
問題に直面したとき、「外部のせいだ」「状況が悪いから」と感じることは自然なことです。
しかし、そのままでは状況は変わりません。
自分に矢印を向け、何ができるか、どう改善できるかを考えることで、新しい視点が生まれます。
企業や組織でも同じです。
東日本大震災やコロナ禍のような非常事態であっても、すべての企業が同じ条件下にありました。
その中で、成功した企業は、状況を受け入れつつも、自分たちができることを考え、実行していった企業です。
「できない理由」ではなく「できること」を探し、行動することが、問題解決の第一歩です。
問題解決には、冷静な原因分析が不可欠ですが、その際にも、常に「自分たちが何をできるか」を問い続けることが大切です。
ロジックツリーやWHY−WHY分析といったツールも、自分に矢印を向けて考える視点を持つことで、初めて効果的に機能します。
まとめ
「自分に矢印を向ける」ことは、問題解決の鍵であり、成長の原動力でもあります。
外部の要因に頼るのではなく、自分がどう動けるか、何を変えられるかを考えることで、新たな可能性が広がります。
皆さんも、ぜひ日々の業務や生活の中で、自分に矢印を向けてみてください。
そこには、まだ見ぬ解決策やアイデアが、必ずあるはずです。
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